○Django:「マーフィー君、ウィントン・マルサリスの最新アルバム聴いた?」
●Murphy:「LIVE AT THE HOUSE OF TRIBES」だろう。もちろん。ジャズはやはりライブだよ。このアルバム聴いて、ジャズはライブアルバムが最高!と思った。ニューヨークでこのライブに遭遇していたらどんなに楽しかっただろうなあ。聴衆のノリが素晴らしいね。ウィントンと彼のグループのホットなプレイ、聴衆の演奏への参加、完全に一体になっている。ジャズ特有の、ステージと聴衆とが一緒になって演奏を盛り上げ、全員が参加する。楽しさが充満しているアルバムだ。それにしても、ウィントンの演奏は快調だね。」
○D:「そのとおり。こんなに楽しいアルバムは久々だね。ウィントンのアドリブフレーズは、余裕で歌いまくるし、同じフレーズが二度と出ないほど、クリエイティブで、その上どこかやっぱりジャズだという懐かしさもある。」
●M:「パーカーの演奏で有名なドナリーが4曲目に入っているね。すさまじいスピードだ。あたかも急流下りで、川の流れに身をまかせ、流れのスピードにノリながら、2倍も3倍も余裕があるなかで、変幻自在に、パフォーマンスを繰り広げている。」
○D:「やはりジャズはリズムが命。ところで、日本の中村健吾がベースで参加しているね。」
●M:「2曲目のジャスト・フレンズでソロを繰り広げているが堂々たる演奏だ。ドラムのジョー・ファーンズワースもいいね。」
○D:「ルイス・ナッシュのライブを思い出したよ。」
●M:「ところで、ジャンゴ君、どれが一番よかった?」
○D:「どれも素晴らしいよ。その中から一曲選ぶなら、ボクの一番好きな曲「ドナリー」だね。」
●M:「やっぱりそうか? ジャンゴ君は、もともとパーカーが大好きだからね。」
◇◇◇
ウィントン・マルサリスの最新アルバム LIVE AT THE HOUSE OF TRIBESに登場する名曲「ドナリー」の、パーカーによるオリジナル演奏は、不滅の名盤「チャーリー・パーカー・オン・サヴォイ」で聴ける。このドナリーの作曲者は、実はマイルス・デイビス。
「オン・サヴォイ」では、他に、「 ビリーズ・バウンス」「 ナウズ・ザ・タイム」「パーカーズ・ムード」など、ジャズ史上屈指の名演奏が満載されている。パーカーの数あるアルバムのなかで、この「サヴォイ盤」と「ダイヤル盤」が最も有名であるが、どちらか一つを選ぶなら、「サヴォイ盤」をおすすめする。「サヴォイ盤」は、パーカー絶頂期の演奏で、録音状態もけっこうよい。パーカーの演奏は録音年代が古い(1940年代〜50年代)ので、それだけで嫌ってしまう人が多いが、最新のCDでは、驚くほど音がよくなっている。パーカーの演奏の素晴らしさを体験すると、録音の古さなんて全く気にならない。最近思うことは、モダンジャズは、やはりパーカーで始まり、パーカーで終わるのではないかと。そういう意味では、パーカーの演奏は、本当のクラシックであり、時代を超越して今聴いても実に新鮮だ。1940年代に、サヴォイやダイヤルがよくぞ録音していてくれたものだ。
●DATA
曲名:Donna Lee (1947)
作曲:Miles Davis