池澤夏樹著「カイマナヒラの家」(集英社文庫、2004年)。物語に登場する家は、実在した、と著者は記している。
ダイヤモンドヘッドの麓に近い一帯は、屈指の高級住宅街だ。騒々しいワイキキを抜け、カハラ地区にさしかかると、静かな住宅街が続く。
小説で描かれた家は、このあたりに立地する。古い戦前の建物(1930年代)、開放的な、ガラスの多い、ハワイ風アールヌーヴォー。平屋、チャールズ・ディッキーというその頃のハワイでNo.1の建築家が設計したらしい。
上の写真は、単にダイヤモンドヘッドの麓の高級住宅街にある住宅をたまたま撮影したもので、小説に登場する家とは全く関係がない。この小説の家をいつかはこの眼で確かめたいと思う。でも、おそらくもう、なくなっているだろう。ただ、このあたりの住宅を眺めていると、どこかに存在するような気がする。
小説を読んでこの家のことをイメージする。古いスタイル。ハワイ風アールヌーヴォー。家が風景にとけ込む。開放的で、窓からの眺めがすばらしい。風とともに暮らす。光を感じて暮らす。ゆったりとした生活のリズム。

