第5回 不滅のジャズ名曲-その5- バグズ・グルーブ(Bag’s Groove)

Murphyくん、第5回の原稿は手紙でお送りします。
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不滅のジャズ名曲第5回は、MJQのミルト・ジャクソン作曲の「バグズ・グルーブ(Bag’s Groove)」です。
ミルト・ジャクソンはいつもブルース・フィーリング溢れる演奏で定評がありますが、特にこの曲を演奏したときは、水を得た魚のように、生き生きとアドリブを展開していきます。この曲は、ブルース形式のシンプルなコード進行で、いわゆる「ブルース」と呼ばれる曲です。それだけに、このシンプルなコード展開にのって、思いっきりスイングし、天心爛漫で自由自在なアドリブプレイが行われます。「バグズ・グルーブ」は以降、現在に至るまで、多くのアーティストが、ライブで (特にアンコールで) よくとりあげます。

ミルト・ジャクソンは、MJQ以外でも、他のアーティストと組んで、この曲を何度も録音していますが、やはりMJQでの演奏がベストです。ジョン・ルイスとミルト・ジャクソンとのコンビは、いわば静と動というコントラストのなかで、お互いを引き立て合います。そこに、世界一美しいベース音といわれた、パーシー・ヒースが、ドラムのコニー・ケイとともに、名サポート役を果たします。よく「インタープレイ」という表現が用いられますが、まさにその言葉どおり、4人の絶妙なコラボにより、お互いに対話しながら、緊張とリラクゼーションを見事に引き出しています。彼らMJQは、まさにモダン・ジャズの集団即興演奏の永遠の模範となる存在でしょう。ボクの名前がジャンゴだから、一層MJQに惹かれるのかもしれないけど。

今回は、彼らMJQの数ある演奏のなかでも、あえて最高のアルバムとして推薦したいものがあります。なぜかというと、MJQをはじめすべてのジャズ演奏は、ライブでこそ、その実力が遺憾なく発揮されるからです。スタジオ録音より観客を前にしたライブ録音の方が、よりスリリングで、ジャズならではのノリが最大限に表出されるからです。MJQのライブレコーディングのなかで、決定的な名演奏を収録したものがあります。それは、1960年に北欧から東欧にかけての長期ツアーのなかの、スウェーデンでの演奏を2枚のLPにまとめた、アトランティック盤のヨーロピアンコンサート(最新の紙ジャケ仕様の方が断然録音が良い)です。ちなみにこのアルバムは、ボクの名前の「ジャンゴ」から始まり、MJQお得意の名曲が次々と展開されます。ジャズならではのスイング感とはまさにこのアルバムでの演奏のことです。スイングするから、何度も何度も聴きたくなるということです。永遠の名盤です。
では、ボクのお話、これで終わります。B000jlsvj201_aa240_sclzzzzzzz__1

第4回 不滅のジャズ名曲-その4- オール・ザ・シングス・ユー・アー(All The Things You Are) 

Django:「マーフィー君、不滅のジャズ名曲の第4回目は、オール・ザ・シングス・ユー・アー(All The Things You Are)です。 この曲は、もともとはジャズの曲ではなく、オスカー・ハマーシュタイン(Oscar Hammerstein Ⅱ)作詞とジュローム・カーン(Jerome Kern)作曲の名コンビによるミュージカルナンバーで、現在に至るまで数多くのジャズプレーヤーが、この曲を採り上げ、いわゆるジャズ・スタンダードとなったものです。」

Murphy:「そうだったのか。ジャズの演奏ではよく聴くけど、オリジナルはあまり聴いたことなかったな。」

D:「パーカーもサヴォイ・セッションで演奏しているよ。ところで、どうしてこの曲、ジャズプレーヤーにこれほど愛されているのか知ってる?」

M:「曲そのものがいいからだろう。このメロディーラインはすばらしいね。」

D:「それもあるけど。実は、この曲のコード展開が魅力なんだよ。順番に4度ずつ移行していく、いわゆる4度進行なんだ。だから、アドリブの展開が大変おもしろい。」

M:「ジャンゴ君はジャズギターをやっているから詳しいね。そのへんは、僕にはよくわからないんだけど、でも聴いていて次々とシーンが変わっていくような感じはあるね。」

D:「この曲、ある有名な曲にコード進行がそっくりなんだけど、わかるかな?」

M:「枯葉じゃないかな。」

D:「そのとおり。枯葉も同じ4度進行なんだ。枯葉は、マイルスが演奏していらい一躍ジャズのスタンダードになったけど、実はオール・ザ・シングス・ユー・アーとよく似ているということ。」

M:「でも、ボクは、枯葉より、オール・ザ・シングス・ユーアーの方が好きだね。ジャンゴ君はどう?」

D:「ボクも同じ。」

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「オール・ザ・シングス・ユー・アー」のように、ミュージカルの名曲が、ジャズになった例は実に多い。オスカー・ハマーシュタインとジュローム・カーンのコンビニよる名作は、ジャズ・スタンダードとして、多くのジャズ・プレーヤーに愛されている。ジャズの聴き方として、このような「歌もの」から入っていけば、知らないうちに、いろんなプレーヤーの演奏に接し、プレーヤーごとの違いがおもしろくなってくる。そして自分のジャズの森が広がっていく。ジャズもやはり「」が基本だと思う。大半のジャズプレーヤーは、原曲を歌い、アドリブも楽々と口ずさむ。超絶技巧のアドリブラインでさえ、多くのプレーヤーは歌っている。

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【コンプリート・スタジオ・レコーディングス・オン・サヴォイ・イヤーズ VOL.2】