Murphy:「Djangoくん、このあいだ川辺を散歩していたら、ソリー・ロリンズのあの有名なセント・トーマス(St. Thomas)が聞こえてきたんだ。どこで吹いているのかと思ったら、橋の下だったね。テナー・サックスってずいぶんよく響くもんだね。」
Django:「そうだね。サックスの音は野外でも相当遠くまで響きわたるよ。」
M:「ところで、セント・トーマスは、ソニー・ロリンズ自身の作曲なの?」
D:「そのとおり。ジャズファンならみんな知っている「サキソフォン・コロッサス」というアルバムの1曲目に入っている。カリプソ調のこの曲は、彼自身も何度か録音しているし、ライブではこの曲が始まったら、いつも大歓声だね。」
M:「ボクは、このアルバムでジャズが好きになったんだ。それ以来、ソニー・ロリンズのアルバムは、他に「テナー・マッドネス」や「ヴィレッジ・ヴァンガードの夜」、「ウェイ・アウト・ウエスト」など何枚か集めたよ。」
D:「Murphy君が、ソリー・ロリンズのアルバム、そんなに持っているとは知らなかったね。他に、「橋」は持ってる?」
M:「いや、それは知らないな。いつ頃のアルバム?」
D:「確か1962年の録音だっとと思うけど。1959年の夏から3年間の沈黙を経てリリースした復帰第1作。このアルバムはピアノレスで、そのかわりに、ギターのジム・ホールが入ったんだ。その間、ニューヨークのイーストリバーにかかるウイリアムズバーグ橋の上で、ひたすらテナー・サックスの練習に明け暮れていたことは有名な話だ。ソニー・ロリンズという人は、いまでも現役で活躍しているけど、50年代に傑作を出しても、60年代に再び新しいコンセプトで挑み、さらに70〜80年代、そして現代に至るまで、常に時代の第一線で活躍し、チャレンジし続けている。日本びいきだし、日本のファンを本当に大切に思っている人だ。おそらくジャズ界の最高のインプロヴァイザーの一人に違いない。彼の演奏の魅力は、熱気のなかでのユーモア精神というか、ジャズの楽しさを本当に伝えてくれるところにある。テンションとリラックス、簡潔さと複雑さなど、ジャズならではの魅力が最大限に表現されている。特にライブが素晴らしいね。それと、歌が好きでたまらない人だと思うね。」
M:「これまでソニー・ロリンズは50年代のアルバムしか聴かなかったけど、それ以降もいいアルバムがあるんだね。」
D:「そう。Murphyくんは、ソニー・ロリンズがかなり気に入っているようだから、珍しいアルバムを紹介しよう。このアルバムは、1985年にニューヨークの近代美術館でライブ録音されたもので、なんと56分すべてテナー・サックスの無伴奏ソロで演奏した前人未踏のアルバム。初心者にはやはり、サキソフォン・コロッサスなどのオーソドックスなカルテットの名盤の方から先にすすめるけど、もし、ソニー・ロリンズという森の奥深いところを知りたければ、このアルバムおすすめします。(但し、初めての人にはややとっつきにくいかもしれません。) いきなり豪快なブローで始まり、途中、突然「セント・トーマス」が出てきたり、「夢見る頃を過ぎても」や「アルフィー」なども登場するし、「ホーム・スウィート・ホーム」まで飛び出してくる。最後は手拍子が入り終わっていく。」
◇◇◇
サキソフォン・コロッサスビクターエンタテインメント

橋BMG JAPAN

ザ・ソロ・アルバムビクターエンタテインメント

