第26回 不滅のジャズ名曲-その26-ボーイ・ミーツ・ゴーイ(グランド・スラム)(Boy Meets Goy (Grand Slam))

Murphy:「Djangoくん、前回のジャンゴのアルバム、ボクも初めて聴いたんだけど、とってもよかった。素晴らしくスイングしているね。それにヴァイオリンが加わって、とてもいい雰囲気だね。」
Django:「そうだろう。以前は録音が古いこともあって、聴きづらかったんだけど、ずいぶんクリアになったしね。ジャンゴのギターが生き生きと響くようになった。」
M:「そうだね。ところで、ジャンゴを聴いて、少しジャズギターに興味を持ったんだけど、まず何から聴けばいい?」
D:「Murphyくんは、アコースティック・ギターを演奏するんだろう。マーティンのギターについても詳しそうだし。ジャズギターはあまり聴いてなかったの?」
M:「うん。自分で演奏しようと思っても、あまりにもむずかしくてね。ちょっと敷居が高そうだし。」
D:「確かにジャズギターは、それなりのテクニックが必要なんだけど。聴いて楽しむ分には関係ないから、是非聴いてみたらどう?」
M:「うん。それで、まず誰から聴けばいい?」
D:「そうだな。Murphyくんはけっこう古いものが好きだから。それにあまりうるさくないものが好みだろう?」
M:「オールドファッションというか、レトロなものが好きだね。それと、やはりスイングしているもの。」
D:「そうか。この前、Murphyくん、戦前の古いハワイアンなんか聴いていたね。そのぐらい古くてもいいの?」
M:「その方がいいよ。あのハワイアン、Djangoくん覚えていたのか。」
D:「しっかり覚えているよ、あれよかったね。ところで、今回のアルバムなんだけど、ジャズギターで最高のものを選ぼうか?」
M:「いきなり? むずかしくない?」
D:「全然、そんなことないから安心して。それより、Murphyくんがジャズギターに興味を持ったんだから、この際中途半端なものはだめだと思ったんだ。それに、Murphyくん、アコースティックギターをやっているからね。」
M:「誰の演奏?」
D:「このアルバム、BGMで聴いてもいいと思うよ。いわゆるスイングジャズで1939年から40年ごろの演奏だから。レトロな味わいがあるよ。1曲3分前後だからすぐ終わるし。でも、ギターのパートが出てきたらいつか真剣に耳を傾けてくれる?」
M:「Djangoくん、また始まった。もったいぶるなよ。はやく言えよ。」
D:「わかった。伝説のジャズギタリスト、ビバップの元祖、チャーリー・クリスチャン。その彼が、ベニー・グッドマン六重奏団に加わっていた頃のアルバムで、「ザ・オリジナル・ギター・ヒーロー」というアルバム。そのなかに入っている、「ボーイ・ミーツ・ゴーイ(グランド・スラム) (Boy Meets Goy (Grand Slam))」という曲を是非聴いてくれる?」
M:「チャーリー・クリスチャンって、聞いたことあるなあ。確かギブソンのギターでチャーリー・クリスチャンモデルっていうのがあったと思うけど、その人?」
D:「そのとおり。そのギター、ギブソンのES-150っていうモデルだね。」Es150
M:「どんな演奏なの。」
D:「このボーイ・ミーツ・ゴーイでみられる彼のアドリブソロは、フレーズがものすごくカッコいいんだ。非常にシンプルで、音に全く無駄がない。シンプルなアドリブ・フレーズで、一つの音を的確なところに落とし込むことがどれほどむずかしいものかは、多くのジャズギタリストが指摘しているが、彼はいとも容易くやってのけ、カッコいいフレーズを連発する。」
M:「へえ、そんなにシンプルなの?」
D:「そのとおり。すばらしいテクニックをもったジャズギタリストは、多く存在するが、彼ほどシンプルで生き生きとしたフレーズを奏でることのできるギタリストはいないね。それと一音一音が太くて明晰で、リズム感がすばらしい。かつてジム・ホールが、ボーイ・ミーツ・ゴーイでのチャーリー・クリスチャンのアドリブラインを自ら弾きながら、目を輝かせて、「素晴らしいフレーズだ。」と言っていた。「ボクはこのフレーズを弾きたくてギターを練習したんだ。こんなにカッコいい、フレーズを連発するチャーリーは本当に素晴らしいね。」って生き生きと語っていたんだ。」
M:「そうか、他のジャズギタリストにも影響を与えてるんだ。」
D:「そのとおり。実は先ほどのアルバムは、2002年に4枚組で発売された「チャーリー・クリスチャン/ザ・ジーニアス・オブ・ザ・エレクトリック・ギター」のダイジェスト版なんだけど、ボックスセットのライナーノートに、多くのギタリストからのチャーリーに対する絶賛の言葉が集められている。レス・ポール、ウエス・モンゴメリー、ジョージ・ベンソン、タル・ファーロウ、バーニー・ケッセル、B.B.キング、ラッセル・マローン、ジョン・スコフィールドなど、蒼々たるギタリストがこぞって絶賛している。実は、ボクも、この曲のアドリブフレーズを弾けるようになりたくて、ジャズギターを始めたんだ。いまでも何てカッコいいフレーズだなあって思うね。」
M:「そうだったのか。」
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ザ・オリジナル・ギター・ヒーロー ダイジェスト版 チャーリー・クリスチャン 1939〜1941年録音 Benny Goodman Sextet
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ザ・ジーニアス・オブ・ザ・エレクトリック・ギター 完全版4枚組セット
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アウトドア仕様、オリンパスμ770SW発売開始

アウトドアのために生まれたカメラOLYMPUS・μ770SWが3月2日発売された。昨年秋に発売されたμ725SWとの主な違いは、水中5mまでだったのが10mまで防水機能が強化されたこと、さらに堅牢性が増したこと、マイナス10℃の環境での動作を可能にしたこと、ハイパークリスタル液晶モニターの表面輝度アップならびにコントラスト比が20%向上したことなどがあげられる。μ725SWから短期間で新モデルのμ770SWを発売したことは、オリンパスのこのシリーズへの意気込みが感じられる。強化された性能をみると、どれもより本格的なアウトドアへの対応力を高めたものであり、決して表層的なマイナーチェンジでない点で好感が持てる。
実は、昨年11月からμ725SWを使用して以来、まだ3ヶ月した経過していないが、こんなに早くその上位機種が発売されるとは思ってもいなかった。μ725SWも継続して販売されるようだ。μ770SWとμ725SWは、仕様を見る限りレンズ構成は変わらない。8群10枚で、その内EDレンズ1枚、非球面レンズ3枚という非常に凝った構成である。このあたりのスペックで、オリンパスのレンズに対する妥協を許さないこだわりが感じれる。焦点距離は6.7mm〜20.1mmで、35mmカメラ換算では、38mm〜114mmの光学ズーム倍率3倍で、開放F値はF3.5(W〜F5.0(T)である。
これまでμ725SWを使用してきたなかで、一番実用的だと思った点は、レンズが飛び出さないことである。これは実際に使用してみないとなかなかその便利さが実感できないが、電源を入れて撮影状態に入っても、レンズがボディ内に格納されたままの状態で撮影でき、望遠側にズームしても飛び出さないという点が大きな特徴である。レンズがボディに格納されたまま撮影可能であるということは、最もアウトドアで役立つ機能だと使ってみてつくづく思った。いくら沈胴式のレンズを搭載しても、撮影モードでレンズが飛び出すと、レンズ部をどうしてもかばうようになり、ラフな使い方はできなくなってくる。その点μ725SWはレンズが飛び出さず、撮影時の軽快さを維持している。
レンズ表面の撥水コート処理も不可欠な機能である。雨にぬれたり、水の中につけると、必ずレンズに水滴が付着し、取り除かないと画像がぼけてしまうが、この処理によりレンズ表面にほとんど水滴が残らなくなった点は、小さな工夫であるが、実用上大変役にたつ点である。
レンズについては、現状35mm換算で広角側が38mmであるが、これがもう少し広角側にシフトしてくれればよいのだが。あとわずかであるが35mmになればさらに実用価値が高まると思う。カメラの写りについては、実用上全く問題ないレベルである。この種のアウトドア用カメラは、記録性が第一であり、「ちゃんときちっと」写ればよいと思っている。「ちゃんときちっと」ってどの程度かといえば、いざというときにA4サイズぐらいまで引き延ばしても十分鑑賞に耐えられる写りだと思っているが、すでにその程度の描写力は、この機種を含め500万画素以上のカメラなら十分合格点をつけられる機種も多いわけであり、とくにこの機種においても描写性能はなんら問題ないといえる。というより、ボディ内にレンズが格納されたまま飛び出さないという制約のなかで、新開発された屈曲型のレンズでありながら、従来型レンズと同等以上の描写性能を持っていることが特筆すべき点である。P1120010一昔前までのデジカメは、画素数が増大しても、レンズ性能がついていけず、写りのよくない機種がかなり存在していた。特に歪曲収差については、いまでもいっこうに改善されてない機種も依然存在する。デジタル一眼レフにおいても、デジタル対応以前の旧モデルの廉価版ズームレンズを装着すると、とたんに描写性能が劣化するものが少なからず存在する。デジタルカメラにおいては、レンズ性能が非常に大切であることは言うまでもない。その点、オリンパスのデジカメは、画素数とレンズ性能との関係において、非常にバランスがよく、レンズについては決して妥協しないメーカーである。このことが、μ725SWにおいても実感できた。
振り返れば、オリンパスペンが開発されたとき、ハーフサイズなるが故に、レンズの重要性を認識し、高性能なレンズを搭載し、結果としてハーフサイズながら35mmフルサイズにも負けない描写力をもったことが、その後のペンシリーズの爆発的な人気に至ったわけである。P2260045オリンパスペンシリーズは、いまだに大切に使っているが、このμ725SWを使っていると、どこかペンを使っているときのような気分になる。オリンパスペンを持って撮影にでかけると、いまでも肩の力が抜けてリラックスした気分になる。小型軽量のボディでレンズも飛び出さないし、ハーフサイズ独特の軽快感が楽しい。撮影する視線も変わってくる。いままで見逃していた光景やモノに注目するようになる。これを自分では「PEN効果」と勝手に思っているが、そういった気軽さが、μ725SWを使っているときも感じられる。しかも、ペンと違って、今度は、防水だ。堅牢性は高い、その上1ギガのカードを入れれば数百枚写せる。レンズも、ペンの思想と同様、こだわりを持っている。いざというときは、大きく引き延ばせる。あとは、次期モデルで、なんとか広角側が35mm(35mm換算)にならないかと願っている。 
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撮影データ:( )内は35mm換算の焦点距離
 左上:μ725SW 6.7mm(38mm) 1/20秒 F3.5 ISO200
 右下:μ725SW 6.7mm(38mm) 1/500秒 F6.3 ISO80