Murphy:「Djangoくん、このあいだの第25回で話題になった、ビール・バーのプランニングを担当しているデザイナーにさっそく、あのジャンゴのボックスセットを聴いてもらったところ、イメージにピッタリだといって、大変喜んでいたよ。お店のインテリアプランもほぼ出来上がり、あとは音楽の方のセレクト段階に入ったということだ。あ、それから、あと、ビールのセレクト![]()
がまだ不十分だと言っていたね。」
Django:「そりゃよかった。ジャンゴを気に入ってもらってよかった。」
M:「例の5枚組のアルバムなんだけど、実はそのデザイナーも以前にジャンゴのCDを買ったことがあったそうだよ。でも、録音が古くてあまり聴く気にならなかったって言っていた。でも、Djangoくんの推薦したそのアルバムの1枚目を聴いたとたんに、驚いたらしい。ボクも正直言ってびっくりした。1930年代のこんな古い時代の録音がここまで、いい音質で聴けるとは。それに演奏がすばらしかったね。」
D:「ボックス・セットの5枚組の1枚目は、ジャンゴがヴァイオリンのステファン・グラッペリと組んで、QHCF(フランス・ホットクラブ・五重奏団)を結成したときの、ファースト・レコーディングだから、その意気込みが傑作を生んだんだろうね。1934〜35年だからね。Murphyくんは、どの曲が気に入った。」
M:「全部だよ。しいてあげれば、アヴァロン(Avalon)かな。」
D:「ああ、あの曲のスイング力はすさまじいね。さすがMurphyくん、いい曲選ぶね。」
M:「アヴァロンって、以前に聞いたことあるような気がするんだけど。」
D:「そうだね。スイング時代によく演奏された名曲だよ。ベニー・グッドマンが大ヒットさせた曲だね。1920年に作曲された古い曲で、プッチーニのオペラ「トスカ」第3幕のアリアがベースになっていると言われている。ジャンゴの演奏は、いろんなアーティストの数ある演奏のなかでも、最も印象に残る名演だと思う。」
M:「ところで、そのデザイナーが、もうひとつDjangoくんに聞きたいっていってたんだけど。今のミュージシャンで、誰かそういった音楽をやっているグループがいるかどうか。」
D:「なるほど、ジャンゴ系のスイング・ジャズを今もやっているグループね。1つ紹介しようか? あまり、日本では、知られていないと思うけど、パール・ジャンゴ(Pearl Django)というグループ。グループの編成は、ジャンゴと同じ。いわばジャンゴの遺伝子を持ったグループということ。アルバム名は、ズバリ「アヴァロン(Avalon)」
M:「そうか、さっそく彼に伝えるよ。」
D:「Murphyくん、でもね、やっぱりオリジナルのジャンゴの演奏がなんといっても最高だね。いくら録音が古くても、その時代ならではの生きた音楽だし、その当時の最前線だったからね。グラッペリとの絶妙なコンビ、時代を先取りした新しさは、今聴いても新鮮だ。」
M:「わかった。あくまでジャンゴの当時の演奏があっての今だからね。」
D:「その上で、ジャンゴのDNAを持ったグループが、これからの時代、活躍してくれることは、ボクにとっては大変うれしいことだね。とくに、今の時代、ふたたび、あのジャンゴスタイルが求められていると思う。新しいグループは、ライブでその演奏に接することもできるし、彼らなりの新しい解釈も加味されているから、今後楽しみだね。」
M:「ところで、ジャンゴって、何度も聴きたくなるね。」
D:「そのとおり。毎日聴けば仕事の疲れも吹っ飛ぶし、からだもスイングし始めるよ。これ、”Django効果”というんだ。からだがスイングすると、いいアイデアも浮かぶし、発想が豊かになる。」
M:「おもしろいこというね。Django効果か。Djangoくんは、もうその効果がでてるの?」
D:「あたりまえだろう。ボクは、もともと名前からしてDjangoなんだから。」
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Avalon Pearl Django (Modern Hot Records) 2000/11/7リリース
Neil Andersson(Guitar),
Michael Gray(Violin),
Rick Leppanen( Double Bass),
Greg Ruby(Guitar),
Dudley Hill(Guitar)