第55回 不滅のジャズ名曲-その55-スター・アイズ(Star Eyes)

Murphy:「バリー・ハリス(Barry Harris)のコンコード・レーベルに吹き込んだLive at Maybeck Recital Hall, Vol. 12は素晴らしいね。つくづくこういうアルバムが欲しかったんだと思った。それで、バリー・ハリスに興味を持ったんだけど、Djangoくん、他のアルバムを教えてくれる?」

Django:「Live from New York, Vol. 1という最新アルバムがある。昨年(2006年)の夏にLineageというマイナーレーベルからリリースされた。NYのライブハウスでのライブレコーディング。こちらは、ピアノソロではなく、トリオ。ジャズの名曲がズラリ並んでおり全10曲、最初の曲がスター・アイズ(Star Eyes)。この曲はGene De Paulの1943年の作品。1942年に作曲した四月の思い出(I’ll Remember April)に続く当時の大ヒット曲。パーカーを初め、アート・ペッパーもMeets the Rhythm Sectionに吹き込み、ティナ・ブルックスもMinor Move(Blue Note)で秀作を残している。

バリー・ハリスのこのアルバムは、他に、 PerdidoNight in TunisiaTea for Twoなどのスタンダード曲が収録されている。前回でも言ったように、バリー・ハリスはパウエル直系のバップピアニストで、今や貴重な存在。聴けば聴くほど味が出る演奏は、前回紹介したピアノソロアルバム同様で、このアルバムもライブだからリラックスしたなかに、長年ピアノを引き続けてきた彼ならではの洒脱なセンスのよさが溢れている。いずれ入手困難になることは間違いないだろう。パーカーが好きで、ビバップ派のピアニストを捜している人にはまさに至福のアルバムだね。Murphyくん、今からでも遅くないから、彼のアルバムはコツコツ集めておいた方がいいよ。」

M:「バリー・ハリスなんて全然知らなかった。Djangoくんからバリー・ハリスのことを聞いて、自分で調べてみたんだけど、鳩の写真のジャケットで有名なサド・ジョーンズ(Thad Jones)のザ・マグニフィセント・サド・ジョーンズ(Blue Note)でピアノを弾いていたんだね。」

D:「そのとおり。ちなみにサド・ジョーンズは、前々回に紹介したハンク・ジョーンズと兄弟で、ドラムのエルヴィン・ジョーンズを含めてジョーンズ3兄弟だ。」

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Live from New York, Vol. 1 : Barry Harris Trio 2006

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第54回 不滅のジャズ名曲-その54-パーカーズ・ムード(Parker’s Mood)

Murphy:「前回のハンク・ジョーンズのアルバムのように、気軽に聴けるピアノソロのCDを紹介してくれる?」

Django:「コンコードのLive at Maybeck Recital Hallシリーズのなかで、第12回のアルバムは、バリー・ハリス(Barry Harris)のピアノソロなんだけど、これがまた素晴らしい。バリー・ハリスは、パウエル派のピアニストのなかでも通好みで、聴くほどに味が出てくる演奏をする人。ビバップが好きな人に最適なピアニストだ。一聴すればなんでもないんだけど、さりげない音のなかに隠された微妙なニュアンスが込められている。

Live at Maybeck Recital Hallでは、全10曲収録されており、これがまた申し分ない選曲だ。ラストがパーカーの有名なブルースナンバー、パーカーズ・ムード(Parker’s Mood)で、冒頭から惹き込まれるよ。リラックスしたなかにキラリと光る洒脱なセンスが素晴らしい。ブルージーな雰囲気が空間を包み込む。ジャズの醍醐味がピアノ一台で堪能できる。本当はこういったピアノソロこそ、身近でいつまでも飽きずに聴けるんだ。」

M:「そのアルバムは今でも入手できるの?」

D:「いや残念ながら入手困難だね。1990年にリリースされたんだけど。また再発されるかもしれない。」

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Live at Maybeck Recital Hall, Vol. 12 : Barry Harris 1990

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