マーフィーのハワイな日記 -その3-

夏が近づいてきた。ハワイアン・ミュージックの似合う季節。

マーフィーのおすすめハワイアン・ミュージック-その2-

ハワイ音のおみやげ決定盤

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リスペクトレコードから2007/5/9リリースのニューアルバム。ハワイの実力派ミュージシャンが参加したハワイ名曲集。ハワイで最長老の現役スラック・キー・ギター・プレーヤーの、 レイ・カーネほか、伝説のミュージシャン、ギャビー・パヒヌィの息子マーチン・パヒヌィ、それに、ハワイでNo.1のラウンジ・ピアニスト、レネ・パウロ、日本から山内雄喜氏も参加した注目のアルバム。アルバムタイトルは、「ハワイ音のおみやげ決定版」となっているが、中身は本格的で、そこらの辻褄合わせのコンピレーションものとは大違い。アコースティック・ギターファンにも広くおすすめのアルバム。

やはり、このアルバムも、Konaビールが似合う。

マーフィーのハワイな日記 -その2-

夏が近づいてきた。ハワイアン・ミュージックの似合う季節。

マーフィーのおすすめハワイアン・ミュージック-その1-

Legends of the Hawaiian Steel Guitar

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Hana Olaレーベルは、ハワイアン・ヴィンテージ・ミュージックの宝庫。本アルバムは、かつてハワイアン音楽の花形楽器であったスチールギターの、新旧折り混ぜた貴重なコンピレーションCD。ジャケットがいい。

このアルバムを聴きながら、Konaビールを飲む。

マーフィーのハワイな日記 -その1-

夏が近づいてきた。アロハの似合う季節。

●暑さ対策-その1- 本場のハワイアン音楽が流れるラジオを聞こう!

ハワイのビッグアイランド、ヒロに店を持つ、シグ・ゼーン(sig zane)のホームページに入ると、RADIOチャンネルから本場のハワイアン・ミュージックが流れる。全部で9トラック用意されている。サウンドの生きの良さは、まさに産地直送っていう感じ。ハワイの現地の写真もなかなか優れている。

●暑さ対策-その2- 軽快カメラで街を歩こう!

軽いカメラは、身軽に動ける。コンパクトなカメラは、いつでも持ち歩ける。カメラを持って街に出よう。散歩のお供はコンパクトなカメラに限る。でも、現在のコンパクト・デジカメは、確かに軽量なんだけど、魅力に欠ける。それは、まっすぐな線が曲がって写ってしまうこと。建物が湾曲して写る。ワイド側が物足りないこと。広角専用機は高すぎること。写りに不満だらけのコンパクト・デジカメは、やはりその場しのぎの道具か。

そこで切り札登場、オリンパスE-410。本格的なデジタル一眼レフのくせに、軽量コンパクトだ。かつてのフィルム一眼レフ時代の軽快さをようやく取り戻した機種だ。贅肉がやっととれてきた。グリップがなくなりスリムになった。しかも写りがよい。この場合の「よい」というのは、まっすぐな線が曲がって写らないこと。もちろん厳密には、歪曲収差というのは若干発生するが、許される限度内だということ。もうひとつのこのカメラの優れた点は、パナソニックの新開発CCD搭載により、ライブビューが可能になったこと。これはスナップには実にありがたい機能だ。

だいたいスナップ撮影では、時間をかけてファインダーをじっくり見ることなどほとんどないわけで、いつも「カン」に頼るわけだ。「思ったときにすぐにシャッターを切る。」これが基本。タイミングが最も重要。だからノーファインダーで撮ることも多い。ファインダーは単なる確認用で、カメラを構える前にすでに構図が出来上がっていて当たり前。そんな写し方がスナップの醍醐味であるから、背面の液晶ディスプレイに、ライブビュー機能により、画像が写る機能は、本当に便利だ。オリンパスE-410は、スナップ王という形容がぴったりだ。

それとあとは感度だ。今度のE-410で、ようやくISO800までが実用域になった。つまり相当感度を上げても、ノイズが発生しなくなったということ。だから、撮影可能時間が増え、まわりが暗くなっても撮影タイムが持続する。それと、高速でシャッターを切れるので、手ぶれ補正などついていなくても問題なし。

かつてのフィルム時代のコンパクトさを取り戻したE-410。現状で十分満足だが、さらに次期モデルへの、要望も高まってくる。次は、オリンパス・デジタルPENシリーズを是非。(Murphy)

第62回 不滅のジャズ名曲-その62-恋に恋して(Falling In Love With Love)

ジャズの新レーベルが発足した。"One"レーベル。2007年2月に設立され、この5月16日に第一弾がリリースされた。アルバムタイトルは、鈴木良雄トリオfeaturing海野雅威

"One"レーベルは、 鈴木良雄、伊藤潔、タモリ、五野洋の4人により設立された。その設立趣旨にデューク・エリントンの言葉が引用されており、大変興味深い。

"音楽とは古いとか、新しいとか言うことではなく、ただいい音楽か、悪い音楽かということだ。"

4人のメンバーは、チンさんのニックネームで親しまれている、日本のジャズ界のリーダー的存在である、ベース奏者の鈴木良雄。70年代前半に、CBSソニーでプロデューサーとして活躍し、以降現在まで200枚にもおよぶアルバムを制作してきた名プロデューサー、伊藤潔。それにタモリ。そして、2004年に55Recordsを設立し、イタリアの若手ヴォーカリスト、ロバータ・ガンバリーニのデビュー作「イージー・トゥ・ラヴ」を世に送り出した、現在55Records代表の五野洋。

ところで、同レーベル第一弾のアルバムは、ベースの鈴木良雄と、注目の若手ピアニスト海野雅威、それにセシル・モンロー(ds)のトリオによる演奏。10曲中8曲はスタンダードで構成されており、チンさんとセシルのリズム陣が素晴らしいだけに、海野雅威が自由にのびのび楽しみながらプレーしており、実に心地よくスイングする好アルバムに仕上がっている。3曲目には、Richard Rodgers(作曲)、Lorenz Hart(作詞)のおなじみのコンビが書いた、恋に恋して(Falling In Love With Love)が入っており、この曲でも海野のグルーブ感がすばらしい。(Django)

 ◇◇◇

For You 鈴木良雄トリオfeaturing海野雅威 (2007/5/16リリース)

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不滅のジャズ名曲・過去の掲載リスト

第1回 不滅のジャズ名曲-その1- ジャンゴ(Django)

第2回 不滅のジャズ名曲-その2- ドナリー(Donna Lee)

第3回 不滅のジャズ名曲-その3- スペイン(Spain)

第4回 不滅のジャズ名曲-その4- オール・ザ・シングス・ユー・アー(All The Things You Are)

第5回 不滅のジャズ名曲-その5- バグズ・グルーブ(Bag’s Groove)

第6回 不滅のジャズ名曲-その6- 時の過ぎゆくままに(As Time Goes By)

第7回 不滅のジャズ名曲-その7- ファイヴ・スポット・アフター・ダーク(Five Spot After Dark)

第8回 不滅のジャズ名曲-その8- アイ・リメンバー・クリフォード(I Remember Clifford)

第9回 不滅のジャズ名曲-その9- ボヘミア・アフター・ダーク(Bohemia After Dark)

第10回 不滅のジャズ名曲-その10- ワン・ノート・サンバ(One Note Samba)

第11回 不滅のジャズ名曲-その11- セント・トーマス(St. Thomas)

第12回 不滅のジャズ名曲-その12- バードランドの子守唄(Lullaby Of Birdland)

第13回 不滅のジャズ名曲-その13- ノーバディ・エルス・バット・ミー(Nobody Else But Me)

第14回 不滅のジャズ名曲-その14- 4月の思い出(I’ll Remember April)

第15回 不滅のジャズ名曲-その15- サマータイム(Summertime)

第16回 不滅のジャズ名曲-その16- 霧深き日(A Foggy Day)

第17回 不滅のジャズ名曲-その17- 明るい表通りで(On the Sunny Side of the Street)

第18回 不滅のジャズ名曲-その18- スターダスト(Stardust)

第19回 不滅のジャズ名曲-その19- マンハッタン(Manhattan)

第20回 不滅のジャズ名曲-その20- セントルイス・ブルース(St. Louis Blues)

第21回 不滅のジャズ名曲-その21- アイヴ・ガット・ザ・ワールド・オン・ア・ストリング(I’ve Got the World on a String)

第22回 不滅のジャズ名曲-その22-ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ(You’d Be So Nice To Come Home To)

第23回 不滅のジャズ名曲-その23-モーニン(Moanin’)

第24回 不滅のジャズ名曲-その24-サーフ・ライド(Surf Ride)

第25回 不滅のジャズ名曲-その25-マイナー・スイング(Minor Swing)

第26回 不滅のジャズ名曲-その26-ボーイ・ミーツ・ゴーイ(グランド・スラム)(Boy Meets Goy (Grand Slam))

第27回 不滅のジャズ名曲-その27-ニューヨークの秋(Autumn in New York)

第28回 不滅のジャズ名曲-その28-アヴァロン(Avalon)

第29回 不滅のジャズ名曲-その29-バット・ノット・フォー・ミー(But Not For Me)

第30回 不滅のジャズ名曲-その30-ビリーズ・バウンス(Billie’s Bounce)

第31回 不滅のジャズ名曲-その31-ウエスト・エンド・ブルース(West End Blues)

第32回 不滅のジャズ名曲-その32-チェロキー(Cherokee)

第33回 不滅のジャズ名曲-その33-聖者の行進(When The Saints Go Marching In)

第34回 不滅のジャズ名曲-その34-イッツ・オールライト・ウイズ・ミー(It’s All Right With Me)

第35回 不滅のジャズ名曲-その35-イッツ・オンリー・ア・ペイパー・ムーン(It’s Only a Paper Moon)

第36回 不滅のジャズ名曲-その36-シング・シング・シング(Sing Sing Sing)

第37回 不滅のジャズ名曲-その37-ハニサックル・ローズ(Honeysuckle Rose)

第38回 不滅のジャズ名曲-その38-ソフト・ウインズ(Soft Winds)

第39回 不滅のジャズ名曲-その39-ムーンライト・セレナーデ(Moonlight Serenade)

第40回 不滅のジャズ名曲-その40-ミスティ(Misty)

第41回 不滅のジャズ名曲-その41-星影のステラ(Stalla By Starlight)

第42回 不滅のジャズ名曲-その42-スティープルチェイス(The Steeplechase)

第43回 不滅のジャズ名曲-その43-バーガンディ・ストリート・ブルース(Burgandy Street Blues)

第44回 不滅のジャズ名曲-その44-世界は日の出を待っている(The World Is Waiting For The Sunrise)

第45回 不滅のジャズ名曲-その45-ダイナ(Dinah)

第46回 不滅のジャズ名曲-その46-フォー・オン・シックス(Four On Six)

第47回 不滅のジャズ名曲-その47-アイ・ヴ・ファウンド・ア・ニュー・ベイビー(I’ve Found a New Baby)

第48回 不滅のジャズ名曲-その48-A列車で行こう(Take the ‘A’ Train)

第49回 不滅のジャズ名曲-その49-ラッシュ・ライフ(Lush Life)

第50回 不滅のジャズ名曲-その50-アローン・トゥゲザー(Alone Together)

第51回 不滅のジャズ名曲-その51-ソフィスティケイテッド・レディ(Sophisticated Lady)

第52回 不滅のジャズ名曲-その52-ザ・スター・クロスド・ラヴァーズ(The Star-Crossed Lovers)

第53回 不滅のジャズ名曲-その53-ブルー・モンク(Blue Monk)

第54回 不滅のジャズ名曲-その54-パーカーズ・ムード(Parker’s Mood)

第55回    不滅のジャズ名曲-その55-スター・アイズ(Star Eyes)

第56回    不滅のジャズ名曲-その56-ムース・ザ・ムーチェ(Moose The Mooche)

第57回    不滅のジャズ名曲-その57-ウィザウト・ア・ソング(Without a Song)

第58回    不滅のジャズ名曲-その58-身も心も(Body And Soul)

第59回    不滅のジャズ名曲-その59-ブルー・スカイズ(Blue Skies)

第60回    不滅のジャズ名曲-その60-ラヴァー・カム・バック・トゥ・ミー(Lover Come Back To Me)

第61回    不滅のジャズ名曲-その61-あなたに降る夢(It Could Happen to You)

第62回 不滅のジャズ名曲-その62-恋に恋して(Falling In Love With Love)

第63回 不滅のジャズ名曲-その63-ライク・サムワン・イン・ラブ(Like Someone In Love)

第64回 不滅のジャズ名曲-その64-夜も昼も(Night And Day)

第65回 不滅のジャズ名曲-その65-パーカーズ・ムード(Parker’s Mood)

第66回 不滅のジャズ名曲-その66-スクラップル・フロム・ジ・アップル(Scrapple From The Apple)

第67回 不滅のジャズ名曲-その67-ソリチュード(Solitude)

第68回 不滅のジャズ名曲-その68-ムード・インディゴ(Mood Indigo)

第69回 不滅のジャズ名曲-その69-ゼム・ゼア・アイズ(Them There Eyes)

第70回 不滅のジャズ名曲-その70-ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ(Love Is Here to Stay)

第71回 不滅のジャズ名曲-その71-ソルト・ピーナツ(Salt Peanuts)

第72回 不滅のジャズ名曲-その72-イン・ア・センチメンタルムード(In A Sentimental Mood)

第73回 不滅のジャズ名曲-その73-オーニソロジー(Ornithology)

第74回 不滅のジャズ名曲-その74-イージー・トゥ・ラヴ(Easy To Love)

第75回 不滅のジャズ名曲-その75-マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ(My One And Only Love)

第76回 不滅のジャズ名曲-その76-ゼム・ゼア・アイズ(Them There Eyes)

第77回 不滅のジャズ名曲-その77-ディープ・イン・ア・ドリーム(Deep In A Dream)

第78回 不滅のジャズ名曲-その78-アイム・オールド・ファッションド(I’m Old Fashoned)

第79回 不滅のジャズ名曲-その79-木の葉の子守歌(Lullaby Of The Leaves)

第80回 不滅のジャズ名曲-その80-ステラ・バイ・スターライト(Stella By Starlight)

第81回 不滅のジャズ名曲-その81-リカード・ボサノバ(Recado Bossa Nova)

第82回 不滅のジャズ名曲-その82-アイ・ウォント・トゥ・ビ・ハッピー(I Want To Be happy)

第83回 不滅のジャズ名曲-その83-いつか王子様が(Someday My Prince Will Come)

第84回 不滅のジャズ名曲-その84-枯葉(Autumn Leaves)

第85回 不滅のジャズ名曲-その85-恋とはどんなものかしら(What Is This Thing Called Love?)

第86回 不滅のジャズ名曲-その86-インディアナ(Indiana)

第87回 不滅のジャズ名曲-その87-ノー・グレイター・ラブ(There Is No Greater Love)

第88回 不滅のジャズ名曲-その88-アイ・オンリー・ハヴ・アイズ・フォー・ユー(I Only Have Eyes for You)

第89回 不滅のジャズ名曲-その89-恋人よ我に帰れ( Lover Come Back To Me)

第90回 不滅のジャズ名曲-その90-Cジャム・ブルース(C Jam Blues)

第91回 不滅のジャズ名曲-その91-マイルストーンズ(Milestones)

第92回 不滅のジャズ名曲-その92-ノー・プロブレム(No Problem)

第93回 不滅のジャズ名曲-その93-オール・ブルース(All Blues)

第94回 不滅のジャズ名曲-その94-チェルシー・ブリッジ(Chelsea Bridge)

第95回 不滅のジャズ名曲-その95-ポルカ・ドッツ・アンド・ムーンビームス(Polka Dots And Moonbeams)

第96回 不滅のジャズ名曲-その96-ホワッツ・ニュー(What’s New?)

第97回 不滅のジャズ名曲-その97-ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)

第98回 不滅のジャズ名曲-その98-ストレート・ノー・チェイサー(Straight No Chaser)

第99回 不滅のジャズ名曲-その99-ゼア・ウィル・ネヴァー・ビ・アナザー・ユー(There Will Never Be Another You)

第61回 不滅のジャズ名曲-その61-あなたに降る夢(It Could Happen to You)

このシリーズも60回を終え、いよいよ第61回を迎えることになりました。「ジャズに名曲なし、アドリブあるのみ」とよくいわれたものですが、昔から「ジャズに名曲あり」といつも思い続けています。ジャズ・スタンダード曲は、もともと映画主題歌やミュージカルなどの挿入歌であったものが多く、いわゆる「歌もの」と呼ばれているものは、メロディが美しく、印象的で、しかもコード進行が魅力的なものが実にたくさん存在しています。

今回は、そういったジャズスタンダード曲のなかでも、とびきりメロディが美しく、一度聴いたら忘れられない名曲を選んでみました。1944年のパラマウント映画、ミュージカル・コメディ And the Angels Sing(邦題:そして天使は歌う)の主題歌で、It Could Happen to You(あなたに降る夢)という明るく軽快な曲です。(作曲Jimmy Van Heusen、作詞Johnny Burke)。

ジョー・スタッフォードのヒット曲でも知られるこの曲は、ジューン・クリスティやダイナ・ワシントンなど、多くのボーカリストに愛されてきました。また、マイルス・デイビスも 1956年にRelaxin’ with the Miles Davis Quintetに吹き込み、ソニー・ロリンズも The Sound of Sonny(1957年)に名演を残し、他に、バド・パウエル、チェット・ベイカーなど、実に多くのジャズプレーヤーに演奏されてきました。

さて、今回、この屈指の名曲を採り上げましたが、あまりにも名演が多くて、誰のアルバムを選ぼうかと考えたのですが、なかなか絞りきれません。そこで、比較的新しい録音(1995年)で、ライブレコーディング、しかもアーティスト秘蔵のテープであったものが、ついに2006年にリリースされたというアルバムを紹介します。演奏は、これまで採り上げた人で、一人は、前回紹介したピアニストのホッド・オブライエン(Hod O’Brien)、もう一人もピアニストで、54、55、56回に連続して掲載したバリー・ハリス(Barry Harris)で、なんと、この二人の共演アルバムです。

アルバム名は、Hod Meets Barry :Hod O’Brien Trio with Barry Harris "Live"で、ヴァージニア大学で95年11月5日に行なわれたコンサートを収録したもので、2006年に初めてリリースされました。ホッド・オブライエンと先輩格のバリー・ハリスという、二人のバップ・ピアニストの共演は、貴重なレコーディングで、想像どおり、素晴らしい演奏を展開しています。このアルバムは曲目も魅力的で、パーカーの名曲、Moose the Mouche、Ornithologyなど、他に Round Midnightも収録され、アルバムのラストは、パーカーのYardbird Suiteをホッド・オブライエンの奥さんが歌っています。(Django)

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ホッド・ミーツ・バリー“ライブ”(Hod O’Brien Trio with Barry Harris "Live")

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第60回 不滅のジャズ名曲-その60-ラヴァー・カム・バック・トゥ・ミー(Lover Come Back To Me)

Murphy:「このところピアノトリオのアルバムが続いているんだけど、他にもっとピアノトリオのいいアルバムを紹介してくれる? ビバップ系のピアニストで、最新録音のアルバムがいいんだけど。」

Django:「たぶんMurphyくんの好みからすると、硬派なバップ・ピアニストであって、しかもシンプルで今の時代感覚に合う洗練された味わいを持つ演奏ということかな。その中で、最新録音ということで考えると、1936年1月19日シカゴ生まれの白人ピアニストで、ホッド・オブライエン(Hod O’Brien)という人のアルバムがおすすめだね。アルバム数も少なく知名度はそれほどないんだけど、ここ数年で日本でも人気上昇中だ。そのホッド・オブライエン・トリオの最新盤で、I’m Getting Sentimental Over You(センチになって)というアルバムは、有名なスタンダードナンバーを採り上げており、聴きやすくしかも深い味わいを持っている。音数が少なくシンプルなスタイルはおそらく一度聴けば必ずMurphyくんも気に入ると思うよ。」

M:「曲目は?」

D:「ズラリ名曲が並んでいる。そのなかでも、ビリー・ホリディが歌って一躍有名になったLover Come Back To Youがいいね。この曲は、その後1946年にレスター・ヤング、48年にはディジー・ガレスピーが、それぞれ吹き込んでおり、ジャズの名曲中の名曲といえる魅力的な曲。もともとこの曲は、1928年に Sigmund Rombergが作曲したブロードウェイ・ミュージカルのThe New Moonのなかの挿入歌で、作詞はオスカー・ハマーシュタインⅡ。このアルバムには、他に、 C Jam Blues、I Remember You、April In Parisなどが入っている。」

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I’m Getting Sentimental Over You(センチになって): Hod O’Brien Trio(ホッド・オブライエン・トリオ)2006年11月リリース

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第59回 不滅のジャズ名曲-その59-ブルー・スカイズ(Blue Skies)

Django:「ブルー・スカイズ(Blue Skies)という曲、知ってる?」

Murphy:「聞き覚えのある曲名だけど、思い出せない。確か、以前にDjangoくんが紹介したアルバムのなかで出てきたような気がするけど。」

D:「そのとおり。ジャズヴォーカリストのバーバラ・リーのアルバム(彼女の名前がアルバム・タイトルになっている)のなかに入っていた曲で、アーヴィング・バーリン(Irving Berlin)という人が1927年に作詞・作曲した。ベニー・グッドマンのヒット曲でもある。1938年のカーネギーホール・コンサートでも演奏している。」

M:「アーヴィング・バーリンという人は有名な作曲家なの?」

D:「アメリカン・ポピュラーソングの作詞作曲家。いわゆるシンガー・ソング・ライターだね。ジョージ・ガーシュインは、アーヴィング・バーリンのことを、”アメリカのシューベルト”と呼んで敬愛していたそうだ。Murphyくんも知っている、I’m Dreaming of a White Christmas〜♪で始まるホワイト・クリスマス(White Christmas)は、彼の代表作(1940年)。出世作は、1919年のアレクサンダース・ラグタイム・バンド(Alexander’s Ragtime Band)。他に有名な曲では、チーク・トゥ・チーク(Cheek to Cheek)など。彼は長生きした人で、1888年生まれで1989年に亡くなっている。

ところで、このブルー・スカイをピアノ・トリオで演奏した好アルバムがあるので紹介しよう。ビル・チャーラップ(Bill Charlap)が、ピーター・ワシントン(b)ケニー・ワシントン(ds)と組んで、2000年にブルー・ノートに録音したWritten In The Starsというアルバムで、4曲目に入っている。ビル・チャーラップは以前に紹介した、ビリー・ストレイホーンの名作集、ラッシュ・ライフ(Lash Life)にも参加しており、今最も充実した演奏を聴かせてくれるピアニスト。スタンダード曲の解釈における洞察力や構成力が見事。ピアニストからフォルテシモまでのダイナミックレンジを生かした彼の演奏は、ピアノという楽器の素晴らしさを改めて教えてくれる。いつも歌心溢れ、最新録音版でありながら、古き良き時代のジャズの香りを今に伝えてくれる。かといって単なるオールド色に彩られた音楽ではなく、新しい時代の若々しい感性が溢れ、どの曲も一貫して高い音楽性を維持している。リズム陣も素晴らしい。」

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Bill Charlap Trio : Written in the Stars (Blue Note 2000年5月NY録音)

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第58回 不滅のジャズ名曲-その58-身も心も(Body And Soul)

Murphy:「今回もピアノソロアルバムについて教えてほしいんだけど。」

Django:「ハンク・ジョーンズ、バリー・ハリスなどを以前紹介したけど、もうひとり是非ピアノソロで採り上げたい人がいる。Murphyくん、MJQのピアノ奏者は誰だったか知っているよね?」

M:「もちろん、ジョンルイス(John Lewis)だろう。」

D:「MJQは、1952年から1974年まで、実に22年という長期にわたり演奏活動を行ってきた。1961年に初来日し、その後66年、74年にも来日している。解散後、76年に、ジョン・ルイスは、ハンク・ジョーンズ、マリアン・マクパートランドとともに日本コンサートツアーを行った。そのときの、東京郵便貯金ホールでのライブレコーディング・アルバムが確か1980年ごろにLPで発売されたが、1994年にCDで再発されている(その後2002年にも再発)。

このアルバムは、全9曲のうち6曲が、ジョン・ルイスのピアノソロで、残りの3曲が、ハンク・ジョーンズとのデュオというとても興味深い作品。ジョン・ルイスとハンク・ジョーンズのデュオアルバムというのは、おそらくこれが初めてだと思う。二人は個人的にも親しい間柄であったそうで、お互い演奏スタイルが全く異なるだけに、そのコントラストがすばらしく、ボクの座右の愛聴盤になっている。」

M:「ジョン・ルイスのピアノはMJQを聴いて知っているつもりだけど、ピアノソロになるとかなり演奏スタイルは変わるの?」

D:「基本的には同じ。スインギーで雄弁に語りかけてくるオスカー・ピーターソンのような華麗なピアニストとは対極をなす演奏スタイルで、一言でいえば簡素で地味な演奏だ。音数は少なくムダな音を奏でない。音と音の間が実に見事に生かされており、一音一音を大切にし心をこめて歌っている。初めて聴いてもそれなりに良さがわかると思うが、2度、3度と聴けばジョン・ルイスの音楽のすばらしさがもっとわかってくる。聴くたびにその音楽から新しいことを発見でき、実に味わい深さを持った演奏だ。彼のピアノからは一種の気品とでもいえるものがあり、作曲家としても優れた多くの作品を残し、アレンジャー、プロデューサーとしても人望の厚い、彼の人柄がそのまま表れた音楽だ。

このアルバムで、ジョン・ルイス自らが作曲したジャンゴ(Django)をソロで弾いているが、これは、ボクがこれまで聴いたジャンゴの演奏のなかでも最も好きな演奏だ。淡々と語りかけるなかで、何度聴いても聴き飽きない一種のクラシックとでもいえる気品の高さが一貫して表出されている。作曲者自らがソロで演奏したこの曲を聴くと、クラシック、ジャズなどのジャンルの垣根を超えて、ジョン・ルイスならではの個性が、本当に人の心を打つ人間性豊かな音楽として、ひしひしと自分に伝わってくる。

ハンクジョーンズとのデュオのなかで演奏されるセントルイス・ブルース(St. Louis Blues)もすばらしい。向かって左がジョン・ルイス、右がハンク・ジョーンズ。演奏スタイルが全く異なるだけに、デュオで演奏しても重ならず、それぞれの個性がいっそう引き立っている。

二人のデュオで、ジャズスタンダード曲、身も心も(Body And Soul)も演奏している。この曲は、1930年にソング・ライター、ジョニー・グリーン(Johnny Green)が作曲したブロードウエイ・レビュー、Three’s A Cloudのなかの曲。ビリー・ホリデイが歌いコールマン・ホーキンスが演奏し、その後今でも多くのジャズ・ミュージシャンに演奏される名曲。他に、四月の想いで(I’ll Remember April)もラストに収録されている。

なお、このアルバムのカバー・ジャケットを飾る、ジョンルイスの肖像画は、映画、ジャズ、ミュージカル評論の第一人者であった、野口久光氏が描かれたスケッチ。

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ジョン・ルイス・ソロ/デュオ・ウィズ・ハンク・ジョーンズ Live in Tokyo

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第57回 不滅のジャズ名曲-その57-ウィザウト・ア・ソング(Without a Song)

2007年2月にアダム・ロジャース(Adam Rogers)の最新作Time And The Infiniteがリリースされた。Criss Cross Jazz レーベルからの4作目で、今回はギタートリオによる演奏。使用ギターはギブソンのES-335とともにナイロン弦のクラシックギターも用いている。オリジナル曲が4曲で、他にスタンダード曲が5曲。そのなかでYoumansが1929年に作曲したWithout A Songが収録されているが、本アルバム中ハイライトともいえる名演だ。この曲は、ソニー・ロリンズが1962年にカムバック第一作としてRCAに吹き込んだ橋(The Bridge)というアルバムに収録されており、今回のアダム・ロジャースは、当時のソニーロリンズの演奏を踏まえて、彼ならではの新しい解釈で、見事な演奏を披露している。

当時のソニー・ロリンズのバンドには、ジム・ホールが参加しており、アダム・ロジャースのギターからは、ジム・ホールの影響もみられる。ライナーノートによると、2005年のジム・ホールの誕生日にヴィレッジ・ヴァンガードにおいて、共演している。

アダム・ロジャースは、1965年NY生まれ。ビバップにルーツをもつ、いわゆるジャズギターの正統的な奏法を消化した上で、大学時代にクラシックギターも勉強している。ジム・ホールやパット・メセニーらのコンテンポラリーなジャズギター・スタイルと、フィンガースタイルでのクラシカルなアプローチの両方を持ち合わせており、曲ごとにそれぞれの奏法を使い分けている。特筆すべき点は、彼の自在なアドリブフレーズが、決して無機的にならず、のびのびと歌うように語りかけてくることである。

アダム・ロジャースの演奏を一聴して思うことは、その音楽性の高さであり、おそらくパット・メセニー以来の次世代を担う最有力候補のジャズギタリストであろう。優れたテクニックを披露できるギタリストは他にたくさんいるし、個性的な演奏家も多いが、コンテンポラリーな演奏スタイルで、これだけ説得力を持ったアドリブを展開できる人はそう多くない。(Django)

 ◇◇◇

Adam Rogers : Time and the Infinite(2007年2月リリース最新録音)

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