Django:「ブルー・スカイズ(Blue Skies)という曲、知ってる?」
Murphy:「聞き覚えのある曲名だけど、思い出せない。確か、以前にDjangoくんが紹介したアルバムのなかで出てきたような気がするけど。」
D:「そのとおり。ジャズヴォーカリストのバーバラ・リーのアルバム(彼女の名前がアルバム・タイトルになっている)のなかに入っていた曲で、アーヴィング・バーリン(Irving Berlin)という人が1927年に作詞・作曲した。ベニー・グッドマンのヒット曲でもある。1938年のカーネギーホール・コンサートでも演奏している。」
M:「アーヴィング・バーリンという人は有名な作曲家なの?」
D:「アメリカン・ポピュラーソングの作詞作曲家。いわゆるシンガー・ソング・ライターだね。ジョージ・ガーシュインは、アーヴィング・バーリンのことを、”アメリカのシューベルト”と呼んで敬愛していたそうだ。Murphyくんも知っている、I’m Dreaming of a White Christmas〜♪で始まるホワイト・クリスマス(White Christmas)は、彼の代表作(1940年)。出世作は、1919年のアレクサンダース・ラグタイム・バンド(Alexander’s Ragtime Band)。他に有名な曲では、チーク・トゥ・チーク(Cheek to Cheek)など。彼は長生きした人で、1888年生まれで1989年に亡くなっている。
ところで、このブルー・スカイをピアノ・トリオで演奏した好アルバムがあるので紹介しよう。ビル・チャーラップ(Bill Charlap)が、ピーター・ワシントン(b)、ケニー・ワシントン(ds)と組んで、2000年にブルー・ノートに録音したWritten In The Starsというアルバムで、4曲目に入っている。ビル・チャーラップは以前に紹介した、ビリー・ストレイホーンの名作集、ラッシュ・ライフ(Lash Life)にも参加しており、今最も充実した演奏を聴かせてくれるピアニスト。スタンダード曲の解釈における洞察力や構成力が見事。ピアニストからフォルテシモまでのダイナミックレンジを生かした彼の演奏は、ピアノという楽器の素晴らしさを改めて教えてくれる。いつも歌心溢れ、最新録音版でありながら、古き良き時代のジャズの香りを今に伝えてくれる。かといって単なるオールド色に彩られた音楽ではなく、新しい時代の若々しい感性が溢れ、どの曲も一貫して高い音楽性を維持している。リズム陣も素晴らしい。」
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Bill Charlap Trio : Written in the Stars (Blue Note 2000年5月NY録音)