第70回 不滅のジャズ名曲-その70-ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ(Love Is Here to Stay)

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ア・ウーマン・イン・ラヴ(紙ジャケット仕様)

Murphy:「バーバラ・リー(Barbara Lea)の50年代のアルバムが復刻されたね。以前に、Djangoくんから教えてもらった第13回に掲載されたバーバラ・リーのアルバムを聴いて、好印象を持っていたので気になっていたんだ。

Django:「今回6/20に発売されたア・ウーマン・イン・ラヴ(A Woman In Love)は、1955年にリヴァーサイドからデビューアルバムとしてリリースされたLPに収録された8曲と、他に1954年に吹き込んだ2曲を加えたもので、1955年のものは名手ルディ・ヴァン・ゲルダーが録音したといわれている。

このアルバムは、国内盤はこれまでまったくリリースされたことがなかっただけに、ようやくファンの要望に応えるべく、シナトラ・ソサエティ・オブ・ジャパン(Sinatra Society of Japan)から復刻された大変価値あるものといえる。」

Murphy:「Djangoくんも、これまで聴いたことがなかったの?」

Django:「実は、1980年代のはじめに、偶然京都の十字屋のジャズコーナーで見つけて購入した。もちろんLPだけど、オーディオファイルというレーベルのもの。当時の印象は、家に持ち帰り聴いたとたん、ほんとうにいいアルバムを見つけたと思い、それ以降バーバラ・リーのファンになったというわけだ。それだけに自分でも大変思い出深いアルバム。パーソネルは、ジョニー・ウィンドハースト(tp)、ビリー・テイラー(p)、ジミー・シャーリー(g)、アール・メイ(b)、パーシー・ブライス(ds)で、大変落ち着いた円熟の演奏だ。選曲も30年代から40年代のスタンダード曲が中心で、バーバラの落ち着いた歌声が当時のレトロな雰囲気を再現し、今の時代改めて聴くと、さらに魅力が増してくる。」

Murphy:「ぼくのようなジャズ・ヴォーカルの入門者でも、バーバラ・リーのヴォーカルは、抵抗なく受け入れられ、自然でやさしく、ホッとする歌声は、気分が安らぐし、こうした大人のジャズヴォーカルは大歓迎だね。」

Django:「今回のアルバムは名曲ばかりで、本当はすべて採り上げたいんだけど、しいてあげるなら、ガーシュインの最後の作品とされる、1938年に作曲されたラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ  (Love Is Here to Stay)を選んでおこう。ガーシュインのヒット曲のなかでも人気曲で、多くの映画にも挿入された曲。

それにしても今回の復刻盤は、しっとりと落ち着いた大人のジャズヴォーカルを聴きたい人にぴったりのアルバムで、ジャズヴォーカル入門者にもおすすめです。」

第69回 不滅のジャズ名曲-その69-ゼム・ゼア・アイズ(Them There Eyes)

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The Kansas City Sessions

Murphy:「梅雨に入りかなり蒸し暑くなってきたので、このへんで涼しいジャズを紹介してくれる?」

Django:「涼しいジャズか、それこそMurphyくんの得意なジャンルのハワイアンの方がいいんじゃない?」

M:「いや、ウクレレなどは、夏向きであたりまえだから、もう少し本格的なジャズの中で選んでくれる? ボサノバも夏向きの定番だからカットだ。」

D:「そうなるとますます候補がなくなってきた。」

M:「もともとジャズは季節などあまり関係ないと思うし、Djangoくんの独断で選んでくれる?」

D:「それなら、あくまで個人的なイメージで。ズバリ、レスター・ヤング(Lester Young)だね。レスターはやはり戦前の演奏の方がいいし、ベイシー楽団を離れてのコンボ演奏というと、ニューヨークのコモドール(Commodore)レーベルに吹き込んだ1938年の演奏がいい。レスター・ヤングはどちらかといえば、コールマン・ホーキンスなどと違ってクールな演奏だから、この季節には意外に合うかも。」

M:「コモドールといえば、確か戦前にNYで開いていたジャズ専門のレコード屋さんだったような気がするけど。」

D:「そのとおり。Murphyくん、どこで知ったの?」

M:「小川隆夫さんの"ブルーノートの真実"っていう本を、以前に読んだときに、そのなかで出てきたのを覚えている。ブルーノートの創始者であるアルフレッド・ライオンがNYに渡ったころにあったレコード屋で、その店主が販売だけでは飽き足らず、ついにプロデュースまで行い、コモドール・レーベルを発足させたと書いてあった。」

D:「そう。Commodore Recordsは、当時NYのミッド・マンハッタンにあった伝説のジャズレコード・ストアの店主であるMilt Gablerが、1938年に発足させたジャズレーベル。そのレーベルから、1938年にThe "Kansas City" Sessonsというアルバムがリリースされた。Lester Young(ts,cl)、Buck Clayton(tp)、Eddie Durham(tb,eg)、Freddie Green(g)、Walter Page(b)、Jo Jones(ds)という6人のコンボ編成で吹き込まれた。

そのなかで、今回一曲だけ選ぶなら、夏向き特選ジャズと称して、ゼム・ゼア・アイズ(Them There Eyes)をピックアップした。この曲は、 Sweet Georgia Brownで有名なMaceo Pinkardという人の作曲。他にSugerなども有名。Them There Eyesという曲は、1930年にDoris Tauber、William G Traceyとともに作られた歌で、これまでサッチモやビリー・ホリデイなども吹き込んだ。今回のレスターのアルバムでは、ベイシー楽団で鉄壁のリズムギターを弾き続ける、あのフレディ・グリーン(Freddie Green)が、この曲だけなんとヴォーカルも担当しているから驚いた。それで、その歌がなかなかうまいんだ。当時のSPレコードだから3分以内でまとめられているんだけど、ムダが全くない。レスターのテナーも快調。CDでは別テイクも収録されている。CDにリマスターされ、1938年とは思えないほどの、なかなかいいしっかりした音質。他に1944年のセッションも入っているけど、やはり1938年のセッションがボクは好きだね。」

第68回 不滅のジャズ名曲-その68-ムード・インディゴ(Mood Indigo)

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Masterpieces by Ellington

Murphy:「デューク・エリントン(Duke Ellington)はアルバムが多くて何から聴いてよいかわからない。Djangoくんは、以前からエリントンが特に好きだといっていたので、ボクも少し興味を持ったんだけど、何から聴けばいい?」

Django:「確かに、エリントンのアルバムの数は多いね。その中でも、いわゆるベストアルバムというコンピレーションものが特に多いから、なおさらどれを選んでいいかわからなくなっている。それと、CDショップの店頭では、案外数が少ないのが現状だと思う。だいたいビッグバンドは、売れないという先入観があるからね。」

M:「デューク・エリントンのアルバムはLP時代でもあまり売れなかったの?」

D:「日本ではそうだったみたい。だから今でも、ベスト盤ばかりが店頭に並んでいるんだ。Murphyくんがもしこの機会にエリントンを聴いてみたいと思うなら、せっかくだからベスト盤を買わずにオリジナル盤の方を薦めるよ。」

M:「どうして?」

D:「ぼくも最初はベスト盤を買った。最近でも買うことがあるけど、やはりエリントンの場合は、特にLP時代のものは、一つのアルバムごとにコンセプトが異なり、そのまとまりがはっきりしているから、是非各時代ごとの名アルバムを購入してほしいね。エリントンの音楽は、一枚のLPのなかでの曲の配列も十分に意識した構成になっているものが多く、一言でいえば一枚のLPが組曲というふうに見立てることができる。だから、当時のLPをCD化したものを聴けば、その時代ごとの音楽の特徴がよくわかるし、それが大変おもしろい。」

M:「エリントンは、同じ曲を何回も吹き込んだと聞いているけど、実際にはどの程度なの?」

D:「ほとんどの曲は、再録音しているし、その度にガラッと変わるから興味深いね。例えば、ビリー・ストレイホーン作曲のA列車で行こうは、1941年が初吹き込みで、その後何度か録音し、1966年には、ビリーの追悼盤として録音したこの曲を、後でRCAが、ポピュラー・デューク・エリントンというアルバムに収録している。1941年盤はレイ・ナンス(tp)のソロをフィーチャーしたまさに古典的名演だし、1966年盤は、クーティ・ウィリアムス(tp)が豪快なプレイを見せ、どちらも意味があるんだ。

今回Murphyくんに是非聴いてほしいアルバムがあるんだけど、それは、エリントンのCBS時代に、従来の3分程度しか収録できなかったSPレコードから、一挙に十数分もの長時間収録が可能なLPレコードが出現したころにリリースされたもので、Masterpieces by Ellington(1951,52年)という記念すべきアルバム。もちろん、今はCD化されているんだけど、2004年にColumbia Legacyシリーズとして発売されたもの(輸入版)は、音質が飛躍的に改善され本当に素晴らしい。RCA盤は、CD化されてもどうも音質が今ひとつなんだけど、このColumbia Legacyシリーズは、どのアルバムも大変バランスのいい音がする。

なぜ、音質にこだわるかと言えば、エリントンの音楽は色彩の魔術師といわれるほど、そのサウンドが素晴らしく、アルバムの音質が非常に大切だから。このアルバムは、オリジナルは4曲で、3曲はボーナストラック。オリジナルの4曲は、いずれも長時間演奏で、1曲目のムード・インディゴ(Mood Indigo)は、15分余の長時間演奏。他に、ソフィスティケイテッド・レディ(Sophisticated Lady)、前回採り上げたソリチュード(Solitude)も含まれ、いずれもボクは傑作だと思っている。

ムード・インディゴは、インディゴ・ブルーという色彩をテーマとしたトーン・ポエムといえるもので、クラシックのドビュッシーやラヴェルに匹敵する名曲だ。1945年のRCA盤もいいけど、このCBS盤は録音の優れている点が、よりこの演奏を魅力的なものにしている。ジャズファンはもとよりクラシックファンにもぜひ聴いてほしい演奏だね。色彩豊かなサウンドが刻一刻とキャンバスのトーンを微妙に変化させ、その色は深みを持ち、見事な造形作品に仕立て上げられている。あの武満徹氏が、エリントンに憧れたことも、なるほどと思わせる曲であり、ジャズそのものでありながら、ジャズを超えて、音楽として今も生き続けているといつも思っている。ムード・インディゴを含む先程あげた3曲は、ジャンルを通り越して、ボクの最も好きな曲です。話が長くなったのでこのへんで中断します。」

第67回 不滅のジャズ名曲-その67-ソリチュード(Solitude)

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デューク・エリントン・ソングブック

Django:「今年は、エラ・フィッツジェラルド生誕90周年ということで、6月にユニヴァーサルから一挙にエラのアルバムが11タイトル限定版でリリースされた。そのなかには、Verve時代の作曲家別のソングブックシリーズも含まれている。コール・ポーター、ガーシュイン、ロジャース&ハート、アーヴィング・バーリン、ハロルド・アーレン、ジェローム・カーン、それにエリントンなど、もうこれだけでほとんどのジャズの名曲が揃ってしまうほどの、20世紀のアメリカを代表するソング集だ。」

Murphy:「すべて、エラ・フィッツジェラルドが歌っているの?」

D:「そのとおり。これだけの珠玉の名曲を作曲家別にシリーズ化して、すべて歌える人は、おそらくエラ・フィッツジェラルドを除いて他にはいないだろうな。」

M:「エラ・フィッツジェラルドは以前にもDjangoくんに紹介してもらって、サッチモとのデュオアルバムや、1954年に吹き込んだエリス・ラーキンスのピアノ伴奏による「ソングス・イン・ア・メロウ・ムード」というアルバムを買ったんだけど、そのときの印象は、ボクのようなジャズヴォーカルの素人でも抵抗なく聴けて、けっこう好印象を持ったことを覚えている。他のアルバムでもそうなの?」

D:「エラは、おそらくどのアルバムを聴いても満足すると思うよ。Murphyくんのようなジャズ・ヴォーカルの入門者にこそ聴いてもらいたいアルバムだね。エラの魅力っていうのは、やはりグラミー賞13回受賞が物語るように、すばらしい歌唱力にあると思うね。自然で変なくせがなく、のびのびと歌っているし、声量は豊かだし、その余裕というのは、すごいものがある。抜群の安定感で突き進むグルーブ感、バラードにみられる抒情感、アップテンポの曲での、スピードに乗ったスイング感など、どれも最高だ。

今回は、ソングブック集のなかでも特に傑出したアルバムである、デューク・エリントン・ソングブックを紹介したい。6月6日にユニヴァーサルから再発売されたこのアルバムは3枚組で、チェルシー・ブリッジのリハーサルも入っている。エリントンの曲は、音程が正確でないと、原曲の持ち味を十分生かしきれないんだけど、エラは本当にエリントンナンバーを歌う最適なシンガーだ。

このアルバムのなかから、今回の不滅のジャズ名曲として一曲だけ選ぶのは、大変むずかしけど、しいてあげれば、ソリチュード(Solitide)かな。この曲は、1934年に発表されたスローバラードで、色彩感溢れる叙情詩は、聴けば聴くほど魅力が高まる曲だね。でも、エリントンの名曲は他にもそれこそ数多くの優れたものがあり、このアルバムに収録された全曲がまさに不滅のジャズ名曲だといえる。」

マーフィーのハワイな日記 -その6- Hawaiian Slack Key Guitar

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レジェンズ・オブ・ハワイアン・スラック・キー・ギター

前回に続き、第49回においてもグラミー賞ベスト・ハワイアン・アルバムに輝いたスラック・キー・ギターの傑作アルバムが、いよいよ6月20日に国内リリースされる。

今回はマウイ島のKapaluaにあるリッツ・カールトンで2005年に収録されたライブ。Daniel Ho、Ledward Kaapana、Ozzie Kotani、George Kahumoku, Jr. 、Martin PahinuiとCyril Pahinuiの兄弟などの名手が収録されている。オリジナル版はすでに昨年9月に発売されており、ハワイではどこのCDストアでも目立つところに置かれていた。

このアルバムのデモは、Daniel Hoのホームページで試聴することができる。また、このページには Honolulu AdvertiserのWayne Harada氏のアルバムReviewsが掲載されている。

Daniel Ho(ダニエル・ホー)は、ハワイ出身、ロサンゼルス在住の注目の若手ハワイアン・スラック・キー・ギタリストで、ウクレレ奏者でもある。ウクレレは、コアロハ社製カスタムテナー6弦モデルD-VIを使用。近年Daniel Ho Creationsを立ち上げ、レコード・プロデューサーとしても活躍。すでに40枚以上のアルバムをリリースしている。

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Daniel Hoのウクレレソロを聴くには、Pineapple Mango(Daniel Ho Creations 2001年11月リリース)がおすすめ。

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他に、同じくDaniel Ho Creationsから昨年リリースされた、Step 2: ‘Ukuleles in Paradise, Vol. 2は、Jr. Herb OhtaとDaniel Hoのウクレレ・デュオアルバム。このアルバム、なかなか選曲がいい。スタンダード曲のSomewhere Over the RainbowやハワイのトラッドソングKaimana HilaやSanoeなども含まれている。デモは、 Danoel Hoのホームページで試聴可。

第66回 不滅のジャズ名曲-その66-スクラップル・フロム・ジ・アップル(Scrapple From The Apple)

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Damn!

スクラップル・フロム・ジ・アップル(Scrapple From The Apple)。チャーリー・パーカーの名曲。曲名を知らなくても、聴けば、ああこの曲かとすぐにわかるほど、みんなが知っている有名な曲。

Jimmy Smith(ジミー・スミス)が1995年に吹き込んだVerveへの復帰作、damn!というアルバムに、この曲が収録されている。メンバーが凄い。Roy Hargrove(tp)、Nicholas Payton(tp)、Ron Blake(ts)、Mark Turner(ts)、Mark Whitfield(g)、Christian McBride(b)、Arthur Taylor(ds)。Jimmy SmithとArthur Taylor以外は、全員1960年代後半から70年代に生まれた若い世代。ちなみにJimmy Smithは1928年でArthur Taylorは1929年生まれ。

このアルバムの興味深いところは、ビバップからハードバップ期にかけての往年の名曲を集めて、さながらモダンジャズ・ギャラリーといったジャムセッションが繰り広げられているところにある。しかも、若い世代のトップミュージシャンが勢揃いしており、ジャズギターファンならMark Whitfieldが参加していることに注目するだろうし、何よりRoy HargroveとNicholas Paytonという2人のトランペッターが共演していることが見逃せない。

曲目は、Dizzyの往年のビバップの名曲Woody ‘N’ Youや、Horace Silverのヒット曲Sister Sadie、それにHeabie HanockのWatermelon Manも入っている。

マーフィーのハワイな日記 -その5- JAWAIIAN

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HAPPY ISLAND with Aloha-Street

いま、ロコのあいだで注目されているサウンドがJAWAIIAN(ジャワイアン)。このJAWAIIANは、ハワイ音楽にレゲエのリズムをミックスした新しいアイランド・ミュージック。ここ数年の間にすっかり定着し、ドライブでラジオをかけるとよく流れてくる。

そのなかから、オアフで流行ったJAWAIIANを18曲収録したアルバムが、いよいよ日本にも上陸。6月20日Spice of Lifeよりリリースされる。1曲目の女性ヴォーカルKANI MAKOUが歌うI’m Waitingから、18曲目のJON YAMASATOが歌う、The Way It Should Beまで、みんなあの独特のロコの歌い方だ。このJAWAIIAN、リズムはレゲエなんだけど、どこか爽やかで、風が揺れている。ドライブに最適。

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マーフィーのハワイな日記 -その4- IZ

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Alone in Iz World

ウクレレの季節。ウクレレと言えば、ベテランではオータサン、若い世代ではジェイク・シマブクロが筆頭にあげられるが、今はなきIZの歌声も忘れ難い。

ウクレレ一本で歌うIZの歌声はいつ聴いてもさわやかだ。IZことIsrael Kamakawiwo’oleは1997年に亡くなったが、ハワイでは今でも誰も忘れていない。

IZのOver the Rainbowはいつ聴いても新鮮だ。これまで多くの人たちが歌ってきた曲だけど、IZのウクレレ伴奏のみで歌うこの曲は、シンプルで、そのサウンドはまさにハワイの風。オリジナルよりはるかにすばらしい。心に残る曲だ。

第65回 不滅のジャズ名曲-その65-パーカーズ・ムード(Parker’s Mood)

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Parker’s Mood : Roy Hargrove

チャーリー・パーカーの作曲した代表曲と言えば、Billie’s Bounce(1945)、Yardbird Suite(1946)、Now’s the Time(1945)などがあげられるが、それらとともに有名な曲が、Parker’s Mood(1948)だ。この、Parker’s Moodをタイトルにしたアルバムは、最近では矢野沙織などが2005年にリリースしている。今回採り上げるアルバムも、同じParker’s Moodというタイトルで、全12曲すべてパーカーにちなんだ曲目だ。

このアルバムは、Verveから1995年にリリースされたもので、パーソネルは、Roy Hargrove (trumpet, flugelhorn), Christian McBride (bass)、Stephen Scott (piano)という超強力メンバーである。ここでは、サックス奏者ではなく、トランペット奏者である点が大変興味深い。

さて、ロイ・ハーグローヴ(Roy Hargrove)であるが、1990年にウィントン・マルサリスに見出されデビュー。現在、若手ジャズ・トランペッターのトップランナーともいえる存在だ。そこに、今回のアルバムでは、ベースのクリスチャン・マクブライド(Christian McBride)、それにピアノのステファン・スコット(Stephen Scott)という若手強力メンバーが加わり、曲ごとに、トリオ、デュオ、ソロというように編成を変えて演奏している。例えば、Red Crossは、マクブライドのベースソロ、Chasin’ the Birdは、トランペットとベースのデュオ、Dewey Squareでは、トランペットソロ(これがすばらしい)、Lauraはトリオでのバラード演奏。いずれにしても、このアルバムは、どの曲もすばらしく、全曲文句なしに無条件で楽しめる。パーカー・ファンやビ・バップの好きな人たちだけでなく、若い世代の人たちにも広くおすすめしたいアルバムで、永久保存版ともいえる貴重なアルバムだ。(Django)

第64回 不滅のジャズ名曲-その64-夜も昼も(Night And Day)

Putte_wickmanコール・ポーター (Cole Porter)の名曲、夜も昼も(Night And Day)は、1932年に作曲された「陽気な離婚(The Gay Divorcée)」のミュージカルナンバー。フランク・シナトラの得意曲で、エラ・フィッツジェラルドやアニタ・オデイなど多くのジャズ歌手に歌われてきた。ベニー・グッドマンのヒット曲でもあり、特にクラリネットに合う曲だ。

モダンジャズ以降、サックス全盛時代になり、ニューオリンズ時代からスイング期にかけて活躍してきたクラリネットは、最近ではその出番がめっきり減ってしまったが、改めて今の時代にクラリネットを聴いてみると、サックスとは違ったそのぬくもりのある響きは、他に代え難い魅力を持っていることが再確認できる。

今改めてクラリネットを聴くなら、その響きの美しさを味わう上で、どうしても最新録音のなかから選びたくなる。実は、一般にはあまり知られていないが、北欧のスウェーデン・ジャズ界の巨匠として、長年クラリネットを演奏してきたプッテ・ウイックマン(Putte Wickman)が2006年の2月に惜しくも亡くなった。その追悼盤としてGazellレーベルから緊急限定発売されたアルバムが、アン・インティメイト・サリュート・トゥー・フランキー(An Intimate Salute to Frankie)というフランク・シナトラに捧げた作品。

このアルバムは、クラリネットとピアノのデュオで全曲演奏されており、クラリネットを味わう上では理想的な編成であり、彼のラスト・レコーディングとなった貴重な録音である。曲目は全15曲で、スタンダード名曲がズラリ並んでおり、ラストに夜も昼も(Night And Day)が収録されている。プッテ・ウイックマンは、1924年生まれで、スウェーデンの王立アカデミー会員であり、クラシックからモダン・ジャズまでこなし、名実共にスウェーデン音楽界の大御所として活躍してきた人である。

澄み切った透明感のある音色の美しさは、一聴してわかるほどの魅力を持っており、自然で温かみのある演奏は、まさに北欧ならではのものだ。彼の音楽をかけると、クラリネットのふくよかな響きが部屋を包み込み、何とも言えない落ちついた気分になる。(Django)