第67回 不滅のジャズ名曲-その67-ソリチュード(Solitude)

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デューク・エリントン・ソングブック

Django:「今年は、エラ・フィッツジェラルド生誕90周年ということで、6月にユニヴァーサルから一挙にエラのアルバムが11タイトル限定版でリリースされた。そのなかには、Verve時代の作曲家別のソングブックシリーズも含まれている。コール・ポーター、ガーシュイン、ロジャース&ハート、アーヴィング・バーリン、ハロルド・アーレン、ジェローム・カーン、それにエリントンなど、もうこれだけでほとんどのジャズの名曲が揃ってしまうほどの、20世紀のアメリカを代表するソング集だ。」

Murphy:「すべて、エラ・フィッツジェラルドが歌っているの?」

D:「そのとおり。これだけの珠玉の名曲を作曲家別にシリーズ化して、すべて歌える人は、おそらくエラ・フィッツジェラルドを除いて他にはいないだろうな。」

M:「エラ・フィッツジェラルドは以前にもDjangoくんに紹介してもらって、サッチモとのデュオアルバムや、1954年に吹き込んだエリス・ラーキンスのピアノ伴奏による「ソングス・イン・ア・メロウ・ムード」というアルバムを買ったんだけど、そのときの印象は、ボクのようなジャズヴォーカルの素人でも抵抗なく聴けて、けっこう好印象を持ったことを覚えている。他のアルバムでもそうなの?」

D:「エラは、おそらくどのアルバムを聴いても満足すると思うよ。Murphyくんのようなジャズ・ヴォーカルの入門者にこそ聴いてもらいたいアルバムだね。エラの魅力っていうのは、やはりグラミー賞13回受賞が物語るように、すばらしい歌唱力にあると思うね。自然で変なくせがなく、のびのびと歌っているし、声量は豊かだし、その余裕というのは、すごいものがある。抜群の安定感で突き進むグルーブ感、バラードにみられる抒情感、アップテンポの曲での、スピードに乗ったスイング感など、どれも最高だ。

今回は、ソングブック集のなかでも特に傑出したアルバムである、デューク・エリントン・ソングブックを紹介したい。6月6日にユニヴァーサルから再発売されたこのアルバムは3枚組で、チェルシー・ブリッジのリハーサルも入っている。エリントンの曲は、音程が正確でないと、原曲の持ち味を十分生かしきれないんだけど、エラは本当にエリントンナンバーを歌う最適なシンガーだ。

このアルバムのなかから、今回の不滅のジャズ名曲として一曲だけ選ぶのは、大変むずかしけど、しいてあげれば、ソリチュード(Solitide)かな。この曲は、1934年に発表されたスローバラードで、色彩感溢れる叙情詩は、聴けば聴くほど魅力が高まる曲だね。でも、エリントンの名曲は他にもそれこそ数多くの優れたものがあり、このアルバムに収録された全曲がまさに不滅のジャズ名曲だといえる。」