
Django:「コール・ポーターの名曲、イージー・トゥ・ラヴ(Easy To Love)は、古くはビリー・ホリデイ、最近ではロバータ・ガンバリーニなど、これまで多くのヴォーカリストに歌われてきた。また、器楽演奏では、パーカーがストリングスをバックにVerveに吹き込んだものや、チェット・ベイカーのトランペットなどがすぐに思い出されるが、ワンホーン・カルテットのなかで選ぶなら、ソニー・スティット(Sonny Stitt)が50年代半ばにVerveに吹き込んだパーソナル・アピアランス(Personal Appearance)というアルバムを是非採り上げてみたい。」
Murphy:「ソニー・スティットといえば、前回も出てきたけど、アルト奏者、それともテナー?」
D:「アルト、テナー、さらにはバリトンまでこなす、まさに”サックスの神様"と呼ばれる腕前の持ち主。もともとは、アルト奏者としてスタートしたが、40年代末から50年代前半までは、パーカーとの類似性を避けてテナーに持ちかえたといわれる。それほど彼の実力はパーカーに迫るものがあったということ。」
M:「Djangoくんは彼のアルバムのなかで、いつ頃のものをすすめる?」
D:「アルトでは、50年代後半の、ルーストやヴァーヴに吹き込んだアルバム。テナーでは、40年代末から50年代にかけてプレスティッジに吹き込んだものがいいね。例えば、バド・パウエルとの共演盤(Sonny Stitt/Bud Powell/J.J. Johnson)などは非常に有名。
今回採り上げたアルバムは、アルトで演奏しており、1957年にリリースされたもの。このVerve盤の収録曲は、Easy To Loveのほかにも、Easy Living、Autumn in New York、You’d Be So Nice to Come Home To、Avalonなどが含まれ、まさに名曲名演といえる充実した内容。先程も言ったように、いわゆるパーカー派と呼ばれる多くのホーン奏者のなかでも、最強の実力の持ち主であることがこのアルバムでも伺える。ビバップ・ファン必聴盤。」