第84回 不滅のジャズ名曲-その84-枯葉(Autumn Leaves)

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Hallmarks: The Best of Jim Hall

Django:「今回はスタンダードジャズの中でも、誰もが知っている曲、枯葉(Autumn Leaves)。ご存知のようにもともとJoseph Kosma作曲のシャンソンで、1947年に誕生。ジャズの世界では女性ヴォーカリストのジョー・スタッフォード(Jo Stafford)が最初にレコーディングしたといわれる。その後、1958年にBlue Noteレーベルより発売されたキャノンボール・アダレイ名義のSomethin’ Elseにマイルスが吹き込み大ヒットした。」

Murphy:「Somethin’ Elseはジャズの超入門アルバムだね。ところで今回はだれの演奏を選んだの? 枯葉は有名だからそれこそ無数にアルバムがあるからね。

D:「ジャケット写真でおわかりのように、今回はジム・ホール(Jim Hall)の演奏を選んだ。実は、このアルバムは、コンコード・レーベルから2006年10月に発売されたジムホールの2枚組ベスト盤で、アルバムタイトルは、Hallmarks: The Best of Jim Hallコンコードに吹き込んだものだから、1980年代以降の比較的新しい録音。ジム・ホールの演奏に、より豊かな独自の個性が輝きだした頃からのものだといえる。

これまでベスト盤はどちらかといえばあまり採り上げなかったのだけれど、このアルバムは例外で、コンピレーションの内容もよく、しかもジャケット写真が魅力で印象に残った。全20曲収録されており、ジム・ホールコンテンポラリーでクリエイティブな側面を知るには最適なアルバムだね。」
 

第83回 不滅のジャズ名曲-その83-いつか王子様が(Someday My Prince Will Come)

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Live at Maybeck Recital Hall, Vol. 3: Music of 1937

Django:「世の中にはいろんなジャズのアルバムがあるけど、今回紹介するのはそのなかでも大変ユニークなアルバム。同じ年に作曲された曲ばかり集めたアルバムで、全曲1937年に誕生した曲。Concord JazzレーベルのLive at Maybeck Recital Hallシリーズ Vol. 3タイトルは、Dick  Hyman/Music of 1937

Murphy:「1937年といえば、戦前だからスイング時代の曲だね。」

D:「全部で12曲収録されている。すべてピアノソロ。演奏者は、アメリカのディック・ハイマン(Dick  Hyman)という名ピアニスト。曲目は、マイルスのアルバムで有名な、いつか王子様が(Someday My Prince Will Come)をはじめ、My Funny Valentine、Caravan、Foggy Dayなど、ジャズスタンダードの代表曲が数多く収録されている。」

M:「知っている曲ばかりだね。1937年は名曲がいっぱい生まれた年なのかなあ。ところで、ディック・ハイマンという人は、ボクは全く知らないんだけど、どんな人?」

D:「ピアニスト、オルガニスト、アレンジャー、ディレクターで作曲家でもある。この人の演奏を聴けば、20世紀のジャズピアノの歴史がわかる。しかも、どれも現代の演奏として実に生き生きとしている。伝統的な奏法を研究し尽くしたディック・ハイマンの演奏は、ジャズの遺産として過去の奏法を継承しながら、今の時代のわれわれに実に新鮮に語りかけてくれる。これまで11枚のソロアルバムを録音しているが、どれもすばらしい。今回採り上げたアルバムはライブレコーディングだから一層彼の特質が表れており、5曲目に収録されている、Someday My Prince Will Comeなど、イントロから思わず惹き込まれる。ディック・ハイマンのピアノは、ジャズファンだけでなく、クラシックファンにも是非聴いていただきたい。」

第82回 不滅のジャズ名曲-その82-アイ・ウォント・トゥ・ビ・ハッピー(I Want To Be happy)

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ジ・インペッカブル・ミスターウィルソン

Django:「このシリーズも早いもので今回で82回目だけど、大事な人を忘れていた。スイング系のピアニストならこの人をまず筆頭にあげるべきだった。テディ・ウィルソン(Teddy Wilson)。クラシックなジャズ、オールド感覚溢れるジャズ、いつでも聴いて楽しいジャズ、歌ものスタンダード曲中心のジャズ、リラックスできるジャズ、優雅なジャズ、初めての人でもとっつきやすく、いつかどこかで聴いたような懐かしい香りのするジャズ、...。こういった要素をすべて持ち合わせているのがテディ・ウィルソンだ。」

Murphy:「テディ・ウィルソンといえば、確かベニー・グッドマンといっしょに演奏していた人だね。リーダー・アルバムは全く知らないんだけど、かなり古くから録音していたの?」

D:「30年代後半から吹き込まれたビリー・ホリディのアルバム(ブランズウィック・レーベル)で、テディのピアノを聴くことが出来る。40年代に入り、ジョン・ハモンドの紹介でベニー・グッドマンと共演し、彼のピアノは一世を風靡する。50年代に入り、ノーマン・グランツのプロデュースにより、本格的なレコーディング活動が始まり、リーダー作を発表する。ノーマン・グランツはテディを高く評価していたようだ。」

M:「ノーマン・グランツといえばVerveレーベルだね。Verveは今改めて思うけど、大変貴重なアルバムを数多く残してくれたんだ。」

D:「今回紹介する、ジ・インペッカブル・ミスターウィルソン(The Impeccable Mr.Wilson)は、Verve時代の1957年の録音。ピアノトリオで演奏され、彼のリーダー作としてスイングピアノの楽しさを満喫できる。全12曲で、1曲目は、Youmansが1924年に作曲した名曲、アイ・ウォント・トゥ・ビ・ハッピー(I Want To Be happy)。この曲は、1944年テディがエドモンド・ホールと共演した Edmond Hall/Teddy Wilsonでも演奏しており、アップテンポでスイングし、彼の十八番だね。この曲は、レスター・ヤングやオスカー・ピーターソンなどもよく演奏した。」

M:「テディ・ウィルソンとオスカー・ピーターソンとの違いは?」

D:「そうだね。どちらもよくスイングするけど、テディの方がより原曲の美しさを表現しているといえる。テディーは優雅、滋味といった形容がぴったり。気品というかより大人のジャズの香りがする。」

第81回 不滅のジャズ名曲-その81-リカード・ボサノバ(Recado Bossa Nova)

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Django:「リカード・ボサノバ(Recado Bossa Nova)といえば、バーニー・ケッセルがOn Fire(エメラルド盤)で録音した演奏が有名だけど、新人ギタリストの最新アルバムで久々にこの曲を聴いた。1975年NY生まれのギタリスト、アンディ・ブラウン(Andy Brown)のデビューアルバムで、タイトル名はTrio And Solo

アンディのギターは、バーニー・ケッセルに勝るとも劣らぬ抜群のスイング感で、最後まで一気に聴き通せるほどの魅力的な演奏だ。奇をてらわず、まさに正統派のジャズギター。歌心溢れ、スインギーで、心地よいジャズに浸ることが出来る。」

Murphy:「正当派ジャズ・ギターといえば、ジョー・パスなんかにも似ているの?」

D:「その通り。このアルバムは、15曲中8曲がトリオで7曲がソロ。特にソロはジョーパスの奏法を継承している。曲によってケニー・バレルのブルージーな演奏も彷彿させるし、ジャズギターの遺産をしっかり受け継いだギタリストだね。」

M:「現在はNYで活躍しているの?」

D:「2003年からシカゴに移住しているらしい。シカゴの地元で特に人気のあるギタリストのようで、いくつかのライブハウスで演奏活動を行っている。地元のジャズ誌Chicago Jazz Magazineも次のように絶賛している。

“Andy Brown is fast becoming one of Chicago’s hottest guitarists…his playing is intelligent, sensitive and thoughtful; wonderfully clean and uncluttered…he swings so hard and sweet!”

-Chicago Jazz Magazine

M:「このアルバムの発売元は?」

D:「String Damper Records(SDR2132)からリリースされており、現在のところ国内盤の発売は未定で輸入盤でしか入手できないようだ。このアルバム、トリオとソロの両方楽しめるところがいいし、ソロは秋の夜長にぴったり。ジャズ入門の方にも全く抵抗なく聴ける心地よい演奏だ。」

第80回 不滅のジャズ名曲-その80-ステラ・バイ・スターライト(Stella By Starlight)

Roundmidnight ラウンド・ミッドナイト(K2HD/紙ジャケット仕様)Django:「ヴィクター・ヤング(Victor Young)の作曲した、1944年のパラマウント映画Uninvitedの挿入曲である、ステラ・バイ・スターライト(Stella By Starlight)は、ジャズスタンダードのなかでも特に人気の高い曲。アルバムの一曲目がこの曲で始まるクロード・ウイリアムソン(Claude Williamson)ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)というタイトルのアルバムは、ピアノトリオアルバムのなかでも隠れた名品として、多くのファンに今でも親しまれている。前回同様、ベツレヘム・レーベルで、今月(10月)の24日に再発される。」

Murphy:「クロード・ウイリアムソンって聴いたことないけど、どんなタイプ?」

D:「バド・パウエル派の白人ピアニスト。このアルバムは1956年の録音で、ジャズスタンダードで固められている。ベツレヘム・レーベルを代表するアルバムで、派手さはないけど、何度も繰り返して聴きたくなる味のある演奏だ。アルバムジャケットのデザインが地味すぎて見逃しがちで、しかもこれまで再発されては廃盤を繰り返してきた。こういうアルバムを見逃さずに入手すれば、愛聴盤としていつでも楽しめるよ。推薦!」

第79回 不滅のジャズ名曲-その79-木の葉の子守歌(Lullaby Of The Leaves)

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ザ・リターン・オブ・ハワード・マギー(K2HD/紙ジャケット仕様)

Django:「ベツレヘム(Bethlehem)レーベルって知ってる?」

Murphy:「クリス・コナーのバードランドの子守唄は、確かベツレヘム・レーベルだったような気がするけど。」

D:「その通り。実は、このベツレヘム・レーベルの国内発売元が、ビクター・エンタテインメントに移籍して、今年の6月から発売を開始し、12月までに50タイトルが出揃うことになる。このレーベルはマイナーレーベルなんだけど、モダンジャズの絶頂期である50年代に録音されただけあって、今でも第一級の価値ある名盤揃いだ。この10月に発売される10タイトルのなかでは、ビバップ三大トランペット奏者の1人である、ハワード・マギー(Howard MacGhee)のアルバムは見逃せないね。アルバムタイトルは、ザ・リターン・オブ・ハワード・マギー(The Return of Howard MacGhee)で、1955年の録音。」

M:「ビバップ三大トランペッターって、他は誰?」

D:「ディジー・ガレスピーとファッツ・ナバロ。ハワード・マギーは、ディジーより1歳若い。」

M:「実は、最近特にビバップがいい!とつくづく思っていたんだ。」

D:「ハワード・マギーのアルバムは、再発されては廃盤になることが多く、一気に揃えることはむずかしいかも知れないけど、気長に待てばそのうちまた発売される。そのなかでも、今回のベツレヘム盤のザ・リターン・オブ・ハワード・マギーは特にお薦めだね。木の葉の子守歌(Lullaby Of The Leaves)四月の思い出(I’ll Remember April) などの有名曲が収録されているし、全作品に流れるビバップ・フレーズは、理屈抜きに楽しめるね。」