
Scott Hamilton is a good wind who is blowing us no ill
Murphy:「前回のスコット・ハミルトン、実にいいね。もっと他のアルバムを紹介してくれる?」
Django:「1970年代の終わり頃に、コンコードレーベルからデビューし、オールドスタイルのテナー奏者として注目された人で、その後、コンスタントにアルバムを録音し、今では相当な数になると思う。ボクは、ほぼリアルタイムに、彼のLPレコードを収集していったんだけど、当時としては最新録音でありながらこんなオールドスタイルのジャズLPなんて、実に貴重な存在だった。
今回は、彼のファーストアルバムを紹介しよう。大変長いタイトルのアルバム、Scott Hamilton is a good wind who is blowing us no ill。1977年にリリースされた。自分では、このアルバムはその後の1978年に出たScott Hamilton2と確か同時に買ったと思う。たまたま店頭に見つけたものだった。中身が全くわからず、あくまでカンを働かせて買ってみた。ジャケットデザインに惹かれたのと、コンコードという新しいレーベルが、何か新しい世界を切り開いてくれるではないかという期待があった。すぐに家に持ち帰り聴いてみた。アタリだった。
その新しさというのは、昔の古いジャズ、あるいはジャズが最もジャズらしかった頃にもう一度戻るということだった。実験的な試みの演奏にはもう飽きて、エレクトリック・サウンドより往年のアコースティックな生楽器の音でジャズを。フォービートのジャズ、普段着のジャズ、歌うジャズ、そして、何よりもスイングするジャズを。当時みんながそう思っていたのかも知れない。
このアルバムの2曲目に入っているインディアナ。英語のタイトルは、Back Home Again In Indiana、あるいは単にIndianaと呼ばれている。1917年の曲だから、相当古い。作曲者は、インディアナ出身の、ジェームズ・ハンリー(James Hanly)。スコット・ハミルトンはその後この曲を何回も録音している。彼の十八番だろう。チャーリー・パーカーは、この曲のコード進行を用いて、ドナリー(Donna Lee)を作った。有名な話だ。この曲は、古いだけにこれまで多くのプレーヤー達が演奏してきた。オリジナル・ディキシーランド・ジャズバンド(ODJB)のヒットから始まり、サッチモも採り上げた。名曲だね。」