第99回 不滅のジャズ名曲-その99-ゼア・ウィル・ネヴァー・ビ・アナザー・ユー(There Will Never Be Another You)

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  プレジデント・プレイズ・ウイズ・ジ・オスカー・ピーターソン

Django:「一度聴けばそのメロディーラインがいつまでも残り、思わず口ずさみたくなる曲、ゼア・ウィル・ネヴァー・ビ・アナザー・ユー(There Will Never Be Another You)。まさにジャズ・スタンダード。Harry Warrenにより1942年に作曲された。1942年に上演された映画Icelandの主題歌で、レスター・ヤング、スタン・ゲッツ、チェット・ベイカーを始めとし、これまで数々のジャズミュージシャンがこの曲を演奏してきた。」

Murphy:「ぼくも、この曲をウクレレでマスターしようと思い、随分練習した。」

D:「親しみやすくて、すぐに覚えられる曲だからね。今回は、数多いこの曲の演奏のなかで、とっておきのアルバムを紹介しよう。アルバムタイトルは、プレジデント・プレイズ・ウイズ・ジ・オスカー・ピーターソン(President Plays With The Oscar Peterson)。ノーマン・グランツのプロデュースによる1952年の録音。オスカー・ピーターソン・トリオ(オスカー・ピーターソン(p)、レイ・ブラウン(b)、 J.C. ハード(ds)) とギターのバーニー・ケッセルをバックに、テナーのレスター・ヤングが熱演する名盤。ノーマン・グランツ企画のこういったアルバムは、いつでもどこでも楽しめる親しみやすいアルバムだから、ジャズ初心者にもOKだね。」

M:「オスカー・ピーターソンといえば、先日(12/23)惜しくも亡くなった(82歳)。オスカー・ピーターソンを聴いてジャズを好きになった人は本当に多いね。来日回数は20回を超えていた。スインギーで華麗なピアノは、本当のジャズの楽しさを教えてくれたし、スイングすることの素晴らしさは、どのアルバムでも実感できた。録音枚数も数百枚以上といわれる。まさにジャズピアノ界の巨人だった。」

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D:「オスカー・ピーターソンを聴くなら、今回のアルバムより、ピアノトリオかソロアルバムの方がいいかもしれない。
とにかく録音枚数が多いから、選びきれないけど、ベースのレイ・ブラウン(Ray Brown)、ドラムスのエド・シグペン(Ed Thigpen)のトリオ時代のものならVerveレーベルに多くのアルバムが残されている。1964年録音のスタジオセッション、We Get Requestsは名録音ということもありベストセラーアルバムの一つ。」

31quweqzl_aa115_M:「ソングブックシリーズもいいね。例えば、Oscar Peterson Plays the Harold Arlen SongbookIt’s Only a Paper MoonやCome Rain or Come Shine、Over the Rainbowなどハロルドアーレンの名作がズラリ

D:「他に、コール・ポーターガーシュインデューク・エリントンカウント・ベイシーなど多くのソングブックシリーズを残している。このあたりを聴けば、自然にジャズ・スタンダード曲が覚えられるね。

ところで、今回のアルバムは、バーニー・ケッセルが参加しているけど、Murphyくんはこのギタリストを知っている?」

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M:「もちろん。チャーリー・クリスチャンに憧れてプロになった人だけに、実によくスイングするギターだね。」

D:「その通り。ジャズギターの系譜は、チャーリー・クリスチャンに始まり、戦後バーニーケッセルがクリスチャンの演奏を継承した。50年代には、ジム・ホールもパシフィックレーベルに吹き込んだし、みんなクリスチャンに憧れた。他にノーマン・グランツのヴァーヴ・レーベルには、タル・ファローが凄31jdubucttl_aa115_
いテクニックで吹き込んでいる。チャーリー・クリスチャン以降、それまでリズム楽器としての役割しか与えられなかったギターを、一躍ホーン楽器なみの地位に浮上させたわけだ。ホーンライクなビバップ・フレーズを奏でることにより、ギターは一躍ジャズのリード楽器としての市民権を得た。

チャーリー・クリスチャンは今聴いても、実にカッコいいフレーズをつぎつぎと奏でている。ビバップの誕生と深く関わった彼の才能は、時代が過ぎても色214mc9dx79l_aa115_
あせない。また、ジャズのもつスイングすることの楽しさも待ち合わせている。

ブルースフィーリング、スイングする楽しさ、ジャムセッションにおけるプレーヤー同士の対話、もちろん、ジャズはアドリブが命。インスピレーションを最も大切にする音楽だ。だからこそ、一回限りのライブの魅力がジャズのすべてを物語る。ジャズは言語だ。だから、プレーヤー同士、聴衆とのコミュニケーションなど、お互いが触発されて新たなアドリブが生まれる。

ジャズを聴くのはライブが一番いい。素晴らしいライブに出会った時はおそらく一生忘れないだろう。固苦しい形式をすてて、ジャズという言葉で自然に会話する姿を見ると、誰でもジャズの素晴らしさがわかるはずだ。

お互いがジャズを演奏するのにルールが必要だ。キー、コード進行、リズム、テンポなど。だから初めてのセッションではよくシンプルな12小節のブルースが演奏される。ブルースといえば誰でもすぐに仲間に入り演奏できる。そのブルース以外にもミュージシャン同士がすぐに演奏できる曲、それがジャズ・スタンダードだ。1000曲以上のレパートリーを持っている人も少なくない。それらはオリジナル曲もあるけど大半がスタンダード曲だ。そういった意味で、ジャズスタンダード曲は、人類の宝だ。

ジャズ・コンサートを主宰してきたノーマン・グランツはそういった、ミュージシャン同士の自然なジャム・セッションを重視してレコーディングしようとした。またコンサート形式も導入した。その遺産は、Verveレーベルに残された。

いくらジャズはライブがいいといっても、昔の演奏を二度と聴くことは出来ない。録音されていない限り。ジャズが記録されたことが、その後のジャズを発展させた。いま私たちは、古い演奏をCDで聴くことができる。ジャズの遺産は、メディアに録音されたからこそ、生き残ったわけだ。でも、当時録音を手がけた人は、企業ではなく、個人ベースで細々と録音を続けてきた人が多かった。1939年にアルフレッド・ライオンが設立したブルーノート(Blue Note)、NYのジャズ専門レコード店の店主ミルト・ゲブラーが、1938年に発足させたコモドールレコード(Commodore Records)、そして元レコードコレクターでNYにJazz Record Comerというレコード店を開いたボブ・ワインストックが1948年に創設したプレスティッジ(Prestige)、1952年には、コロンビア大学出身の二人の熱烈なジャズファンである、ビル・グラウアーとオリン・キープニュースによって創設されたリバーサード(Riverside)、西海岸では1951年にレスター・ケーニッヒによってLAに設立されたコンテンポラリー(Contemporary)同じくLAで1952年にリチャード・ボックが設立したパシフィック(Pacific)など、そのいずれもが本当にマイナーなレーベルだった。そして、ヴァーヴ(Verve)のノーマン・グランツ。ジャズへのひたむきな情熱がこれらの素晴らしいアルバムを生んだ。

それと、あと、ジャズの発展に寄与したのは、ライブハウスだ。ミントンズハウス(Minton’s House)ファイブスポット・カフェ(Five Spot Coffee)、1935年から今も続く名門ヴィレッジ・ヴァンガード(The Village Vanguard)、NYミッドタウンのバードランド(Birdland)、ハーレムの老舗レノックス・ラウンジ(Lenox Lounge)など。現在のNYジャズシーンでは、他にアップタウンのスモーク(Smoke)、ダウンタウンのスモールズ(Smalls)などをはじめ多くのジャズクラブで毎日何かが起きている。そして、ジャズの遺産を継承し、伝承していくことの重要性を認識し、文字通りジャズの殿堂として、2004年秋にオープンしたのが、タイム・ワーナー・センター内にあるジャズ・アット・リンカーン・センター(Jazz At Lincorn Center)の専用ホール群。NYのジャズ・コミュニティの懐はますます深まるばかりだ。」

第98回 不滅のジャズ名曲-その98-ストレート・ノー・チェイサー(Straight No Chaser)

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Live at the 1964 Monterey Jazz Festival

Django:「ストレート・ノー・チェイサー(Straight No Chaser)セロニアス・モンクが1951年に作曲した、Eb majorのシンプルな12小節ブルース。1958年にマイルスが、CBSレーベルからリリースされたMilestonesにこの曲を録音。以降、多くのミュージシャンが同曲を演奏している。」

Murphy:「モンクの作品のなかでも特に有名な曲だね。」

D:「今回紹介するアルバムは、2007年の夏に初めて世に出た文字通り新譜で、タイトルはLive at the 1964 Monterey Jazz Festival。このアルバムは、西海岸の有名なジャズ・フェスティバル、Monterey Jazz Festivalにセロニアス・モンクが1964年に出演したライブをCD化したもの。

実は、Monterey Jazz Festivalが今年で50周年を迎えたことを記念して、同フェスティバルとコンコード社の提携により、新レーベル"Monterey Jazz Festival Records"が発足した。貴重な未発表ライブ音源が続々とCD化され始め、その内の1枚がこのアルバム。

今回のライブでのパーソネルは、Thelonious Monk(p), Charlie Rouse(ts), Steve Sawllow(b), Ben Liley(ds)のカルテットが主体で、Think Of OneStraight No Chaserの2曲は、他に4名が加わりビッグバンド編成になっている。演奏内容は、カリフォルニアでのフェスティバルだけあって、1曲目のBlue Monkの冒頭から、終止一貫してリラックスしたムードのなかで展開されており、非常に聴きやすく親しみやすいものになっている。」

第97回 不滅のジャズ名曲-その97-ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)

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ミステリオーソ+2

Django:「当初の予定通り、このシリーズは100回で一応終わり!」

Murphy:「今回で97回目か。100回で終わるとなると、今回を含めてあと4回だね。」

D:「100回ぐらいでは、まだまだ少ないけど、一つの区切りにしよう。採り上げていない曲はたくさんある。今回は、ジャズ史上まさに不滅の名曲、ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)セロニアス・モンク(Thelonious Monk)が作曲したもののなかで、最も有名な曲。1944年作。モンク自身のこの曲の初レコーディングは、1947年でブルーノート・レーベルに残した。」

M:「そういえば、80年代の半ばに同名の映画が作られたね。」

D:「そう。テナーのデクスター・ゴードンが主演だった。ところで今回紹介するアルバムは、NYの有名なファイブ・スポット・カフェでの1958年のライブレコーディング。アルバムタイトルは、ミステリオーソ(Misterioso)。テナーのジョニー・グリフィン(Johnny Griffin)が参加している。もちろん、ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)も含まれている。

モンクは、他とは異なる独自の和音とリズムで、孤高のピアニストと言われたけど、その音楽性の高さは、没後ますます評価されている。また、数々のユニークな名作を生み出し、作曲家としての名声も高まるばかりだ。現在NYのジャズシーンでは、必ずと言っていいほど、セッションのなかでモンクの曲をとりあげるミュージシャンが多い。残念ながら、モンクの評価は、日本より欧米の方が高いようだ。今年はモンクの生誕90周年にあたる。

初めて聴けば無骨なピアノに思えるモンクの不思議な魅力、聴いていて飽きない深みのある響き。巧みな空間表現とでもいうべきか、間が生きている。このアルバムは、初めてジャズを聴く人には少しむずかしいかもしれないが、ジャズに少し親しんだ人なら是非!」

第96回 不滅のジャズ名曲-その96-ホワッツ・ニュー(What’s New?)

51frjwyzyol_aa240_コンプリート・ジーニアス・オブ・モダン・ミュージック Vol.3&ミルト・ジャクソン

Murphy:「ジャズを初めて聴く人、モダンジャズの入門として、たった一枚のアルバムを選ぶなら、Djangoくんはどれを選ぶ?」

Django:「入門編だからといって、中途半端なものは選びたくないね。入門だからこそ、これぞモダンジャズの決定版!というものを選ばないと。でないと、次から聴かなくなるからね。でも、いつでも店頭にならんでいる超名盤と称されるものは敢えてさけたい。

そこで、ヴィンテージ盤というか、いつまでも色あせない、これぞモダンジャズの原点として、とっておきのアルバムを紹介しよう。

ブルーノートレーベルの5011番。アルバムタイトルは、"コンプリート・ジーニアス・オブ・モダン・ミュージック Vol.3&ミルト・ジャクソン / WIZARD OF VIBES"。実はこのアルバム、2つのセッションをカップリングしたもの。1つは、モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)の母体ともなった1952年のセッション。メンバーを紹介すると、ミルト・ジャクソン(vib)、ルー・ドナルドソン(as)、ジョン・ルイス(p)、パーシー・ヒース(b)、ケニー・クラーク(dms)。このメンバーを見てわかるように、後のMJQレジュラーメンバーにルー・ドナルドソンが加わっている。ここがポイント。

2つ目は、1948年のセロニアス・モンクとの歴史的な共演。メンバーは、ミルト・ジャクソン(vib)、セロニアス・モンク(p)、ジョン・シモンズ(b)、シャドウ・ウィルソ(dms)。」

M:「アルバムジャケットもいいね。」

D:「特にブルーノート5000番台のジャケットデザインは実にいい味が出ている。ところで、このアルバムは、2つのセッションを通していずれの演奏も素晴らしく、すべてが決定的名演だと思うが、あえて1曲選ぼう。その曲は、ジャズ・スタンダード屈指の名曲として、多くのミュージシャンに愛されている曲。ホワッツ・ニュー(What’s New?)Bob Haggartによる1939年の作曲。

へレン・メリルがクリフォード・ブラウンをバックにこの曲を吹き込んだアルバムは有名。他にパーカー、ファッツ・ナバロ、ビル・エバンスなどがこの曲の名演を残している。ミルト・ジャクソンのこのアルバムでの演奏も、実に味わい深い演奏だ。誰が聴いても、冒頭からのあの何とも言えない独特の香りに酔いしれることまちがいなし。」

M:「ミルト・ジャクソンといえば、バグス・グルーブが有名だけど、ここでの演奏はどう?」

D:「MJQの多くのアルバムにこの曲を吹き込んでいるけど、ここでは、アルトサックスのルー・ドナルドソンが加わっているから、実に新鮮。一段と充実している。

それにしても、ブルーノートRVGセレクション、リマスター技術により随分音がよくなったものだ。録音年月日が古いからといって敬遠する人がいれば、是非一度聴いてもらいたいね。先入観が変わるよ。ブルーノートは5000番台がいい! 

初めてジャズに接する人、クラシック好きの人、ジャズを少しでも聴いてみたいと思ったことのある人、ヴィンテージ風の味わいを求めている人、全17曲モダンジャズの醍醐味がぎっしり詰まった、このアルバムからスタートです。」

第95回 不滅のジャズ名曲-その95-ポルカ・ドッツ・アンド・ムーンビームス(Polka Dots And Moonbeams)

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ニューヨーク・ララバイ

Django:「第91回で採り上げた、フランチェスコ・カフィーソ(Francesco Cafiso)のファーストアルバム。2005年NYで録音。当時弱冠16歳。アルバム名は、ニューヨーク・ララバイ/フランチェスコ・カフィーソ・ニューヨーク・カルテット。パーカー直系のスタイルを完全に自分のものとし、実に表情豊かに歌っている。」

Murphy:「これもヴィーナス・レコードからリリースされたの?」

D:「そう。1曲目のバードランドの子守歌を聴いたとたん、とても16歳の少年とは思えなかった。表現の幅の広さ、堂々としたプレイに驚かされてしまう。力もあり、しかも歌うような演奏。リズム感が抜群だ。

ところで、Jimmy Van Heusen作曲のポルカ・ドッツ・アンド・ムーンビームス(Polka Dots And Moonbeams)が3曲目に入っている。この曲は、1940年に作られ、フランク・シナトラが歌い大ヒットした。ウエス・モンゴメリーやビル・エバンスをはじめ多くのプレーヤーがこの曲を吹き込んでいる。名曲だ。そして名演奏だ。」

第94回 不滅のジャズ名曲-その94-チェルシー・ブリッジ(Chelsea Bridge)

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ザ・コンプリート・オーバーシーズ+3 ~50th・アニバーサリー・エディション~

Django:「デューク・エリントンの片腕として活躍したビリー・ストレイホーン(Billy Strayhorn)が作曲した名曲、チェルシー・ブリッジ(Chelsea Bridge)。1941年の作。そのチェルシー・ブリッジを、名ピアニスト、トミー・フラナガン(Tommy Flanagan)は1957年に録音している。

そのアルバム(オーバーシーズ)は、ピアノトリオの屈指の名盤と言われた。スイングジャーナルの第1回ゴールドディスクにも輝いた。ベテランのジャズ・ファンならみんな知っているアルバム。」

Murphy:「1957年というと、ちょうど50年前になるね。」

D:「そう。50年が経過し、この12月にコンプリート・ヴァージョンが再発された。そして今回は、チェルシー・ブリッジの別テイクが2曲初収録されている。」

M:「チェルシー・ブリッジは、特にエリントン、ビリー・ストレイホーンが好きなDjangoくんに薦められて、ぼくも知っている曲だね。」

D:「このアルバムは、スウェーデンのストックホルムで録音された。ドラムスは、エルビン・ジョーンズ、ベースはウイルバー・リトル。80年代半ばまで一時入手困難な時期もあったこの名盤を、誕生50周年に再発企画したDIWの功績は大きい。」

第93回 不滅のジャズ名曲-その93-オール・ブルース(All Blues)

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July 5th~Live at BIRDLAND New York~(紙ジャケット仕様)

Django:「ハンク・ジョーンズ(Hank Jones)の最新アルバム聴いた?」

Murphy:「いやまだ。NYのバードランドでのライブ・レコーディングだね。11月21日に2枚同時発売され、気になっていた。」

D:「現役最長老といってもいい、89歳になるハンク・ジョーンズのピアノトリオアルバムで、2007年7月5日のライブがJuly 5th  Live at BIRDLAND New York、翌日の6日の方が、July 6th Live at BIRDLAND New York。曲目も大変興味深いね。2枚とも最新録音だけ合って、当日にライブの熱気が実にリアルに収録されている。5日の方はスタンダード曲が中心。選曲がいいね。7曲目に、マイルスの作曲したオール・ブルース(All Blues)が、そして8曲名には、ソニー・ロリンズのセント・トーマス(St. Thomas)、ラストが同じくロリンズのオレオ(Oleo)。こういうアルバムが発売されることは、実にうれしいね。2枚とも永久保存盤!」

第92回 不滅のジャズ名曲-その92-ノー・プロブレム(No Problem)

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ティー・フォー・トゥー

Django:「ウイントン・マルサリス率いるリンカーン・センター・ジャズ・オーケストラのピアノ奏者といえば、相当な実力の持ち主だということを、すぐにイメージするが、実は、そのピアニストが、ダン・ニマー(Dan Nimmer)。年齢は、20代前半。その彼のデビューアルバムがこれ。 ティー・フォー・トゥ(Tea For Two)というタイトルで、ヴィーナスレコードに2005年の夏、録音された。」

Murphy:「ウィントン・ケリーに傾倒しているらしいね。」

D:「そう。ケリーやガーランドを思い出させるブルース・フィーリング豊かなピアニストだね。このアルバムの7曲目に出てくる、ノー・プロブレム(No Problem)という曲は、曲名自体は知らなくても、誰もが耳にしたことのある有名曲。デューク・ジョーダンの作曲で、映画「危険な関係」の主題曲。要注目のピアニスト。」

第91回 不滅のジャズ名曲-その91-マイルストーンズ(Milestones)

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天国への七つの階段

Django:「 イタリアの10代の若手アルト・サックス奏者、フランチェスコ・カフィーソ(Francesco Cafiso)のセカンドアルバム。アルバム・タイトルは、天国への七つの階段(Seven Steps To Heaven)。2006年1月録音。1989年生まれだから当時17歳。パーカー直系のスタイルをわがものにして、現在急成長中。」

Murphy:「確かデビューアルバムは、ニューヨーク・ララバイで16歳のときだったね。」

D:「今回のセカンドアルバムは、全編バラードの一作目とは打って変わって、アップテンポの曲を収録しパワフルだ。アルバムの6曲目には、マイルスの名曲、マイルストーンズ(Milestones)を吹き込んでいる。これがまた素晴らしい。」

第90回 不滅のジャズ名曲-その90-Cジャム・ブルース(C Jam Blues)

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ラブ・ユー・マッドリィ

Django:「キーがCメジャーのシンプルなブルース・リフ、Cジャム・ブルース(C Jam Blues)は、デューク・エリントンの有名なナンバー。この曲は、もともとエリントン楽団のメンバーで、ニューオリンズ生まれのクラリネット奏者、バーニー・ビガード(Barney Bigard)がよく吹いていたそうだ。そのリフを1942年にデュークがアレンジしたらしい。この曲のノリの良さ、12小節のシンプルなブルースは、その後多くのピアニストに愛された。」

Murphy:「Cジャム・ブルースといえば、レッド・ガーランドの有名なGroovyというアルバムを思い出すね。確か1曲目に入っていた。」

D:「そのとおり。Prestigeレーベルに1957年に録音された、超有名なアルバム。」

M:「みんな知ってるアルバムだね。ところで、今回は誰の演奏?」

D:「今回も、新しい録音のなかから選んでみた。やはり、ビル・チャーラップ(Bill Charlap)がいいね。エリントン・ナンバーばかりを集めた、ラブ・ユー・マッドリィ (Love You Madly)というアルバム。2003年にN.Y.で録音され、ヴィーナス・レコードより発売された。その中の9曲目にこの曲が収録されている。レッド・ガーランドよりもスローなテンポで演奏している。このアルバム、これまでのエリントン曲集とは違い、アプローチが個性的で新鮮だ。耳を澄ましてじっくり聴ける。何回聴いても飽きない。アルバムに収録された11曲、すべて素晴らしい。永久保存盤!

このアルバムは、Swing Journal選定ゴールドディスクに選ばれた。名盤だと思う。」