
Murphy:「もう秋だね。朝晩涼しくなってきた。日が暮れるのも早くなったな。秋の夜長にジャズ! 何かいいアルバムない?」
Django:「秋の夜長にリラックスした雰囲気で楽しめるアルバムだろ? アルトよりテナーサックスがいいね。編成はピアノレス。ギターとオルガンなんかが入っているといい雰囲気になる。」
M:「テナーサックスに、ギター、オルガン、ドラムか。よさそうだな。でもピアノレスのアルバムって案外少ないね。新譜で何かある?」
D:「実は、以前にも紹介したけど、テナーサックスの名手、スコット・ハミルトンのアクロス・ザ・トラックスという最新アルバム(2008/5/14発売)が、ピアノレスの編成なんだ。リーダーがスコット・ハミルトンだから聴きやすいし、初めてジャズを聴く人にもおすすめのアルバム。スコットは、どちらかといえば昔の古いスタイルのテナーだから、スインギーでよく歌うし、とてもスムーズなジャズなんだ。しかも、コンコードレーベルの創始者、カール・E・ジェファーソンに70年代の後半に見いだされたプレイヤーだけあって、とてもセンスがいい。フュージョン全盛だった当時に、オールドファッションに身を固めたレトロなジャズの魅力を再び世に知らしめた功績は大変なもの。彼の演奏は、スイングジャズからモダンジャズへと移行する過渡期の、中間派と呼ばれる演奏スタイルで、一度聴くと、”ああ、こんなスタイルのジャズが聴きたかったんだ!”と思わず手を叩きたくなるようなプレイを繰り広げる。
今回のアルバムは、2年ぶり。選曲が実に渋い。かつてのサックスプレーヤーたちの愛奏した、隠れた名曲がズラリ並べている。これだけで価値あり!。それと、ピアノレスでギター、オルガンとともにバリトンサックスを加えたユニークな編成が実に素敵だね。おかげで秋の夜長に最適な、落ち着いたなかなか渋いサウンドに仕上がっている。録音は、あのルディー・バン・ゲルダーが担当しただけあって優秀。スムースなジャズ、少しばかりオールドファッションなジャズ、メロディックでよく歌うジャズ、大人のジャズをお探しの人に最適です。」