第78回 不滅のジャズ名曲-その78-アイム・オールド・ファッションド(I’m Old Fashoned)

Basies_at_night2

ベイシーズ・アット・ナイト

Murphy:「さっそく、前回紹介してくれた渡辺貞夫のBasie’s At Nightを聴いてみた。素晴らしいね。こんなライブに一度でいいから行ってみたいと思った。3曲目のアイム・オールド・ファッションド(I’m Old Fashoned)が特に気に入った。ところで、ボクは渡辺貞夫のアルバムを聴いたのは、正直言ってこれが初めて。」

Django:「I’m Old Fashonedジュローム・カーンの作曲(1942)で、ナベサダと親交の深いチャーリー・マリアーノ(Charlie Mariano)が、1954年にBoston All Starsというグループで録音している。この曲は一般的にはバラードで演奏されることが多いけど、そのアルバムではミディアム・アップテンポで吹いている。今回のナベサダのアルバムも、この曲をかなりのアップテンポで演奏し、これが実に効果的で、最後まで一気に惹き込まれる。

ところで、今夜は、大阪ブルーノートの最後のライブが行われる。今日限りで閉店。ラストを飾る演奏は、渡辺貞夫グループ。」

第77回 不滅のジャズ名曲-その77-ディープ・イン・ア・ドリーム(Deep In A Dream)

Basies_at_night

ベイシーズ・アット・ナイト

岩手県一関市にあるジャズ喫茶「ベイシー」での、感動のライブドキュメント、ベイシーズ・アット・ナイト(Basie’s At Night)が8/1に発売された。演奏は、渡辺貞夫レギュラー・クインテット菅原正二のベイシーは、音の良さで定評があるが、今回のアルバムは、2007年4月14日のライブ・レコーディングで2枚組に収録された。

ジャズのライブ演奏は、一発勝負。主催者と演奏者との関係がきわめて大切であり、会場の大きさや音響条件、観客のノリなどに、演奏内容は大きく左右される。そういった意味では、当夜の演奏は、まさに理想のライブである。菅原正二という音の探究心に燃えた熱烈なジャズ愛好家の運営する小さなライブハウスで、きわめて至近距離から客席と一体となって、演奏が繰り広げられた。しかも聴衆は、全国からファンが集まった。

演奏メンバーは、渡辺貞夫のレギュラー・カルテットである、小野塚晃(p)、納浩一(b)、石川雅春(ds)に、セネガル出身日本在住のパーカッション奏者ンジャセ・ニャンが加わったクインテット編成。1933年生まれの渡辺貞夫が渾身のアルトサックスを奏でる。納浩一のベースが見事なビートを刻む。小野塚晃のピアノ、石川雅春のドラムスが一体となり完全燃焼し、そこにンジャセ・ニャンの歌と演奏が彩りを加える。

1曲目のOne For Youからパワー全開。全17曲は、一気に突き進む。スタジオ録音では決して得られない気迫が全曲を覆う。6曲目のJimmy Van Heusen作曲のDeep In A Dreamを聴けば、渡辺貞夫のアルトが、いかに心にしみ入るスローバラードを奏でるかがわかる。数十年吹き続けた人でないと決して表現できないシンプルさと澄み切った音の純度がここにある。アルトサックスの音色がダイレクトに心に訴える。15曲目のKaribuでは底抜けに明るい楽しさが会場を包み込む。それにしても素晴らしいアルバムだ。全曲名演。ジャズの楽しさ満載。ジャケットの写真も秀逸。(Django)