第66回 不滅のジャズ名曲-その66-スクラップル・フロム・ジ・アップル(Scrapple From The Apple)

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Damn!

スクラップル・フロム・ジ・アップル(Scrapple From The Apple)。チャーリー・パーカーの名曲。曲名を知らなくても、聴けば、ああこの曲かとすぐにわかるほど、みんなが知っている有名な曲。

Jimmy Smith(ジミー・スミス)が1995年に吹き込んだVerveへの復帰作、damn!というアルバムに、この曲が収録されている。メンバーが凄い。Roy Hargrove(tp)、Nicholas Payton(tp)、Ron Blake(ts)、Mark Turner(ts)、Mark Whitfield(g)、Christian McBride(b)、Arthur Taylor(ds)。Jimmy SmithとArthur Taylor以外は、全員1960年代後半から70年代に生まれた若い世代。ちなみにJimmy Smithは1928年でArthur Taylorは1929年生まれ。

このアルバムの興味深いところは、ビバップからハードバップ期にかけての往年の名曲を集めて、さながらモダンジャズ・ギャラリーといったジャムセッションが繰り広げられているところにある。しかも、若い世代のトップミュージシャンが勢揃いしており、ジャズギターファンならMark Whitfieldが参加していることに注目するだろうし、何よりRoy HargroveとNicholas Paytonという2人のトランペッターが共演していることが見逃せない。

曲目は、Dizzyの往年のビバップの名曲Woody ‘N’ Youや、Horace Silverのヒット曲Sister Sadie、それにHeabie HanockのWatermelon Manも入っている。

第65回 不滅のジャズ名曲-その65-パーカーズ・ムード(Parker’s Mood)

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Parker’s Mood : Roy Hargrove

チャーリー・パーカーの作曲した代表曲と言えば、Billie’s Bounce(1945)、Yardbird Suite(1946)、Now’s the Time(1945)などがあげられるが、それらとともに有名な曲が、Parker’s Mood(1948)だ。この、Parker’s Moodをタイトルにしたアルバムは、最近では矢野沙織などが2005年にリリースしている。今回採り上げるアルバムも、同じParker’s Moodというタイトルで、全12曲すべてパーカーにちなんだ曲目だ。

このアルバムは、Verveから1995年にリリースされたもので、パーソネルは、Roy Hargrove (trumpet, flugelhorn), Christian McBride (bass)、Stephen Scott (piano)という超強力メンバーである。ここでは、サックス奏者ではなく、トランペット奏者である点が大変興味深い。

さて、ロイ・ハーグローヴ(Roy Hargrove)であるが、1990年にウィントン・マルサリスに見出されデビュー。現在、若手ジャズ・トランペッターのトップランナーともいえる存在だ。そこに、今回のアルバムでは、ベースのクリスチャン・マクブライド(Christian McBride)、それにピアノのステファン・スコット(Stephen Scott)という若手強力メンバーが加わり、曲ごとに、トリオ、デュオ、ソロというように編成を変えて演奏している。例えば、Red Crossは、マクブライドのベースソロ、Chasin’ the Birdは、トランペットとベースのデュオ、Dewey Squareでは、トランペットソロ(これがすばらしい)、Lauraはトリオでのバラード演奏。いずれにしても、このアルバムは、どの曲もすばらしく、全曲文句なしに無条件で楽しめる。パーカー・ファンやビ・バップの好きな人たちだけでなく、若い世代の人たちにも広くおすすめしたいアルバムで、永久保存版ともいえる貴重なアルバムだ。(Django)

第30回 不滅のジャズ名曲-その30-ビリーズ・バウンス(Billie’s Bounce)

Murphy:『Djangoくん、ギターのことで聞きたいんだけど。ジャズ・ギターってどうしたら弾けるようになるの?」
Django:「練習を積むことだね。」
M:「それは、わかっているんだけど。ギターに限らずジャズの人って、アドリブが自在にできるよね。どうしたらできるのか不思議なんだ。」
D:「Murphyくんもジャズをやりたいの?」
M:「いや、そういうわけではないんだけど。いつもアコースティック・ギターを弾いていて、ほとんど譜面どおりなんだ。たまに、アドリブらしきものをやっても、ペンタトニックやダイアトニック・スケールで作るフレージングは、何とか出来るんだけど、ジャズにはならないし、やっぱりどう考えても不思議なんだ。ジャズが弾けるということが。それに、ジャズっていろんなスタイルがあるだろう。スイング・ビバップ・ハードバップ・クール・ファンキー・モードとか、いっぱいあるから、ますますわからなくなってくるんだ。」
D:「Murphyくん、一応ジャズの歴史、知っているんだね。いつのまに、勉強したの?」
M:「いや、ちょっと本を読んだだけなんだ。そしたら、1910〜20年代までは、ニューオリンズ・ジャズが全盛で、30年代にはビッグバンド中心のスイング時代に入った。その後、40年代からビバップ・ムーブメントが起こり、いわゆるモダン・ジャズになった。50年代半ばからハードバップ、そしてファンキーへと続く…、確かそういうストーリーだったような気がするけど。」
D:「確かにそのとおりだけど。」
M:「それで、Djangoくんに聞きたくなったんだ。そういうスイングとかビバップとかハードバップっていうのは、全然違うの? Djangoくんは、どのあたりのスタイルが得意なの?」
D:「それほど明確には区別してないけど。基本はそんなに変わらないし…」
M:「それ、どういうこと?」
D:「確かにスイングからビバップへは、大きく表現が変わったけどね。その後の、ハードバップ以降っていうのは、基本的にはビバップのフレーズの派生型だね。」
M:「その程度なの?」
D:「確かにジャズ史的にみれば、そのようにムーブメントが発展していくのかもしれないけど。前の時代の音楽と次の時代の音楽が、それほど一気に明確に変化しているとは思わないなあ。それと、どちらかと言えば、「発展」とは言いたくないね。前の時代でもいいものがたくさんあるし。新しいスタイルが出てきて古いスタイルがなくなるわけではない。次の新しい時代だといわれても、依然として前の時代のスタイルも脈々と根付いていたと思うね。新しいっていっても、ちょっとスタイルが変わる程度かな。」
M:「なるほどね。確かにビバップとハードバップの違いって、はっきり区別できないよね。」
D:「そのとおり。基本的には、今の時代の演奏もやっぱりビバップ・フレーズが基本だしね。ソニー・ロリンズもクリフォード・ブラウンも、パーカーやガレスピーなどと、フレーズをつくっていく理屈やハーモニーに関しては、そんなに違いはない。その人の個性の方が大きいよ。だた、ひとつ言えることは、40年代に、チャーリー・パーカーを中心に、Cpark_aガレスピーなどのグループが、飛躍的にアドリブの可能性を広げたということ。ジャズのアドリブは、ハーモニーを基本に展開しているんだけど、特にパーカーのフレージングが画期的だったということだね。パーカー以降は、様々なアーティストが登場するが、表現手法は異なっても、基本はみんなビバップ的な発想でアドリブを展開しているんだ。」
M:「そういうことか。みんなジャズのアドリブは、コード進行に基づき展開しているってことだね。」
D:「そう。一部の例外はあるけど、基本的にはそのとおりだ。」
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ー 休  憩 ー

M:「また素人考えなんだけど、アドリブってアルペジオみたいなもの?」
D:「まあ、そういうことだね。フレーズでハーモニーを表現していくんだから、バーチカルに展開していくんだ。その上で、ビバップ・フレーズは、代理コードを使って、別のコードに置き換えたりする。それと、テンション・ノートも付けていく。」
M:「だんだんわからなくなってきたよ。今回はこの程度でいいよ。それにしても、パーカーの存在はすごいんだね。」
D:「ところで、Murphyくんは、パーカーの演奏聴いたことある?」
M:「もちろんあるんだけど。何回かは、でも...」
D:「でも?」
M:「なんだかむずかしそうだよ。」
D:「そうか。どんなアルバム聴いたの?」
M:「あまり古い録音もいやだし、確か50年代のものだったと思う。」
D:「わかった。Murphyくん、パーカーはやっぱり40年代の演奏をまず聴いた方がいいよ。SavoyやDialに吹き込んだもの。演奏は1曲3分前後だから。何回か聴いていくうちに、パーカーのフレーズに親しみを覚えるよ。」
M:「そのSavoyかDialか、どちらを先に聴けばいいの?」
D:「両方だよ。Murphyくん、1940年から48年までのパーカー絶頂期の演奏を1つにまとめた、いいアルバムがあるよ。セットなんだけどボクはこれをすすめるね。以前ジャンゴの時に採り上げたイギリスのJSP Recordsがパーカーの決定版ともいえる、ほんとにいい復刻盤を出してくれた。さすがJSPだけあって、音質は向上しているし、しかも低価格。5枚組で3000円切れるよ。パーソネル、録音年月日などのデータもしっかり記述されているし、JSPのこのセットは、いずれ在庫が切れて品薄になれば値段も上がるだろうね。」
M:「パーカーの代表曲ってなに?」
D:「いろいろあるけど。例えば、ビリーズ・バウンス(Billie’s Bounce)。Murphyくんもこの曲練習してみたら。」
  ◇◇◇
A Charlie Parker: A Studio Chronicle 1940-1948 イギリスJSP Records 5枚組Boxセット
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第4回 不滅のジャズ名曲-その4- オール・ザ・シングス・ユー・アー(All The Things You Are) 

Django:「マーフィー君、不滅のジャズ名曲の第4回目は、オール・ザ・シングス・ユー・アー(All The Things You Are)です。 この曲は、もともとはジャズの曲ではなく、オスカー・ハマーシュタイン(Oscar Hammerstein Ⅱ)作詞とジュローム・カーン(Jerome Kern)作曲の名コンビによるミュージカルナンバーで、現在に至るまで数多くのジャズプレーヤーが、この曲を採り上げ、いわゆるジャズ・スタンダードとなったものです。」

Murphy:「そうだったのか。ジャズの演奏ではよく聴くけど、オリジナルはあまり聴いたことなかったな。」

D:「パーカーもサヴォイ・セッションで演奏しているよ。ところで、どうしてこの曲、ジャズプレーヤーにこれほど愛されているのか知ってる?」

M:「曲そのものがいいからだろう。このメロディーラインはすばらしいね。」

D:「それもあるけど。実は、この曲のコード展開が魅力なんだよ。順番に4度ずつ移行していく、いわゆる4度進行なんだ。だから、アドリブの展開が大変おもしろい。」

M:「ジャンゴ君はジャズギターをやっているから詳しいね。そのへんは、僕にはよくわからないんだけど、でも聴いていて次々とシーンが変わっていくような感じはあるね。」

D:「この曲、ある有名な曲にコード進行がそっくりなんだけど、わかるかな?」

M:「枯葉じゃないかな。」

D:「そのとおり。枯葉も同じ4度進行なんだ。枯葉は、マイルスが演奏していらい一躍ジャズのスタンダードになったけど、実はオール・ザ・シングス・ユー・アーとよく似ているということ。」

M:「でも、ボクは、枯葉より、オール・ザ・シングス・ユーアーの方が好きだね。ジャンゴ君はどう?」

D:「ボクも同じ。」

  ◇◇◇

「オール・ザ・シングス・ユー・アー」のように、ミュージカルの名曲が、ジャズになった例は実に多い。オスカー・ハマーシュタインとジュローム・カーンのコンビニよる名作は、ジャズ・スタンダードとして、多くのジャズ・プレーヤーに愛されている。ジャズの聴き方として、このような「歌もの」から入っていけば、知らないうちに、いろんなプレーヤーの演奏に接し、プレーヤーごとの違いがおもしろくなってくる。そして自分のジャズの森が広がっていく。ジャズもやはり「」が基本だと思う。大半のジャズプレーヤーは、原曲を歌い、アドリブも楽々と口ずさむ。超絶技巧のアドリブラインでさえ、多くのプレーヤーは歌っている。

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【コンプリート・スタジオ・レコーディングス・オン・サヴォイ・イヤーズ VOL.2】