ラブラドールが聴いた今日のジャズ-第14回- The Modern Jazz Sextet / Modern Jazz Sextet

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ザ・モダン・ジャズ・セクステット

初めて聴いたジャズはMJQだった。親しみやすくて聴きやすいし、それでいてJazzの香りがたっぷり漂い、スインギーなJazzの王様は今でもMJQだと思う。Jazzの初心者にも安心してオススメできるし、MJQを聴けば、ほとんどの人にJazzの魅力がわかってもらえる。

でも、MJQは管楽器が入っていない。サックスやトランペットの入っていないジャズなんて!、と思う人も多いだろう。確かにJazzは、管楽器が入らないと何か物足りない気持ちになることもある。

もし、MJQにホーン奏者が加わればどんなに楽しい演奏になるんだろうと、以前から何度も思ったことがある。トランペットとサックスが入れば、俄然MJQはカラフルになり、パワフルにもなる。では、MJQに誰が加わればよいか?

サックスならパーカーだろう。でも、MJQが活躍し始めた頃は、既にパーカーは晩年を迎えていた。50年代の半ばのMJQに加わるサックス奏者は、もっと元気なプレイヤーの方がいいだろう。となると、パーカーのような演奏のできる人、つまりパーカーの代打を起用すればよいのではないか。

パーカーの代打の切り札は、間違いなくソニー・スティットだろう。次にトランペットは誰がよいか? これは、ガレスピーで決まりだ。スティットとガレスピーなら、バリバリのビバップが炸裂する。でもこの二人が入れば、MJQのオリジナルメンバーのなかからミルト・ジャクソンは一時的に退いてもらおう。

ディジー・ガレスピーのトランペット、ソニー・スティットのアルトサックス、ジョン・ルイスのピアノ、パーシー・ヒースのベースとくれば、これは理想のビバップメンバーではないか? まさに夢の共演だ。ここで重要なのは、ジョン・ルイスの存在。これが肝になる。なぜかというと、静と動のバランスがMJQの最も優れた点であり、いつもはミルト・ジャクソンの「動」とジョン・ルイスの「静」の対比が素晴らしく、ここでミルト・ジャクソンが退き新たにホーン奏者二人が加わった場合も、彼ら二人が「動」で、「静」の存在としてジョン・ルイスは決して外すことは出来ないわけだ。

それと、ベースのパーシー・ヒース。この人は地味だけど、決して代わることの出来ない、いわば屋台骨のような存在だ。モダンベースの父、オスカー・ペティフォードとならび50年代に活躍したベーシストといえば、ポール・チェンバースとパーシー・ヒースが筆頭に上げられるが、ベースの音色、音そのものでいえば、パーシー・ヒースのベースの生音の素晴らしさは未だに語り継がれている。

MJQにホーン奏者が加われば? しかもガレスピーとスティットが参加すれば理想だ、といったが、まさにこのメンバー構成のレコードが過去に発売されていた。Verveのノーマン・グランツが1956年にNYで録音した、The Modern Jazz Sextetというタイトルのアルバムだ。メンバーは、この4人以外に、ギターのスケーター・ベスト、ドラムスはオリジナルメンバーと入れ替わり、チャーリー・パシップが参加。快調の飛ばすガレスピーとスティットの演奏は会心の出来で、この二人とジョン・ルイスのピアノとの対比が素晴らしい。演奏内容は、まさしくビバップだ。そして、バラードメドレーも入っている。ここでのジョン・ルイスのピアノは、彼以外の他のピアニストでは決して真似出来ない、音数が少ない中での珠玉のアドリブを披露する。 ーDjango

第17回 不滅のジャズ名曲-その17- 明るい表通りで(On the Sunny Side of the Street)

Murphy:「前回の「エラ&ルイ」のアルバム、とても気に入っているよ。」

Django:「それはよかった。たぶんハワイ好きのMurphyくんの好みだと思っていたんだ。」

M:「ところで、ジャズ・ヴォーカルの分野で、最近の若い人はどうなの? 女性シンガーの新人で誰かおすすめの人いる?」

 D:「そうだなあ。今注目の若手新人の一人に、イタリア出身のロバータ・ガンバリーニという女性がいるよ。」

M:「なに、ガンバリーニ? おもしろい名前だね。」

 D:「ガンバリーニっていうだけあって、ステージでとてもガンバルんだ。」

M:「本当? Djangoくん、ライブで聴いたことあるの?」

D:「うん。昨年(2006年秋)の富士通コンコード・ジャズ・フェスティバルで来日したんだ。そのライブを聴いて、相当な実力の持ち主だと思ったね。」

M:「どんな感じ?」

D:「原曲の持ち味をくずさずに、心を込めて歌う人だね。それと、的確な音程で、楽器の物真似ができるんだ。トランペットとかの。」

M:「へえー、おもしろそうだね。本当にトランペットのような音がするの?」

D:「かなり忠実だよ。たぶんMurphyくんが聴いたら驚くだろうな。」

M:「トランペットのように歌って、アドリブをするってこと?」

D:「そう。お得意の曲が、 「明るい表通りで(On the Sunny Side of the Street)」という明るくて楽しい曲、Murphyくん、知ってる?」

M:「知ってるよ。この曲を聴くと元気が出るんだから。スイング時代からよく演奏されていた曲だね。確か、ディジー・ガレスピーもアルバム出してなかった?」

D:「Murphyくん、よく知ってるね。楽しい曲は得意だもんな。その通り。ディジーもアルバム出してたね。「Sonny Side Up」というタイトルで。これ、ディジー・ガレスピーに、ソニー・スティットソニーロリンズが加わり、二人の「ソニー」から、シャレで、「Sunny」を「Sony」にしたんだ。」

M:「Djangoくん、ボク、このアルバム大好きなんだ。ガレスピーが陽気に歌っているしね。」

D:「そう。実はね。Murphyくん、この間のライブで、ガンバリーニが、このアルバムに入っている3人のフレーズをそのまま引用して歌っていたんだよ。驚いたね! 確か、どこかで聴いたフレーズだと思って、家に帰って、ひょっとしてディジーのアルバムではないかと思い、CDをかけてみたら、そのものズバリだった。」

M:「へえー。それはぜひ聴いてみたいね。」

D:「この曲の入った、ガンバリーニのアルバムが出ているよ。「Easy To Love」というタイトル。ボクもこのアルバム、ライブに行くまでは知らなかったんだけど、2日目に会場で買ったんだ。スイング・ジャーナルのディスク大賞にも選ばれている。」

M:「Djangoくん、サインしてもらった?」

D:「もちろん。飾らずフランクで親しみやすそうな人だった。"明るい表情で”「ガンバリまーす!」って言ってたね。」

  ◇◇◇

ロバータ・ガンバリーニ(Roberta Gambarini)の「Easy To love」は、 グラミー賞にもノミネートされた。2004年6月録音。
ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)の「Sonny Side Up」は、ノーマン・グランツのプロデュースでVerveからリリースされている。ディジーのヴォーカルも加わり、楽しさ満点。迫力満点。1957年12月録音。

イージー・トゥ・ラヴEasytolove

Sonnysideupソニー・サイド・アップ