Django:「Murphyくんは、今の時代に新しく録音されたジャズは聴かないの?」
Murphy:「いや、最近のジャズもけっこう聴くよ。でも、どのCDがよいのかあまり見当がつかないんだ。50年代や60年代のアルバムは、情報も多いし、だいたい見当がつくんだけど。」
D:「そうか。もちろん50年代60年代のアルバムは、定番としていつまでも聴けるし、いわゆるクラシックジャズとして、永遠に語り継がれると思うけど。でも、最近の録音でも、素晴らしいアルバムがたくさん出ているから、こちらの方も是非聴いてみたら。そうだな、Murphyくん、最近のヨーロッパ・ジャズは聴いたことある?」
M:「ヨーロッパの方は、あまりよく知らないんだけど。…、あ、思い出した! 第6回のときのアルバムが確かスウェーデンジャズだったね。あれ、聴いてみたら、思わずこんなジャズが欲しかったと、つくづく思ったよ。実にシャレていて、重くなく、心温まる演奏だ。毎日聴いているよ。コルネットの響きがいいね。」
D:「そう。やっぱり。実は今回紹介する曲は、よくトランペットで演奏される曲なんだけど、最近聴いた、スウェーデンの若手トランペッターのアルバムに収録されていて、思い出したんだ。曲名は、アイ・リメンバー・クリフォード(I Remember Clifford)。作曲は、前回と同じ、ベニー・ゴルソン。この曲は、「ブラウニー」の愛称で親しまれている、50年代に活躍した天才トランペット奏者「クリフォード・ブラウン」に捧げたバラード曲。ブラウニーは、1956年に惜しくも交通事故で亡くなり、その追悼曲としてこの曲が作られたんだ。ブラウニーは、完璧なテクニックと歌心溢れるフレージングで、当時最高のトランペット奏者といわれ、ドラマーのマックス・ローチとのバンド活動は不滅のジャズ演奏として、いまでも高く評価されている。」
M:「トランペットといえば、マイルスと較べてどうなの?」
D:「クリフォード・ブラウンとマイルス・デイビスとは、かなり演奏形態やコンセプトが違うね。マイルスは一言でいえばクール。一方、ブラウニーは歌心溢れるフレーズが次々と沸き起こってくる素晴らしいアドリブ・プレイが魅力で、テクニック面でも、おそらく当時クリフォード・ブラウンの右に出る人はいなかったんじゃないかな。」
M:「よし、クリフォード・ブラウンを聴くぞ!」
D:「Murphyくん、その前に今回の、アイ・リメンバー・クリフォードをまず聴こうよ。」
M:「でも、この曲、追悼曲だから、クリフォードの演奏では聴けないし、誰の演奏がいいの?」
D:「トランペットに限らず、ピアノでも演奏されるし、この間採り上げたMJQもヨーロピアン・コンサートで録音しているよ。今回は、新しいアルバムの中から選んでみたんだ。スウェーデンの若手トランペット奏者「カール・オランドソン(Karl Olanndersson)」の「Introducing」というアルバム(2002年10月)を是非おすすめするよ。テクニックに走らず、自然で、よく歌う演奏だ。実は、このアルバムでは、自らヴォーカルも担当している。ちょうどチェット・ベイカーのような感じ。」
「Introducing(イントロデューシング)」Karl Olanndersson(カール・オランドソン) Spice of Life SOLJ-0012