第88回 不滅のジャズ名曲-その88-アイ・オンリー・ハヴ・アイズ・フォー・ユー(I Only Have Eyes for You)

J_cd23_l

マイ・ロマンス スタンダード・コレクションVol.1

Django:「スウェーデンのコルネットとギターとベースのユニークなトリオ、Sweet Jazz Trioは、随分前に一度紹介したことがあるけれど、もう一度採り上げてみよう。」

Murphy:「Sweet Jazz Trio。覚えているよ。とっても暖かくて大人の寛いだジャズを聴かせるグループ。北欧のジャズって、シンプルで、アコースティック楽器の音色を大切にした演奏が多いね。特にこの時期、冬の夜にジャズを聴くのにピッタリだ。」

D:「このグループ、編成がユニークだね。ドラムレスで、ピアノが入っていないから、それぞれの奏者の絡み合いがよく出ている。しかも、スタンダード曲を中心に演奏し、歌ものが非常に得意だから、いつでもどこでも聴ける。しかもセンスがいい。」

M:「そうだね。部屋の雰囲気まで変わるね。」

D:「今回は、2005年に発売されたアルバムで、タイトルは"My Romance" -Standard Collection Vol.1。このなかの2曲目に入っているI Only Have Eyes for Youという曲は、Harry Warrenが1934年に作曲したソングで、その後ジャズスタンダードになった。コールマン・ホーキンスが1935年に録音している。ジャズを聴いて心が落ち着くとは、このSweet Jazz Trioのような演奏のことを言うのだろう。」

第62回 不滅のジャズ名曲-その62-恋に恋して(Falling In Love With Love)

ジャズの新レーベルが発足した。"One"レーベル。2007年2月に設立され、この5月16日に第一弾がリリースされた。アルバムタイトルは、鈴木良雄トリオfeaturing海野雅威

"One"レーベルは、 鈴木良雄、伊藤潔、タモリ、五野洋の4人により設立された。その設立趣旨にデューク・エリントンの言葉が引用されており、大変興味深い。

"音楽とは古いとか、新しいとか言うことではなく、ただいい音楽か、悪い音楽かということだ。"

4人のメンバーは、チンさんのニックネームで親しまれている、日本のジャズ界のリーダー的存在である、ベース奏者の鈴木良雄。70年代前半に、CBSソニーでプロデューサーとして活躍し、以降現在まで200枚にもおよぶアルバムを制作してきた名プロデューサー、伊藤潔。それにタモリ。そして、2004年に55Recordsを設立し、イタリアの若手ヴォーカリスト、ロバータ・ガンバリーニのデビュー作「イージー・トゥ・ラヴ」を世に送り出した、現在55Records代表の五野洋。

ところで、同レーベル第一弾のアルバムは、ベースの鈴木良雄と、注目の若手ピアニスト海野雅威、それにセシル・モンロー(ds)のトリオによる演奏。10曲中8曲はスタンダードで構成されており、チンさんとセシルのリズム陣が素晴らしいだけに、海野雅威が自由にのびのび楽しみながらプレーしており、実に心地よくスイングする好アルバムに仕上がっている。3曲目には、Richard Rodgers(作曲)、Lorenz Hart(作詞)のおなじみのコンビが書いた、恋に恋して(Falling In Love With Love)が入っており、この曲でも海野のグルーブ感がすばらしい。(Django)

 ◇◇◇

For You 鈴木良雄トリオfeaturing海野雅威 (2007/5/16リリース)

41viwmw8kol_aa240_

第5回 不滅のジャズ名曲-その5- バグズ・グルーブ(Bag’s Groove)

Murphyくん、第5回の原稿は手紙でお送りします。
 ◇◇◇
不滅のジャズ名曲第5回は、MJQのミルト・ジャクソン作曲の「バグズ・グルーブ(Bag’s Groove)」です。
ミルト・ジャクソンはいつもブルース・フィーリング溢れる演奏で定評がありますが、特にこの曲を演奏したときは、水を得た魚のように、生き生きとアドリブを展開していきます。この曲は、ブルース形式のシンプルなコード進行で、いわゆる「ブルース」と呼ばれる曲です。それだけに、このシンプルなコード展開にのって、思いっきりスイングし、天心爛漫で自由自在なアドリブプレイが行われます。「バグズ・グルーブ」は以降、現在に至るまで、多くのアーティストが、ライブで (特にアンコールで) よくとりあげます。

ミルト・ジャクソンは、MJQ以外でも、他のアーティストと組んで、この曲を何度も録音していますが、やはりMJQでの演奏がベストです。ジョン・ルイスとミルト・ジャクソンとのコンビは、いわば静と動というコントラストのなかで、お互いを引き立て合います。そこに、世界一美しいベース音といわれた、パーシー・ヒースが、ドラムのコニー・ケイとともに、名サポート役を果たします。よく「インタープレイ」という表現が用いられますが、まさにその言葉どおり、4人の絶妙なコラボにより、お互いに対話しながら、緊張とリラクゼーションを見事に引き出しています。彼らMJQは、まさにモダン・ジャズの集団即興演奏の永遠の模範となる存在でしょう。ボクの名前がジャンゴだから、一層MJQに惹かれるのかもしれないけど。

今回は、彼らMJQの数ある演奏のなかでも、あえて最高のアルバムとして推薦したいものがあります。なぜかというと、MJQをはじめすべてのジャズ演奏は、ライブでこそ、その実力が遺憾なく発揮されるからです。スタジオ録音より観客を前にしたライブ録音の方が、よりスリリングで、ジャズならではのノリが最大限に表出されるからです。MJQのライブレコーディングのなかで、決定的な名演奏を収録したものがあります。それは、1960年に北欧から東欧にかけての長期ツアーのなかの、スウェーデンでの演奏を2枚のLPにまとめた、アトランティック盤のヨーロピアンコンサート(最新の紙ジャケ仕様の方が断然録音が良い)です。ちなみにこのアルバムは、ボクの名前の「ジャンゴ」から始まり、MJQお得意の名曲が次々と展開されます。ジャズならではのスイング感とはまさにこのアルバムでの演奏のことです。スイングするから、何度も何度も聴きたくなるということです。永遠の名盤です。
では、ボクのお話、これで終わります。B000jlsvj201_aa240_sclzzzzzzz__1

第1回 不滅のジャズ名曲-その1- ジャンゴ(Django)

不滅のジャズ名曲ーその1ー「ジャンゴ(Django)

ベルギー生まれのジプシーギタリスト「ジャンゴ・ラインハルト」に捧げた、今はなきMJQのジョン・ルイスが作曲した屈指の名曲。

実は、うちのチョコラブにつけた名前が「ジャンゴ」です。男の子なのでみんなからジャンゴ君と呼ばれています。散歩の途中に、「お名前は?」と聞かれ、「ジャンゴです」と答えると、大半の方は不思議そうに「もういちどお名前は?」と聞かれます。「ジャンゴ」というのは独特の響きを持ち、わかりづらく不思議な名前に聞こえるようです。でも、一度覚えてもらうと、ほとんどの人はいつまでも忘れず覚えていてくれます。
「ジャンゴというお名前は、どういう意味なのですか?」とよく聞かれます。そのたびに、「ジャズギタリストでジャンゴ・ラインハルトという人がいて、そこから名前をつけました。」と説明します。そこで、「あ、そうですか」といって、会話が終わる場合が多いのですが、なかには、興味を持っていただき、続いて質問がきます。「ジャズがお好きなんですね。ジャンゴという人はどんな人ですか?」と。「はい。ジャンゴ・ラインハルトという人は、ずっと昔の戦前にベルギーで生まれ、フランスで活躍した人で、今はもうおられません」。「私もジャズに興味があるのですが…」と言われると、次第にジャズの話に入っていきます。

●「作曲者は、ジョン・ルイスで、MJQのリーダーです。彼が、1950年代の初めに作曲し、その曲を含む「ジャンゴ」というタイトルのアルバムを作りました。すばらしい名曲です。」

◇「ああ、そうですか。ジョン・ルイスという人もやっぱりギター奏者ですか?」

●「いや、ジョン・ルイスは、ピアニストです。ジャズをあまり聴かない人にも、彼の演奏はきっと気に入られるでしょう。クラシック畑の人もファンが多いです。」
・・・・という風に会話が続くのですが、その頃には、当の本人であるチョコラブのジャンゴが、そろそろ退屈し、そわそわしだします。
 

 ◇◇◇

1955年作曲の「ジャンゴ」は、ジャズ史上屈指の名曲だけあって、MJQもその後、さまざまなアルバムでこの曲を取り上げている。例えば、59年の「ピラミッド」、60年の「ヨーロピアン・コンサート」、74年の「ラスト・コンサート」などにも収録されている。また、ほとんどのライブで、この曲は演奏されてきた。静かで哀愁の漂うスローな導入部が終わると、中間部はうってかわって、アップテンポで、ブルース・フィーリングにあふれるミルト・ジャクソンが活躍する。エンディングは、再び前半の静かな曲に戻る。この前後半と中間部の対比がすばらしい。導入部から中間部に入った瞬間、これまで押さえていたミルト・ジャクソンが一気に厚くなるところは、何度聴いても新鮮だ。
ジャンゴ」は、やはり初録音のプレスティッジ版から聴くべし!

●DATA
曲名:Django(1955)
作曲:John Lewis

ジャンゴ:MJQ

51ysrqjczyl_aa240_