Murphy:「北欧インテリアの、木質を生かしたシンプルでモダンなカフェがあるんだけど、今回はその空間にマッチする音楽をアドバイスしてくれる?」
Django:「北欧のインテリアっていうと、まず家具を思い浮かべるね。有名な"Yチェア"もそうだったかな。」
M:「そう、デンマークのアルネ・ヤコブセンがデザインしたもの。あと、セブンチェアも彼の代表作で、そのカフェで使っている。北欧家具は飽きのこないシンプルさと機能性を尊重してきたし、見た目の美しさと実用性が共存しているからボクも好きなんだ。それで、Djangoくん、どんな音楽がいい?」
D:「リラックスしたムードのなかで、温かみのある音楽かな。それこそ北欧のジャズを流せばいいんじゃない?」
M:「なるほど。北欧のジャズってどんな感じ?」
D:「スウェーデンは、とてもジャズが盛んで、生活に密着している。どちらかと言えば、泥臭くなく、上質で洗練されている。超絶技巧や迫力で圧倒する方じゃなく、じっくり聴かせるタイプ。北欧インテリアが素材を生かしたデザインを得意としているように、北欧ジャズもアコースティック楽器本来のサウンドを最大限生かしたものが多い。だから、リラックスして聴けるし、スインギーな演奏だ。特にジャズをいつも聴いていない人でも抵抗なく十分楽しめるよ。」
M:「ずいぶん前に採り上げたグループも北欧だったね。確か、スイート・ジャズ・トリオ。あれ本当に気に入ってるよ。コルネットとギターの組み合わせが抜群だった。」
D:「あのイメージだよ、北欧ジャズ。他に最新アルバムでいいのがたくさんある。ギターが入ると、リラックスできて、しかも聴きやすいし、空間イメージがずいぶん変わると思うね。今、一番おすすめしたいのは、スウェーデン生まれ(1959)のジャズ・ギタリスト、ウルフ・ワケーニウス(Ulf Wakenius)。オスカー・ピーターソンが、絶賛し、現代のスウェーデンで最も国際的な活躍をしている一人。実は、1997年からオスカー・ピーターソン・カルテットのレギュラー・メンバーでもある。これまでに何枚かアルバムを出しているんだけど、昨年(2006年6月)、イン・ザ・スピリット・オブ・オスカー(In the Spirit of Oscar)というグループを結成し、ケーク・ウォーク(Cake Walk)というファースト・アルバムをリリースした。さすがにオスカーの薫陶を受けただけあって、実によくスイングしている。収録曲は、オスカーの曲が多いんだけど、古い曲も入っている。例えば、ベニー・グッドマンの演奏で有名な、ソフト・ウインズ(Soft Winds)。」
M:「聞いたことないなあ? その曲。」
D:「あまり有名じゃない。でも、この曲、実は、チャーリー・クリスチャンが、グッドマンのバンドで演奏していた曲。そういった意味では、なかなか興味深いよ。フレッチャー・ヘンダーソンが作曲したともいわれている。まずアルバムの1曲目、"ケーキウォーク"を聴けば、Murphyくんもすぐに気に入ると思うな。」
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スウェーデンのジャズギタリスト、ウルフ・ワケーニウスの最新アルバム
ケークウォーク/イン・ザ・スピリット・オブ・オスカー Savvy 2006/06 Release