第80回 不滅のジャズ名曲-その80-ステラ・バイ・スターライト(Stella By Starlight)

Roundmidnight ラウンド・ミッドナイト(K2HD/紙ジャケット仕様)Django:「ヴィクター・ヤング(Victor Young)の作曲した、1944年のパラマウント映画Uninvitedの挿入曲である、ステラ・バイ・スターライト(Stella By Starlight)は、ジャズスタンダードのなかでも特に人気の高い曲。アルバムの一曲目がこの曲で始まるクロード・ウイリアムソン(Claude Williamson)ラウンド・ミッドナイト(Round Midnight)というタイトルのアルバムは、ピアノトリオアルバムのなかでも隠れた名品として、多くのファンに今でも親しまれている。前回同様、ベツレヘム・レーベルで、今月(10月)の24日に再発される。」

Murphy:「クロード・ウイリアムソンって聴いたことないけど、どんなタイプ?」

D:「バド・パウエル派の白人ピアニスト。このアルバムは1956年の録音で、ジャズスタンダードで固められている。ベツレヘム・レーベルを代表するアルバムで、派手さはないけど、何度も繰り返して聴きたくなる味のある演奏だ。アルバムジャケットのデザインが地味すぎて見逃しがちで、しかもこれまで再発されては廃盤を繰り返してきた。こういうアルバムを見逃さずに入手すれば、愛聴盤としていつでも楽しめるよ。推薦!」

第79回 不滅のジャズ名曲-その79-木の葉の子守歌(Lullaby Of The Leaves)

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ザ・リターン・オブ・ハワード・マギー(K2HD/紙ジャケット仕様)

Django:「ベツレヘム(Bethlehem)レーベルって知ってる?」

Murphy:「クリス・コナーのバードランドの子守唄は、確かベツレヘム・レーベルだったような気がするけど。」

D:「その通り。実は、このベツレヘム・レーベルの国内発売元が、ビクター・エンタテインメントに移籍して、今年の6月から発売を開始し、12月までに50タイトルが出揃うことになる。このレーベルはマイナーレーベルなんだけど、モダンジャズの絶頂期である50年代に録音されただけあって、今でも第一級の価値ある名盤揃いだ。この10月に発売される10タイトルのなかでは、ビバップ三大トランペット奏者の1人である、ハワード・マギー(Howard MacGhee)のアルバムは見逃せないね。アルバムタイトルは、ザ・リターン・オブ・ハワード・マギー(The Return of Howard MacGhee)で、1955年の録音。」

M:「ビバップ三大トランペッターって、他は誰?」

D:「ディジー・ガレスピーとファッツ・ナバロ。ハワード・マギーは、ディジーより1歳若い。」

M:「実は、最近特にビバップがいい!とつくづく思っていたんだ。」

D:「ハワード・マギーのアルバムは、再発されては廃盤になることが多く、一気に揃えることはむずかしいかも知れないけど、気長に待てばそのうちまた発売される。そのなかでも、今回のベツレヘム盤のザ・リターン・オブ・ハワード・マギーは特にお薦めだね。木の葉の子守歌(Lullaby Of The Leaves)四月の思い出(I’ll Remember April) などの有名曲が収録されているし、全作品に流れるビバップ・フレーズは、理屈抜きに楽しめるね。」

第78回 不滅のジャズ名曲-その78-アイム・オールド・ファッションド(I’m Old Fashoned)

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ベイシーズ・アット・ナイト

Murphy:「さっそく、前回紹介してくれた渡辺貞夫のBasie’s At Nightを聴いてみた。素晴らしいね。こんなライブに一度でいいから行ってみたいと思った。3曲目のアイム・オールド・ファッションド(I’m Old Fashoned)が特に気に入った。ところで、ボクは渡辺貞夫のアルバムを聴いたのは、正直言ってこれが初めて。」

Django:「I’m Old Fashonedジュローム・カーンの作曲(1942)で、ナベサダと親交の深いチャーリー・マリアーノ(Charlie Mariano)が、1954年にBoston All Starsというグループで録音している。この曲は一般的にはバラードで演奏されることが多いけど、そのアルバムではミディアム・アップテンポで吹いている。今回のナベサダのアルバムも、この曲をかなりのアップテンポで演奏し、これが実に効果的で、最後まで一気に惹き込まれる。

ところで、今夜は、大阪ブルーノートの最後のライブが行われる。今日限りで閉店。ラストを飾る演奏は、渡辺貞夫グループ。」

第77回 不滅のジャズ名曲-その77-ディープ・イン・ア・ドリーム(Deep In A Dream)

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ベイシーズ・アット・ナイト

岩手県一関市にあるジャズ喫茶「ベイシー」での、感動のライブドキュメント、ベイシーズ・アット・ナイト(Basie’s At Night)が8/1に発売された。演奏は、渡辺貞夫レギュラー・クインテット菅原正二のベイシーは、音の良さで定評があるが、今回のアルバムは、2007年4月14日のライブ・レコーディングで2枚組に収録された。

ジャズのライブ演奏は、一発勝負。主催者と演奏者との関係がきわめて大切であり、会場の大きさや音響条件、観客のノリなどに、演奏内容は大きく左右される。そういった意味では、当夜の演奏は、まさに理想のライブである。菅原正二という音の探究心に燃えた熱烈なジャズ愛好家の運営する小さなライブハウスで、きわめて至近距離から客席と一体となって、演奏が繰り広げられた。しかも聴衆は、全国からファンが集まった。

演奏メンバーは、渡辺貞夫のレギュラー・カルテットである、小野塚晃(p)、納浩一(b)、石川雅春(ds)に、セネガル出身日本在住のパーカッション奏者ンジャセ・ニャンが加わったクインテット編成。1933年生まれの渡辺貞夫が渾身のアルトサックスを奏でる。納浩一のベースが見事なビートを刻む。小野塚晃のピアノ、石川雅春のドラムスが一体となり完全燃焼し、そこにンジャセ・ニャンの歌と演奏が彩りを加える。

1曲目のOne For Youからパワー全開。全17曲は、一気に突き進む。スタジオ録音では決して得られない気迫が全曲を覆う。6曲目のJimmy Van Heusen作曲のDeep In A Dreamを聴けば、渡辺貞夫のアルトが、いかに心にしみ入るスローバラードを奏でるかがわかる。数十年吹き続けた人でないと決して表現できないシンプルさと澄み切った音の純度がここにある。アルトサックスの音色がダイレクトに心に訴える。15曲目のKaribuでは底抜けに明るい楽しさが会場を包み込む。それにしても素晴らしいアルバムだ。全曲名演。ジャズの楽しさ満載。ジャケットの写真も秀逸。(Django)

第76回 不滅のジャズ名曲-その76-ゼム・ゼア・アイズ(Them There Eyes)

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プリーズ・リクエスト

Murphy:「先日、レコード店に行ったら、軽い感じのとてもチャーミングな女性ジャズヴォーカルが流れていたので、誰が歌っているのか店員さんに聞いてみたら、ジャネット・サイデル(Janet Seidel)と言っていた。有名なの?」

Django:「ここ数年の間に続々とCDが発売され、日本でもけっこう売れているみたい。ジャネットはオーストラリアのシドニーで活躍している白人女性ヴォーカリストで、肩の力を抜いた気軽で親しみやすいヴォーカルがなかなか魅力的だね。

最新盤は、7/25発売のプリーズ・リクエストというタイトルのアルバム(We Get Requestsが本来のアルバム名)。このアルバムは、2003年のライブ・レコーディングで、ジャネットのピアノの弾き語りに、ベースとギターを加えたトリオ演奏。ドラムレスだから、いっそう寛いだ感覚が表れている。曲目はスタンダードを中心にまとめられており、普段どこでも気軽に聴ける内容。

そのなかには、ゼム・ゼア・アイズ(Them There Eyes)という1930年に作曲されたとても古いスタンダード曲も含まれている。この曲は、サッチモ、レスター・ヤング、ビリー・ホリデイなどが好んで採り上げた曲で、古くから録音もされてきた。作曲はSugerやSweet Georgia Brownなどを作曲したMaceo Pinkard。この時代ならではのスウィンギーでノリのよい感覚がこの曲の持ち味だが、ジャネットが歌うと、ふたたび新鮮によみがえってくる。」

第74回 不滅のジャズ名曲-その74-イージー・トゥ・ラヴ(Easy To Love)

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Personal Appearance

Django:「コール・ポーターの名曲、イージー・トゥ・ラヴ(Easy To Love)は、古くはビリー・ホリデイ、最近ではロバータ・ガンバリーニなど、これまで多くのヴォーカリストに歌われてきた。また、器楽演奏では、パーカーがストリングスをバックにVerveに吹き込んだものや、チェット・ベイカーのトランペットなどがすぐに思い出されるが、ワンホーン・カルテットのなかで選ぶなら、ソニー・スティット(Sonny Stitt)が50年代半ばにVerveに吹き込んだパーソナル・アピアランス(Personal Appearance)というアルバムを是非採り上げてみたい。」

Murphy:「ソニー・スティットといえば、前回も出てきたけど、アルト奏者、それともテナー?」

D:「アルト、テナー、さらにはバリトンまでこなす、まさに”サックスの神様"と呼ばれる腕前の持ち主。もともとは、アルト奏者としてスタートしたが、40年代末から50年代前半までは、パーカーとの類似性を避けてテナーに持ちかえたといわれる。それほど彼の実力はパーカーに迫るものがあったということ。」

M:「Djangoくんは彼のアルバムのなかで、いつ頃のものをすすめる?」

D:「アルトでは、50年代後半の、ルーストやヴァーヴに吹き込んだアルバム。テナーでは、40年代末から50年代にかけてプレスティッジに吹き込んだものがいいね。例えば、バド・パウエルとの共演盤(Sonny Stitt/Bud Powell/J.J. Johnson)などは非常に有名。

今回採り上げたアルバムは、アルトで演奏しており、1957年にリリースされたもの。このVerve盤の収録曲は、Easy To Loveのほかにも、Easy Living、Autumn in New York、You’d Be So Nice to Come Home To、Avalonなどが含まれ、まさに名曲名演といえる充実した内容。先程も言ったように、いわゆるパーカー派と呼ばれる多くのホーン奏者のなかでも、最強の実力の持ち主であることがこのアルバムでも伺える。ビバップ・ファン必聴盤。」

第73回 不滅のジャズ名曲-その73-オーニソロジー(Ornithology)

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Breakin’ It Up

Django:「今もNYで活躍するビバップの伝導師、バリー・ハリス(Barry Harris)の初リーダー作Breakin’ It Up(1958年)が、欧州のJAZZ BEATレーベルからこの6月に再発された。音質はかなりよくなっている。しかも、オリジナル盤の8曲以外に、初リーダー作の翌日にソニー・スティット(Sony Stitt)も加わり録音された9曲もボーナス・トラックとして収録されている。実は、この9曲は、ソニー・スティット名義でBurnin!というタイトルで発売されたアルバム。今回のこの復刻盤には12ページのブックレットが付いている。ビバップの好きなMurphyくんにおすすめだね。」

Murphy:「バリー・ハリスといえば、これまでにも何枚かのアルバムをDjangoくんに紹介してもらったけど、今ではボクの愛聴盤になっている。このアルバムはどんな曲が入っているの?」

D:「おなじみのジャズ・スタンダード、オール・ザ・シングス・ユー・アー(All The Things You Are)や、パーカーがダイアル・レーベルに吹き込んだ彼のオリジナル曲、オーニソロジー(Ornithology)など。」

M:「オーニソロジーってむずかしい名前だったので、以前に辞書で調べたんだけど、鳥類学という意味だったね。パーカーのニックネームがバードだから、そのような曲名を付けたんだね。」

D:「そのとおり。オリジナルのパーカー演奏もいいけど、ピアノでバリー・ハリスが奏でると、新鮮で、いっそうこの曲の良さが引き出されるね。ボーナストラックのソニー・スティットが加わった方でも、Lover Man、Koko、Easy Livingなどの名曲が入っている。ソニー・スティットは最もパーカー的な演奏だから、バリー・ハリスとの相性も文句なし。」

M:「バリー・ハリスって年齢はいくつぐらい?」

D:「1929年生まれだから、今年で78歳。今やビバップ・スタイルのジャズピアノを継承する大変貴重な存在。彼は、現在NYのリンカーンセンター近くで、自らワークショップを主宰して多くのミュージシャンを育てている。まさに伝導師だ。」

第72回 不滅のジャズ名曲-その72-イン・ア・センチメンタルムード(In A Sentimental Mood)

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デューク・エリントン・ソングブック

Django:「エリントンは実に多くの名曲を残しており、これまで選んだ曲は、ほんのわずか。これからもっと採り上げたいと思うけど、誰もが知っている有名曲で、まだ掲載していない曲の一つが、イン・ア・センチメンタルムード(In A Sentimental Mood)。この曲は、デューク・エリントン・オーケストラが1935年にBrunswick labelに吹き込んだヒット曲。その後、ベニー・グッドマンも演奏し有名曲となった。その後、現在に至るまで、実に多くのジャズ・プレイヤーに演奏され、この曲を吹き込んだヴォーカリストも多い。そうしたなかで、この曲の名演をひとつだけ選ぶとすれば、ボクはやはり、エラ・フィッツジェラルドのソングブック・シリーズのなかで吹き込まれたものが忘れられないね。」

Murphy:「ジャズ入門者のボクでも知っている有名曲だね。ゆったりとしたバラードでああジャズだ!と思わせる独特の雰囲気を持っている。それにしても、Djangoくんにソングブック・シリーズを教えてもらって思ったんだけど、エラ・フィッツジェラルドってよくこれだけ多くの曲を歌ってきたものだと感心するね。」

D:「エラのソングブックシリーズは、ジャズヴォーカル界の金字塔ともいえる名作だ。Verveのノーマン・グランツとの出会いにより、前人未到のソングブック・シリーズが出来上がったのだから二人とも凄いね。でも、その中で、ボクが最高傑作だと思っているアルバムは、やはりエリントンのソングブック。これはもう人類の宝と言っても過言ではない。

このアルバムは、エラの伴奏を、エリントン楽団自らが演奏しているからすばらしい。それと、曲ごとに、オーケストラ演奏、コンボ演奏、さらにバーニー・ケッセルのギター一本、あるいはオスカー・ピーターソンのピアノによるシンプルな伴奏も含まれており実に多彩な内容だ。エラとエリントンの引き合わせをノーマン・グランツが企てたのだから、まさに名プロデューサーである。」

M:「なるほど、ノーマングランツだから出来たことか。」

D:「エリントンの曲はいずれエラという第一級の歌手が歌う運命にあったのだ思うと、このソングブック集は感慨深いものがある。実は、エリントンの曲のなかで、ソリチュード(Solitude)は、ピアノかギターのシンプルな伴奏が最もこの歌曲の美しさを発揮すると思っていたんだけど、まさにここでは、バーニー・ケッセルのギター一本による歌伴で実現された。他に、アズール(Azure)と今回採り上げたイン・ア・センチメンタルムード(In A Sentimental Mood)も同様だ。でもギター一本で歌える人なんて、ジャズヴォーカリスト多しといえども、そうはいないわけで、エラはまさに適役といえる。

それと、エリントンの片腕、ビリー・ストレイホーンの名作ラッシュライフ(Lash Life)を、オスカー・ピーターソンとのデュオで吹き込んでいるから、これまた貴重な永久保存版ともいえる演奏だ。」

M:「ぼくもジャズのことが少しわかってきたような気がする。改めて聞くけど、ジャズで最も大事なことはなに?」

D:「歌うということ、どんなアドリブ演奏でも結局は歌うということだと思う。実際、すぐれたジャズの名手は、みんな歌いながら演奏している。」

第71回 不滅のジャズ名曲-その71-ソルト・ピーナツ(Salt Peanuts)

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Murphy:「このところ気温も30度近くまで上がりもう夏だね。ところで夏の暑さを吹き飛ばしてくれるジャズで何かいいアルバムない?」

Django:「ジャズに季節は関係ないよ。」

M:「そう簡単に言うなよ。Djangoくんにいろいろ教えてもらったけど、やっぱりビ・バップが一番。パーカーとガレスピーのコンビは、夏の暑さも吹き飛ばしてくれるし、最近よく聴いている。」

D:「よし、それなら、パーカー、ガレスピー路線のビバップ派のアルバムのなかから選ぼう。ズバリ矢野沙織だね。」

M:「矢野沙織って高校生じゃなかった?」

D:「もう高校は卒業しているけど、夏向きジャズで推薦!。彼女のビバップ三部作の第三弾で2005年春にリリースされた、SAKURA STAMPというアルバム。アルバム名は春向きだけど中身は夏向きだ。」

M:「矢野沙織ってこれまで聴いたことないけど、そんなにいいの?」

D:「あたりまえだろう。知らないでは済まされないぞ。」

M:「どんな演奏スタイル? なんとなく女性的なやさしいイメージだけど?」

D:「ぜんぜん違う。バリバリのパーカー派だ。気持ちの良いくらいパーカー的な演奏をする。SAKURA STAMPには、Donna Lee、Shawnuffなどのビバップの有名曲が入っている。それにガレスピーの愉快なソルト・ピーナツ(Salt Peanuts)という曲も吹き込んでいるからおもしろい。ボクは事あるごとにガレスピーの魅力を言い続けているけど、矢野沙織がガレスピーの曲を次々と吹き込んでくれるからうれしいね。

このアルバムは、NYのトップ・アーティストとの共演(2004年)だから文句なしの秀作だ。Nicholas Payton(tp) 、それにPeter Bernstein(g)も参加している。ビバップ好きのMurphyくんには、是非、矢野沙織を聴いてほしいね。」

第70回 不滅のジャズ名曲-その70-ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ(Love Is Here to Stay)

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ア・ウーマン・イン・ラヴ(紙ジャケット仕様)

Murphy:「バーバラ・リー(Barbara Lea)の50年代のアルバムが復刻されたね。以前に、Djangoくんから教えてもらった第13回に掲載されたバーバラ・リーのアルバムを聴いて、好印象を持っていたので気になっていたんだ。

Django:「今回6/20に発売されたア・ウーマン・イン・ラヴ(A Woman In Love)は、1955年にリヴァーサイドからデビューアルバムとしてリリースされたLPに収録された8曲と、他に1954年に吹き込んだ2曲を加えたもので、1955年のものは名手ルディ・ヴァン・ゲルダーが録音したといわれている。

このアルバムは、国内盤はこれまでまったくリリースされたことがなかっただけに、ようやくファンの要望に応えるべく、シナトラ・ソサエティ・オブ・ジャパン(Sinatra Society of Japan)から復刻された大変価値あるものといえる。」

Murphy:「Djangoくんも、これまで聴いたことがなかったの?」

Django:「実は、1980年代のはじめに、偶然京都の十字屋のジャズコーナーで見つけて購入した。もちろんLPだけど、オーディオファイルというレーベルのもの。当時の印象は、家に持ち帰り聴いたとたん、ほんとうにいいアルバムを見つけたと思い、それ以降バーバラ・リーのファンになったというわけだ。それだけに自分でも大変思い出深いアルバム。パーソネルは、ジョニー・ウィンドハースト(tp)、ビリー・テイラー(p)、ジミー・シャーリー(g)、アール・メイ(b)、パーシー・ブライス(ds)で、大変落ち着いた円熟の演奏だ。選曲も30年代から40年代のスタンダード曲が中心で、バーバラの落ち着いた歌声が当時のレトロな雰囲気を再現し、今の時代改めて聴くと、さらに魅力が増してくる。」

Murphy:「ぼくのようなジャズ・ヴォーカルの入門者でも、バーバラ・リーのヴォーカルは、抵抗なく受け入れられ、自然でやさしく、ホッとする歌声は、気分が安らぐし、こうした大人のジャズヴォーカルは大歓迎だね。」

Django:「今回のアルバムは名曲ばかりで、本当はすべて採り上げたいんだけど、しいてあげるなら、ガーシュインの最後の作品とされる、1938年に作曲されたラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ  (Love Is Here to Stay)を選んでおこう。ガーシュインのヒット曲のなかでも人気曲で、多くの映画にも挿入された曲。

それにしても今回の復刻盤は、しっとりと落ち着いた大人のジャズヴォーカルを聴きたい人にぴったりのアルバムで、ジャズヴォーカル入門者にもおすすめです。」