ラブラドールが聴いた今日のジャズ-第18回- Hi-Fi Ellington UPTOWN / デューク・エリントン楽団 SOPM-154

Hi-Fi Ellington UPTOWN (LP)

Hi-Fi Ellington UPTOWN (CD)

1952年の録音。戦後のエリントン楽団を代表する名盤だ。解説の牧芳雄氏は以下のように述べている。「もし、”モダン・エリントン”という表現が許されるのであれば、まさにこのレコーディングが行われた頃、即ち51〜53年の間にエリントンのバンドはその数年前から行われたバップの色彩を十分に消化してモダン・ジャズ的な衣をまとって登場したのであり、そこに私は ”モダン・エリントン”が始まったといいたいのである。(同LPライナーノーツより引用)」

このアルバムのA面3曲目にはTAKE THE “A” TRAIN (A列車で行こう)が収録されている。エリントンのピアノから始まり、ベティ・ロッシュのヴォーカルがバップ・スキャットで彩りをそえている。「A列車」も多くの演奏が残されているが、このアルバムでの演奏時間は8分04秒。後半のポール・ゴンザルベス(ts)のソロワークまで、じっくり味わえる。

それにしても、SP時代には3分程度の演奏しか収録出来なかったけれども、LP時代になって、時間的制約がなくなり、ソロも内容豊富になり、よりライブに近くなった。

ところで、このLPは、50年代前半のモノラル録音だから、戦前のものに比べてずいぶん音がよくなった。アルバムタイトルが「Hi-Fi」と名付けられただけあって、今の時代に聴いても不足を感じない。このLPでは、レコードプレーヤーもカートリッジも、少し工夫を凝らして、中高域に張りのあるものを選んでみた。

カートリッジは、パイオニアのPC-15が最適だ。

60年代後半のオーディオ全盛時代、パイオニアのベルトドライブプレーヤーはベストセラーだった。その時代のプレーヤーに付属のカートリッジである、PC-15。これがいい。MM型カートリッジ。針圧1.7-2.3gで、ずいぶん軽量になった。今でも十分現役で使える。JICOからも交換針が出ている。テクニカのAT-6を少しだけ今風というかHi-Fiにしたような感じ。といっても、音は素直で中域が分厚い。だから、このLPには最適だ。対抗馬は、シュアーのM75か。でも、今はM75よりこちらの方をよく使う。ちなみに、PC-15はジャズだけでなくクラシックにも向いている。ヴァイオリンの音色が素晴らしい。

ラブラドールが聴いた今日のジャズ-第17回- コットン・クラブ・ストンプ / デューク・エリントン・オーケストラ SOPJ29-30

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このアルバムはエリントン楽団の戦前の録音。1935-39年の録音のなかの未LP化全32曲を収録した2枚組アルバム。帯には、「本年最高の復刻盤」と書かれている。1970年代前半にCBS・ソニーからリリースされた。曲目解説は粟村氏。

粟村氏によると、このアルバムは、デューク・エリントンの熱烈な崇拝者である、アメリカ人のキャラナン氏の所有するSP原盤のなかから、未LP化の曲を選んで作られた。そのきっかけは、粟村氏が直接キャラナン氏に提案したことから始まった。その結果、アメリカ本社の手を経ずに、わが国の CBS・ソニーから発売された。

この2枚組は、30年代後期のエリントン黄金時代の演奏が収録されており、抜群の音質で録音されている。ライナーノーツによると、キャラナン氏の自宅で、家庭用ルボックス・テープレコーダーを使用して作成された。同時代の他レーベルでの録音に比べると、常識をはるかに超えた高音質だ。

このアルバムはやはりLPで聴いてこそ、音の素晴らしさが味わえる。確かにCDの方が物理的特性は優れているが、このアルバムのように、1930年代の古い録音で、しかもSP原盤からの収録だから、ディスクでないと味わえない音質だといえる。SPからLPになろうとも、ディスクの音は共通したものがある。

レコードプレーヤーのカートリッジは古いものでもいい

これだけのいい音を聞くからには、レコードプレーヤーのカートリッジにも拘りたい。概して50年代から60年代のLPレコードは、古いカートリッジの方が、相性がいい。具体的にどのようなカートリッジがよいか。

結論からいえば、60年代から70年代の前半までに発売された国産カートリッジのなかにいいものがある。いま、手元で聴いているのは、オーディオ・テクニカのAT-6。当時OEMで他社の多くのレコードプレーヤーに供給されたカートリッジだ。VM型になる前のMM型。中域がしっかりして厚みがある。やわらかくて素直で神経質なところがなく、長時間聴いても疲れない。古い録音にこそ本領発揮する。テクニカのAT-1からAT-6ぐらいまでの初期モデルを聴くと、カートリッジの進化って一体何だったのかと思ってしまう。ある意味オルトフォンのSPUに通じるものがある。サックス、クラリネット、トランペットがいい。特にヴォーカルが素晴らしい。エリントン楽団の色彩感がよく出る。

日立Lo-DのMFS-170がいい音していると思ったら、テクニカのAT-6だった。その次のモデルMFS-250もなかなかいい。これで聴くこともある。実はこのモデルもテクニカのOEM。

カートリッジは時代とともに、周波数レンジが広がり、解像度が上がり、高域が強調されるようになったが、何だかCDの音に近づいていく感じだ。物理上の高性能化と聴感上の音の良さは別。CDとは違う音を求めるのであれば、アナログならではの味わいが濃い、古いカートリッジがいい。単に高音質を求めるならCDを聴けば十分だし、せっかくレコードを聴くなら、レコードでしか味わえない音を追求した方が楽しい。古いカートリッジをもう一度活用したい。

ラブラドールが聴いた今日のジャズ-第16回- The Music of Duke Ellington CBS/SONY 20AP 1847

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戦前のデューク・エリントン名曲集。野口久光氏の解説によると、このアルバムは、米国CBSが1950年代に《Great Jazz Composers Series》として、ジョージ・アヴァキャンが選曲、編集したデューク・エリントン自作自演集。録音が1928年から1949年までと表記されており、大半が戦前の録音。A面、B面を通して、名作、名演揃いだ。

戦前の録音だから、SPレコードの時代の吹き込みで、およそ3分程度に収まるように演奏されている。久々にこのアルバムを聴いて、改めてエリントン・ミュージックの楽しさを味わった。ムード・インディゴ、ソフィスティケイテッド・レイディ、ソリテュード、イン・ナ・センチメンタルムード、キャラバン、など、いずれもおなじみのナンバーだ。

もし、エリントンのアルバムで一枚選ぶなら、このLPをぜひお薦めしたい。CD化されているかどうかは確認していないが、おそらくリリースされていると思う。世の中には、ベストアルバムと言われる、ダイジェスト版は山ほどあるが、このアルバムは、さすが、ジョージ・アヴァキャンが選曲しただけあって、通俗的なベスト盤を超えているように思う。選曲と組み合わせが実に素晴らしい。

エリントン音楽のもつ、独創性と、いつの時代にも色あせないクラシックとしての普遍性。ジャズではあるけれど、ジャズを超越している。毎日でも聴きたくなるアルバムだ。

ジョニー・ホッジスを聴こう

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アルバムタイトル「Side By Side – Duke Ellington and Johnny Hodges」

「リラックスして聴けるジャズを紹介してほしい」というご要望にお応えして、このアルバムを選んでみた。ノーマングランツ、プロデュースのVerveレーベルから、1960年にリリース。録音は1959年だからけっこう音質もいい。もちろんステレオ録音。

このアルバムは、エリントン楽団の看板アルトサックス奏者である、ジョニー・ホッジスをフィーチャーしたアルバム。気心知れたエリントン楽団のメンバーたちによるジャムセッション。実にリラックスした雰囲気が漂う。普段は、ビッグバンドでの演奏が主体だけど、このアルバムのように少数のコンボ形式での演奏になると全員肩の力が抜けてのびのびとスイングし歌っている。

ジョニー・ホッジスのアルトサックスに、若いころは少し抵抗があった。というよりも、ビバっプ、ハードバップ路線を追いかけていたので、見逃していたというほうが正しい。でも、今ではジョニー・ホッジスはまちがいなく自分の好きなプレーヤーだ。コールマンホーキンスよりも。

ジョニー・ホッジスの魅力は? この脱力感がたまらない。ゆったりとした気分になれる。音色がすばらしい。実に温かい。おそらく世界で最も美しい音色を奏でるアルトサックス奏者だろう。

他に、このアルバムでは、ハリー・エディソン、ベン・ウエブスターなどエリントン楽団の看板スタープレーヤーたちが参加している。「A列車で行こう」の作曲家として有名なビリー・ストレイホーンも参加。