LEAK STEREO 30 プリメインアンプ(その3)

 世間であまり知られていない、LEAK STEREO 30がこんなに良い音がするから驚いている。オーディオほど噂や評判に左右されるものはない。直に聴く機会がないものだから、つい雑誌やインターネットの記事などを鵜呑みにしてしまう。有名ブランドが過大評価され、伝説化する。

 オーディオは大から小まで、実に幅が広い。大型のオーディオを持てば完結するかというとそうもいかない。JBLのパラゴンを実際に聴かせてもらうと、四六時中聴き続けるのはつらいと思う。狭い部屋で聴くのも息苦しく感じる。かつてのジャズ喫茶のように、ある程度の広いスペースに、業務用として置かれていると、少しは聴いてみたくなる。でも、長続きしない。

 家庭で気軽に聴けて、それほど場所をとらないサイズがいい。スピーカーは、かつてのブックシェルフサイズまでなら部屋に融け込む。アンプも、シンプルなものがいい。セパレートアンプよりプリメインの方が収納しやすい。

 クラシックの大オーケストラをコンサートホールで聴くような、あくまで原寸大のイメージで再生しようとしたり、ジャズの演奏をライブハウスで聴くレベルの音量で再生するなど、およそ一般家庭では無理なことを求めないところから、自分のオーディオがスタートするように思う。

 片意地張らずに、いつでも手軽に聴けて、楽しめるオーディオがいい。そうは言ってもやはりいい音で聴きたい。こだわりを持って聴きたい。ボリュームはそれほど大きくなくても、演奏者の気持ちが伝わってきてほしい。単純に「いい音だ!」と思えることが条件だ。

 そんな普段の身近なサイズで構成できるオーディオとして、LEAK STEREO 30は最適だと思う。前記の「いい音だ!」と思える音の出方だ。このことを説明するのは非常に難しい。それなりに求めている音に出会えれば、「これだ!この音だ!」と瞬時に思えることは確かだ。

 アンプの特性はよく、温かさ、冷たさで表現される。真空管は温かいと。トランジスタは冷たいと。でも、実際にはそれほど明確に分かれるものではないだろう。実際にこれまで聴いたなかで、真空管アンプとトランジスタアンプをそのように比較して思ったことはあまりない。

 アンプで音が変わる。同じスピーカーでもアンプ次第でガラッとイメージが変わる。このことは事実だ。温かいとか冷たいとかいうよりも、そのアンプをあるスピーカーに繋いだときに、そのスピーカーはどのように変貌し、自分の好みに近づくかということが、アンプを選ぶ際の指標になるような気がする。アンプ単独での評価はむずかしい。アンプとスピーカーについては歴然と相性があるように思う。

 そういった点から、LEAK STEREO 30は最適だと思える。あくまでスピーカーとの相性として。LEAK STEREO 30を小型2ウェイシステムであるJENSEN MODEL2に繋ぐと、スピーカーから楽に音が出る。のびのびと歌い出す。一枚ベールが剥がれたようなリアルさが出現する。誇張がなくなり、うるさくなくなる。非常に自然だ。解像度がやたら高いわけではないが、演奏者の気持ちやニュアンスが伝わってくる。特にこれらの音の出方はヴォーカルを再生するときに顕著に現れる。

 

LEAK STEREO 30 プリメインアンプ(その2)

LEAK STEREO 30にJensenのスピーカーを接続して模索中。

D/Aコンバーターを換えてみた。マランツのPM75に搭載のD/Aコンバーターを、47研究所の信楽焼D/Aコンバーターに変更した。つなぎ終わって音出ししてみると、クリアになった。解像度がよくなった。ベールが剥がれたような感じがする。ポール・デスモンドのアルトサックスとジェリー・マリガンのバリトンサックスがともに鮮明になった。

 次にクラシックのCDをかけてみた。ブルーノ・ワルターのハイドン交響曲第88番。音を出してみると、ああこれはまずい。弦楽器がキンキンする。落ち着かない。少しうるさくなった。オーケストラはマランツのD/Aコンバーターの方がいい。

  LEAKのアンプは2日目。いっそう調子がよくなった。このアンプにマランツのD/Aコンバーターとの組み合わせ。そしてスピーカーはJensen。このコンビネーションがいい。これまでの他のシステムと全然違う音がする。特に現代のオーディオシステムと較べると明らかに違う。古いCDが生き生き鳴り出した。50年代、60年代、あるいはもっと時代を遡って40年代。これまで古い音源の再生はなかなかうまく行かなかったが、見違えるほどよくなった。これでLPをかけなくてもよくなった。

 古い録音の音源をうまく再生するなら、当時のオーディオ装置の方がいいといわれる。このことは容易に想像できる。でも実際に古いオーディオ装置をつないでも、よほど状態を整備しないとうまく鳴らない。整備されたものとなると、メンテナンスに費用がかかり値段が上がる。古いオーディオ装置を使うにはけっこうお金がかかる。

 だから古い録音を最新の機器でうまく再生できないかと思い続けてきた。あるいは、真空管アンプを使えばよくなると思ってきた。CDプレーヤーやウォークマンにスピーカーは新しくてもいいのでないか。決め手はアンプ。そのアンプを真空管にする。これがこれまでの自分のオーディオの方程式だった。でも、いろいろと試行錯誤してみたが、なかなかうまくいかない。

 CDプレーヤーやウォークマンなどのデジタルソースの再生は、D/Aコンバーターが決め手となる。古い録音であろうと最新録音であろうと、気に入ったD/Aコンバーターが1台あれば用が足りる。だから入力装置については、必然的に迷わずに決まってくる。1ビットよりマルチビットの方を選ぶ。マルチビットならフィリップスのTDA1541Aがいい。これがマランツのPM-75に搭載されている。いまのところうまく動いている。当分の間大丈夫だろう。80年代の終わり頃のこのD/Aコンバーターがいまでも一番だと思える。

 入力装置はこれでいいとして、問題はアンプとスピーカーだ。今回のJensenスピーカーはそれほど期待していなかったけれど、LEAKのアンプとの出会いで生き返った。もともとこのスピーカー、状態のよくないものを手に入れた。実は以前からJensenの復刻8インチスピーカーのための箱を探していた。最初は自作しようと思った。ところが意外に高くつく。それならこのスピーカーが取り付けられる中古の箱を探そうと思った。運良く1970年代初頭のJensen2wayスピーカー(JENSEN MODEL 2)が見つかった。ウーファーはエッジがボロボロだった。さっそく手持ちのユニットに交換した。接続して再生してみると、思った以上に良い音で鳴り始めた。このスピーカーシステムのツィーターとネットワークは生きている。アッティネーターも問題なく動作した。

 しばらく鳴らしていたら次第にまとまりが出てきた。こんなにいい音で鳴るとは思っていなかった。新しく換装したスピーカーも最初から搭載されていたように自然に音がつながっていた。さっそくFrequency Analyzerで物理特性を調べてみた。100Hzから600Hzまでの中低域が分厚く、高域は3000Hzから20000Hzまでしっかり出ていた。音質面では、特にツィーターがいい。神経質でなくギスギスせず、楽に鳴ってくれる。あとはウーファーをアルニコタイプに換えてみることも今後の課題として残されている。

 JENSEN MODEL 2は、1970年代前半に発売された。クロスオーバー周波数は1.2kHz。密閉型。重量9.9kgでしっかりした箱に収まっている。箱の中は吸音材がぎっしり詰まっている。今後ウーファーによって音質は変わってくると思うが、基本的な素性は非常にいい。最新の録音ソースを鳴らすスピーカーではない。どちらかといえば古い録音に向いている。ジャンルは選ばない。選ばないというか、言い方を変えればオーケストラを含めクラシックもうまく再生してくれる。世の中には、ジャズは得意だがクラシックは苦手というスピーカーは多い。一般にJBL、ALTECもどちらかと言えば、ジャズ系、ポピュラー系が得意だと思う。その点このJENSENは、ジャズもクラシックもうまく鳴らしてくれる。米国スピーカーだけれど、ヨーロッパ系のスピーカーのようにクラシックをうまく鳴らしてくれる。

 LEAK STEREO 30は、QUAD303よりも自分には向いている。見かけはおとなしいが、スピード感があり、しっかり音を出す。音が濁らず透明感があり、個々の楽器の音色がいい。これで聴くと、チャーリー・パーカーもレスター・ヤングも見違えるように生き生きと歌い出す。特にヴォーカルなどは驚くほどリアルに再生する。他に代えがたい貴重なアンプだ。

LEAK STEREO 30 プリメインアンプ(その1)

 LEAK STEREO 30がやってきた。英国の60年代プリメインアンプ。相当古い。真空管からトランジスタに移り変わる時代のアンプ。このアンプのトランジスタはゲルマニウム。その後トランジスタはシリコンに置き換わるが、60年代の中頃までは一部のアンプにゲルマニウム・トランジスタが用いられていた。

 ゲルマニウム・トランジスタ。どんな音がするのだろう。シリコンとは音が違うらしい。JBLのアンプもゲルマニウムだった。それにしても60年代の前期のアンプであるLEAK STEREO 30が今でもよく残っていたものだ。しかも整備済みで、ちゃんと音が出るのだから。古いアンプは購入先を選ばないと、状態の悪いアンプに当たってしまう。

 到着して直ぐに音を鳴らしてみた。つないで直ぐに聴いた音が、予想以上に良かった。すぐにこれはアタリ!だと思った。こういった古いアンプは、めったに聴く機会がないので、購入するときはかなり下調べをしなけれがならない。でもネット上でも情報が少ない。ユーザーレビューもほとんどない。だから、勝手に想像するしかない。アンプの姿形から出てくる音を想像する。同じ英国のアンプだからQUADと較べてどうだろう。日本ではQUADの方がはるかに有名だ。でも英国では60年代LEAKは一世風靡したらしい。QUADよりもよく売れたのではないかと思う。

 さて、その音であるが、今の時代のアンプとはかなり違う。中域が充実している。素直で柔らかい音だ。でも、それ以上に何か生き生きしたものを感じる。単に柔らかいだけでなく、一皮むけたようなリアリティさを持ち合わせている。音が生きている。マイルドだけれどリアリティがある。キンキン、ギスギスしておらず、聴きやすい。Jensenの2ウェイスピーカー(JENSEN MODEL 2)に接続したが、これがアタリだった。このスピーカーとの相性が大変良い。

 次にManresa Cに換えてみた。ガラッと音が変わる。あまり相性は良くないみたいだ。特にクラシックの弦楽器がだめだ。オーケストラは無理か。ジャズはまだしも、クラシックはほとんどこの組み合わせではむずかしい。もとのJensenに代えてみた。ああ、やっぱりこのスピーカーとの組み合わせのほうがいい。これまで決め手に欠けたJensenのスピーカーがこんなに良くなるなんて。正直驚いた。アンプとスピーカーは相性が大切だ。